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旅の仲間 1

 町から出て、すぐに森に入って、薬草を探す。

 そしたらすぐに、薬草を見つけた。簡単すぎる。誰も取ってないのだろうか。

 せっせと採取して、背負い袋に入れていく。この調子なら、依頼1つは手堅く達成できるだろう。

 モンスターも出たけど、なんとか1人で勝てた。相手はスライムと大きな蝶。蝶のモンスターのことは幸い知っていた。ブラッドバタフライといって、口で相手を貫いて血を吸うモンスターだ。けれど攻撃方法は、それとたいあたりしかない。近づかれたら逃げづらいが、倒すのはわりと簡単だった。羽が傷つきやすくて、すぐ飛べなくなるのが幸いした。

 できるだけ多く薬草を集めて、複数の依頼をこなすことを目標にする。薬草採取は順調で、更に他の依頼にあった、木の実の採取もやっておく。すると太陽が沈み始める頃には、背負い袋がいっぱいになった。休憩ついでに水袋から水を飲んで、今日のところはもう帰ろう。

 森を出て、素材センターに行く。ここで依頼書と依頼書通りのアイテムを渡せば、依頼完了らしい。まずは依頼通りの数薬草を渡し、報酬をもらった。

 そして、ギルドに戻ってすぐに、新たな薬草と木の実の依頼を受ける。それなりの行列ができていた受付に並ぶと、順番が回ってきてジュナイに言われた。

「あら。複数依頼を受けるのね」

「はい」

「頑張るわね。でも、無理な依頼数は受けないでね」

「はい。今日は、この依頼分のアイテムをもう手に入れてあるので、大丈夫です」

「あら、そうだったの。頑張ったわね」

「はい」

「薬草依頼は定期的に出てくるんだけど、あまりやってくれる人がいないから助かるわ。これからもよろしくね」

「はい」

 すぐに新たに受けた依頼も達成し、私はお金を得た。

 でも、3つも依頼達成したのに、報酬はそんなに多くない。せいぜい背負い袋や水袋を買った分を取り戻した程度。ポーション代には届かない。

 これが、1ランクの仕事か。確かに大変だ。

 でも、これが今の私にできることだ。真面目にこつこつやっていこう。

 それに、今回はワンドッグを相手にしていないから、装備が血で汚れていない。そういう意味では、今日はラッキーだった。

 今日の夕方はこのお金で、ジュアラと夕ご飯を食べに行くことにする。一日遅れの冒険者になれた記念お祝いだ。

 場所はジュアラと相談して、近くのレストランにした。プラムローナーは、遠いから、今回は断念し、近場で済ませる。大丈夫、ここも美味しいらしい。ギルドの人に聞いたそうだ。

 サーナとマスターには、旅に出る時にまた会うことにする。


 翌日。私はお金を払い、ギルドの図書室を借りていた。

 前日倒した、ブラッドバタフライの売れる部分がどこか気になったからだ。これからも戦うのなら、売れる部分を知っておきたい。他にも、知らない採取アイテムの知識も欲しい。

 ジュナイの言う通り、1ランクに必要な知識。という分厚い本があって、それを熟読した。本には絵も入っていて、見てわかりやすかった。

 気になっていたブラッドバタフライの高く売れる場所は、羽らしい。今度からはぎとろう。

 あと、ワンドッグの弱点は尻尾。切ると動きが鈍くなるらしい。なるほど、次から狙ってみるか。とも思ったが、すぐに断念した。大体襲われているのに、どうやって尻尾を斬るんだ。倒した後じゃないと無理だ。少なくとも、私の実力では。

 チャガニは魔法で倒すと良いと書かれていた。しかし私は魔法を使えない。魔法使いには才能がないとなれないらしいから、この方法は私には無理だろう。

 他にもいろいろなことを学んだ。読み終わる頃には、もう日が暮れ始めていた。今日は依頼をこなさなかったが、その分成果はあった。今度は森で、本で知った薬草なんかも探してみよう。

 草原での活動は、考えてない。ワンドッグは血で汚れるし。チャガニは一匹ならいいが、2匹以上いたら手におえなさそうだし。しばらくは森で採取依頼を続けよう。


 黒パンで飢えをしのいで、今日も薬草採取に向かう。

 一応一通り採取依頼に目を通してから、1枚だけ薬草依頼を受けて出発する。前と同じように、アイテムを拾ってから追加の依頼をこなすつもりだ。

 森に入って、少しの間さまよう。もう先日薬草を手に入れたばかりだから、入り口の方にはない。そのくせモンスターは出てくるが。スライムはいつでもどこでも現れるらしい。

 ブラッドバタフライも現れたが、戦っている内に羽はボロボロにしてしまった。これは、たぶんお金にはならないだろう。切りまくっちゃったし。大きいし。頑張って持って帰ってゴミになってしまったら泣く。羽をお金にするのは思ったより難しいようだ。

 かわりにブラッドバタフライの細長い口はいくらかお金になるらしいので、拾っておく。あと、本を読む前まではわからなかった薬草も新たに採取した。

 そうしながら前回よりも奥に進み、薬草採取を本格的に始めた。

 薬草と一緒にモンスターがいないかも注意する。いつモンスターが来るかわからないから、油断はできない。

 特にブラッドバタフライは音もなく上から高速で現れるという、見つける時は厄介な相手だった。移動中に、更に2匹倒す。スライムも数体倒す。

 それでも、今日もなんとか背負い袋がいっぱいになるまで採取を終えた。

「ふう。今日はこれくらいかな」

 そうひとりごちて、帰ろうとする。

 その時。


「シャー!」

「にゃー!」


 近くで、何かが威嚇し合う声を聞いた。

「モンスター、よね」

 どうやら、モンスター同士も争うことがあるらしい。

 私は一瞬、戦おうか逃げようか迷う。

 逃げるのは、簡単だ。ただ帰ればいいだけだ。モンスター達も、まだ私には気付いていないだろう。

 でも、それでいいのか。私。

 私はもう少し考える。

 私の目的は、シイドに会うこと。それまでの間に、危険なことは何回もあるだろう。

 つまり、私はもっと強くならないとならない。

 幸い私はもう、帰ればいいだけだ。状態も良い。あと一回くらい、戦ってみてもいいかもしれない。

 それに、モンスターを倒せば、更に稼ぎを得られるかも。二体以上いるのだから、漁夫の利も狙えるかもしれない。

 私は戦うことを決心すると、声がした方へと歩いていった。

 まずは静かに近づいて、様子を見よう。


「シャー!」

「にゃー!」

 目の前で、蛇と猫が戦っていた。

 蛇は、薄茶色の、ちょっと大きな蛇。名前は知らない。本にはのっていないかった。たぶん、1ランクが相手するモンスターじゃない可能性が高い。

 猫の方は、知っていた。本にものっていた。

 耳と尻尾、そして足先が赤いのが特徴の、カジーニャだ。火魔法が使えて、村に現れると火事を起こすことから、名前がつけられたらしい。

 カジーニャは1ランクのモンスターとして紹介されていたが、使う火魔法の威力は2ランクモンスターに匹敵するらしい。ただ魔力が少ないから、火力も一瞬しか出せない。ゆえに1ランクのモンスターとされているようだ。

 そのカジーニャが、火魔法でけん制しながら蛇の攻撃を必死に避けていた。

「にゃ、にゃ!」

「シャー!」

 でも蛇の方が体が大きいし、動きも速い。火魔法も大して効いていない様子だ。

 そして私が見ている目の前で、とうとうカジーニャは、胴体をかまれてしまった。

「ニャア!」

 けれどカジーニャはここで、大きな火魔法を放ち、蛇を燃やす。

「シャー!」

 蛇は思わずカジーニャを放し、のたうちまわる。そうして体の火を消すと、いまいましげに尻尾でカジーニャを吹き飛ばした。

「にゃー!」

 カジーニャはそのまま倒れる。動けない。

「シュー」

 蛇はそんなカジーニャを見て、それからふっと首を動かした。その視線の先には、私がいた。

「!」

 見つかった。しかもあの蛇の動きを見た限り、たぶん私では逃げ切れない。

 迷った瞬間、私は前に出ていた。稽古の動きが体に染み付いていたのだ。考える前に、体を動かす。そのすりこみがここでも出た。

 でも、前に出たのなら、後は集中するのみだ。折角の戦いのチャンス。しかも相手は実質一体で、手負いだ。これを見逃す手はない。

 剣と盾を構えて、歩いて蛇へと近づく。走らないのは、盾の防御にもそなえているからだ。

「シャー!」

 蛇は力強く威嚇した。でも、私はひるまない。あなたなんかより、ジュージの方が怖い!

 そう思って更に一歩踏み出した瞬間、蛇がとびかかってきた。

 あまりの速さに、全く反応できなかった。足をかまれる。

 遅れて、剣を振る。1回、2回、3回攻撃をあてたら、蛇は一度離れた。

 幸い、足の防具がダメージを防いでくれた。でも、あちらも大して攻撃は効いていないみたいだ。出血もしてないし、倒せる気配はない。

 更に、蛇はまた同じ足にかみついてきた。

「シャー!」

 今度は同じ足の、膝の近くをかまれる。蛇の顎の力で防具がきしむ。

「くらえ!」

 私は攻撃を受けてから、渾身の力をこめて剣を突き刺した。

 剣は頭に当たった。それでも傷は浅かった。そこで突然、蛇が足を放して、そのまま私の顔にとびかかってきた。

「きゃあ!」

 私は倒れるも、体をそらしてなんとか攻撃をかわす。蛇はとびかかる勢いが強すぎて、私の後ろの方にまでジャンプしていた。

 私は素早く蛇を見る。するとその時にはもう、蛇が私を見返していた。視線が交差すると、蛇が大きな口を開ける。

「シャー!」

 そして蛇が、私の顔めがけてとびかかってきた瞬間。


「にゃあああああ!」


 突然蛇の体が燃えて、ふきとんだ。


 暴れる蛇。私は呆然とそれを見守る。

 けれど、蛇はまた消火を終え、今度はカジーニャを睨みつけた。今のは、カジーニャの火魔法だ。カジーニャが私の命を救ってくれたのだ。

「シャー!」

 そのカジーニャを、蛇がおそう。

 素早い動きでとびつき、カジーニャの胴体を噛んだ。

「にゃあああ!」

「カジーニャ!」

 私は思わず、その元へ駆けつけた。

「倒れなさい!」

 そして、蛇の体を斬る。けれど、それだけでは小さな傷しかつかない。

 ダメだ、私じゃこのモンスターを倒せない。

 せめて、斧でもあれば、太刀打ちできるかもしれないのに。

 いや、きっと手はあるはず。

 このショートソードを使って、斧程の力で斬りつけるのだ。

 私と、そしてこのカジーニャが死なないためには、それしかない。

 きっと私ならできる。いや、今やるんだ。それができなければ、私はここまでだ。

 第一、蛇一匹も倒せないようでは、この先生きられるわけがない!

 何より私を助けてくれたカジーニャを、このまま殺されたくない!

 そう強く思うと、私の体の内から、力が湧き上がってくるのを感じた。

 そして頭に浮かぶ言葉を、叫ぶ。

「パワースラッシュ!」

 すると、私の攻撃は白い光の一撃となって、蛇の体を深く切り裂いた。



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