旅の準備 5
体は疲れ切っていたが、午後の内に冒険者ギルドに戻る。
昼間は、かなり空いていた。というかガラガラだった。冒険者は皆、依頼を受けに行っているのだろう。
私は待つことなく受付に声をかける。
「こんにちは。冒険者になりに来ました」
「はい。装備も完璧で、気合十分ね。それでは、冒険者試験を受けるなら、料金を払って、それから用紙に必要事項を書いて」
「はい」
私はお金を払って、名前と戦闘職を書く。私は剣士だ。
「では少し待っていてください。用意ができたら呼びます」
「はい」
受付の人は少し奥へと引っ込んだが、すぐに戻ってきた。そしてカウンターで、何か書類仕事を始める。
少し、緊張する。
「二リハ。こちらへ来い」
少しして、男の人に呼ばれた。小走りで近づいて、ギルドの奥へとついていく。
歩くとすぐに扉を通り、外へ行く。
そこは、訓練場みたいだった。それなりの広場になっていて、遠くにはいくつも的が並んでいる。弓の練習もできるのだろう。
「ここで模擬戦をする。相手は俺だ。遠慮なくかかってこい」
男性にそう言われる。
「はい。ええと、名前は?」
「デケイだ」
「デケイ。それでは、いきます」
私は剣を抜いてそう言ってから、デケイに近づいて剣を突き出した。
デケイは軽く避ける。更に攻撃していると、デケイがロングソードで反撃してきた。
「ハードガード!」
私は技を使って防御。軽く剣を弾いて、同時にカウンターを放つ。
「うおっ」
肩を狙ったのだが、ギリギリ避けられてしまった。しかし攻撃の手はゆるめない。相手の余裕を削ぎ落とすべく連撃をしかける。
私がジュージから教わったことは、攻撃を続けて相手に反撃の隙を与えないこと。そしてしっかり盾で守り、カウンター、あるいは相手がじれたタイミングを狙うこと。
結局ジュージにはかすり傷1つ与えられなかったが、今の自分は、最初の時より何倍も強くなっているはずだ。
デケイは回避を続けている間に余裕を取り戻し、続けて数回、剣で攻撃してくる。
私は今回は技を使わず、丁寧に盾で受ける。技を使わなくても耐えられると悟らせて、相手をじらすのだ。
「パワースラッシュ!」
その時、突然デケイのロングソードが光った。
反射的に盾で防ぐが、剣と盾がぶつかった瞬間、大きな音をたてて盾が弾かれる。
その直後、私の顔の前にロングソードがそえられた。
「ここまで、だな」
デケイがニヤリと笑って言った。
「降参です」
私は仕方なくそう言った。
「いや、良かったぞ。お前。ええと、二リハだったか。堅実な戦いだった。これなら2ランクだと言っても信じられる」
「本当ですか?」
「ああ。だがハードガードができるのにパワースラッシュに使わなかったのはマイナスだな。技には技で対抗する。しっかり憶えろ。それを憶えたらもっと強くなれる」
「はい」
「模擬戦は合格だ。次は実地に入る。ついてこい」
「はい」
私はそのままデケイについていった。
そして町の門を越えて、町から出て、草原に立った。すぐ近くには森がある。
「後は草原に出てくるモンスターと戦ってもらう。目標はワンドッグだ。勝てたらニリハは冒険者だ」
「はい」
わかりやすい試験だ。デケイは私を見て言う。
「じゃあ、自分で探せ」
「ちなみに、見つからなかったら失敗ですか?」
「ああ。制限時間は明日の夕方までだ。それまでつきあってやる。あと、一度ワンドッグから逃げても失敗だ」
「わかりました」
それが試験になるのだから、ワンドッグは1人でも十分倒せるモンスターなのだろう。後はなんとか見つけ出すだけだ。
私は走った。道から外れ、草原を駆ける。
少し振り返るとデケイは何も言わず、後をついてきた。
私はもうデケイを見ることはなく、必死にワンドッグを探した。
そして走り疲れた頃に、スライムを発見した。
青い水球がポツリとある。その水球の中には1つ、小さいコアが浮いている。
こいつは間違いなくスライムだ。
スライムくらいは私も知っている。村の外でたまに見かけた。
足は遅いが、近づくととびかかってくる。べったりとくっつかれると、どんどん相手を溶かしていくという。
弱点はコア。それを傷つけたり取り出すと、スライムは死ぬ。もし何かあった時はスライムのコアを取れ。と、お父さんに言われたことがある。
私はそのスライムに一直線に駆け寄り、剣を突いた。
私が近づくと同時に、スライムもとびかかってきた。
スライムは盾にぶつかって落ちる。けれどスライムに動かれたせいで狙いがそれ、剣はスライムの体を浅く切り裂いた。
中の液体が少し漏れる。スライムは着地すると、ブルブルと震えた。
私はその隙に剣でコアを攻撃した。
鉄のショートソードはスライムのコアを両断し、それでスライムは倒れた。体が弾け、青い液体が草原の上に広がる。私の足にも少しかかった。
「ふう」
私は一息つき、ショートソードを収め、また走り出そうとする。
「待て、二リハ」
その時デケイが声をかけた。
「そのスライムは倒すとコアを手に入れられる。コアはギルドの素材買取センターで金にできる。持ってかなくていいのか?」
そう言われたら、持っていかざるをえない。
「教えていただいてありがとうございます」
そしてその時、気づいた。
「あ、どうやって持っていけばいいんだろう」
「なんだ、袋も何も持ってないのか。まあ、試験の最中だしなあ。今度から何か入れる物を持っておけ」
「はい。そうします」
「ちなみに、スライムコアは2シクルだ」
「安いですね」
「ああ、それが現実だ」
でも、お金はお金。持っていけないのはくやしい。
その時、私は閃いた。
財布の中に、スライムコアを入れる。
「おいおい。そこに入れるのかよ」
「それじゃあ、行きます」
「ああ」
私はもう走ることはせず、歩いてワンドッグを探した。
もう走ったら疲れると学習した。偉い、私。この調子でがんばろう。




