旅の準備 4
盾技も憶えたので、早速冒険者の試験を受けようと思う。
けれどその前に、ジュージを探した。
「あ、いた。ジュージ」
「おお、二リハか。何か用か」
「私、もう試験を受けようと思って。それで、折角だからジュージに剣を買える良いお店を教えてもらおうと思ったの」
前は適当に近い店で買ったし。剣もジュージが選ぶ店にしたい。
「適当でいいだろ。この近くに武器屋があるだろ」
「そこが良いの?」
「はあ。別に俺とお前は付き合いがあるわけじゃねえ。もう話しかけてくんな」
「それじゃあ、500シクル出すわ。だから、稽古のついでに教えて」
「はあ。お前、本当しつこいな」
「でも、ジュージはやさしいでしょ?」
「こいつ。まあいい。ちゃんと500シクル出すんだな。じゃあ、出せ」
「はい」
私は250シクル渡した。
「まず半分。残りは稽古が終わってから」
「それでいい。じゃあ、ちょっと見てやるか」
私はジュージについていき、武器屋ケルイヤでショートソードと、サバイバルナイフを買った。サバイバルナイフは非戦闘用だが、あると役に立つらしい。
「冒険者になるんだろ。ナイフも持っとけ」
「うん。ありがとう。やっぱりジュージを頼って良かったわ」
「そうかい」
剣とナイフを腰にさげて、借り長屋へと向かう。
「お前、俺が人気のないところにつれてって妙なことをしないかとか、勘ぐらなかったのか?」
「え、ジュージってそんなことする人だったんですか?」
「しねえよ。だが、無用心すぎだぞ。お前」
「ジュージだから安心してました」
「あのなあ。まあ、俺が気にすることじゃないがな」
「そういえば、ジュージはなんで私につきあってくれるんですか? 最初の稽古の時も」
「まあ、暇だからだよ。臨時のパーティを探すのも面倒だから、お前の面倒を見てるだけだ」
「ジュージには仲間がいないんですか?」
「皆やめた。歳だから畑でも耕すってよ。俺は性に合わないからまだ続けてるけどな」
「じゃあ、1人なんですね。丁度良かった。暇で」
「いや暇じゃねえよ」
「折角だから、強くなった私を見て感心してください。昨日シラーから、もう冒険者になれるって言われたんですよ」
「ふーん。この数日でそれだけなれるとは思えんがねえ。いや、冒険者になるのは結構簡単だったかな?」
「そうなんですか?」
「まあ、そう怖いもんじゃねえよ。ただちょっと実力見るだけだ。試験はな。ただ、冒険者として稼げるのは、3ランクになってからだぞ。それまではジリ貧だ。まあ3ランクでも辛いが」
「旅に出るには、何ランクくらいいるんですか?」
「あ? 一応2ランクもあれば護衛依頼も引き受けられるが、すげえ安いぞ。3ランクの半額だ。そのくせ数日間拘束されて、実力もねえから運が悪いと死にかける。まあモンスターに殺されたくなかったら、まずは仲間を見つけることだな」
「どうしても、仲間は必要ですか?」
「そりゃそうだ。1人で戦うより2人。2人で戦うより3人だ。そんなこともわかんねえのか?」
「じゃあ、ジュージが仲間になってくれませんか?」
「冗談はよせ。俺はおもりはしない」
「暇なのに」
「だから暇じゃねえよ?」
しゃべっていたら借り長屋についたので、私は早速ジュージに稽古をつけてもらった。
「ショートソード使っていいぞ。どうせ当たらねえし」
そう言うジュージはショートソードだけを持っている。盾は少し離れたところに置かれている。完全になめられている。
「言いましたね。では、いきます!」
私は盾で胸のあたりを守りながら、剣で突く。
「ふん、まあまあだな」
私の剣はあっさり避けられるが、私は攻撃を続ける。
避けられ、避けられ、剣で弾かれ、また剣で防がれる。時折フェイントを意識するが、それには絶対にひっかからない。
「動きが雑だ。ショートソードの重さに振り回されてる。もっとしっかり持て」
「はい!」
そう言いつつ攻め続けるも、次第に腕が重くなってきた。あきらかに木剣を振っていた時より疲れるのが早い。
まだ体力が足りない。それを痛感しながらも、構わず剣を振り続ける。
どうせ体力をつけるには、休まず鍛え続けることが良いのだから。
「大分攻撃が荒くなってきたな。そろそろ攻守交代だ。しっかり防げよ」
ジュージがそう言った直後、すぐにジュージのショートソードがおそってきた。
シラーのロングソードより短いけど、速い!
なんとか盾で防ぐと、盾が軽く弾かれる。ジュージは片腕なのに、若いシラーと同じくらい威力がある。
しかし昨日のシラーとの稽古で、私も防御は上手くなった。なんとか盾で、続く攻撃を防ぐ。
「ほう。盾は上手くなってるじゃねえか」
ジュージはそう言いながらどんどんショートソードを振ってくる。私は防御に忙しすぎて、喋る暇もない。
けど、少しずつジュージの攻撃に慣れてきた。今なら、ジュージに一泡吹かせられる!
「ハードガード!」
私は技を使って盾を光らせた。
光る盾が簡単にショートソードを防ぐ。私はこの間に、ジュージを攻撃する!
すると、肩口に切り込んだ私のショートソードが、甲高い音をたててふきとんだ。
ジュージが振った剣が、私のショートソードを弾き飛ばしたのだ。
今の攻撃、見えなかった。まるで光が走ったみたいだった。
「おっと、悪い悪い」
ジュージがそう言って二歩下がる。
「なるほど。技を使えるようになってたんだな。そりゃあ自信もあるわけだ。見直したよ。動きも悪くなかった。まあ狙いは首でも良かったが」
「ジュージって、強いのね」
「そりゃあ、6ランクだからな。ニリハよりはよっぽど強い。それより、剣を手放すとは何事だ。戦場でそんなことやったら死ぬぞ」
「ええ、ごめんなさい」
「技術はそれなりにあるが、やっぱり基礎的な力が足りてないな。確かに冒険者にはなれるだろうが、まだてんで弱い。今の実力じゃ2ランクの依頼も厳しいぞ」
「そうなのね。もっと力をつけるわ。でもそのために、もっと稽古を続けなきゃね」
「そうだな。ほら、剣を拾え。待ってやる」
私は剣を拾いに行った。
「駆け足」
「はい!」
駆け足で剣を拾った。
「じゃあ、次は剣の技を使ってみろ」
「剣の、技?」
「ああ。遠慮はいらないぞ」
「ええと、その、私、ハードガードしか覚えてないの」
「はあ?」
ジュージはそう言うと、軽い動作で私に接近した。
「!」
は、速すぎて体がついていけない!
「ツヴァイブレード」
ジュージが私の左右に剣風を起こした。
全く反応できない。けれど体は確かに、攻撃されたことがわかった。
「これが、剣の技だ。身につけろ。技だけは努力で手に入る」
「はい」
確かに今の技を私も使えれば、強力な身を守るための武器になる。
私は剣技の必要性を、強く感じた。
「あの、努力で手に入らないのはなんですか?」
「才能と仲間、後は生き残れる運だ」
「ああ」
ここからはジュージも盾を使って、稽古を始めた。
それからのジュージは、盾を攻撃にも使ってきた。盾で殴られ、押し付けられる。剣を相手するだけでも大変なのに盾も使われると、私は途端に崩された。
それでも立ち上がって稽古を続け、またもやくたくたになったところで、今日の稽古は終了。シラーの時のようにはいかなかった。
「今日のところはもういいだろう。それじゃあ、250シクル、出せ」
「はい」
「冒険者の試験、応援してやるぜ」
「ありがとうございます」




