ママタッコー 2
その後、怪我を治してあげた冒険者とも模擬試合をしてから、ママタッコーを探しに出発した。
前回戦ったところは、若干だけど憶えている。そこまで行ったら、ミドリに上から見つけてもらおう。
そう思っていると、川にたどり着く前にたくさんのタッコーと遭遇した。危なげなく倒すことはできたが、出現数が前回より多い。
「タッコーが多いということは、近くにタッコーを生んでいるママタッコーがいるのかしら。それだったら、見つける手間も省けるかも」
その場合、それが前回戦ったママタッコーの可能性は、高いわよね。
ひとまず、シャスデリの依頼分のタッコーはもう確保できたわ。後は、ママタッコーに挑むだけね。
「皆。まだ獲物前だから、魔法は使わないで温存しておいて。川まで着いた後も、本命が現れるまで私とテムで戦うからね」
「にゃあー」
(ううう。じれるうう)
「キュー!」
(先輩、焦りは禁物ですよ!)
「ピー!」
(またあの大物を倒すために、とっても強力な魔法を使うわよ!)
「ギャウ!」
(へっ。俺の武器なら余裕で倒せるぜ!)
テムの武器ならタッコーを2、3発で倒せた。矢を使えばもっとかかるけど、やはり倒せない程ではない。
やっぱり、矢は威力が弱いのかしらね。テムの武器としては、剣とか斧なんかが良いのかもしれない。
そう思いつつ、私も戦いながら川まで着く。
そして、ミドリに川の上を飛んでもらいつつ周辺を歩くと、予想より早くママタッコーが現れた。
まず川の中から水の玉が飛んできた。狙いは全てミドリで、ミドリ自身はなんとか回避に成功する。
水の玉はそれでも発射され続け、やがて、水の玉を放つ相手が川から出てきた。
丸く赤い頭。見えるのは体半分だけだけど、間違いない。ママタッコーだ。
更にママタッコーの周囲から、数匹のタッコーが現れた。もしかしたら、ロイヤルタッコーかもしれない。そいつらがミドリへと殺到する。
でも、チチタッコーの姿は見えない。やっぱり、前に戦ったやつとまた会えたようね。
「テム、矢で小さいのを倒して。ショットスラッシュ!」
私はまず、テムと一緒に周りの小型モンスターを倒す。ママタッコーに集中するためにも、周りのやつらを速攻で倒したい。
対してミドリは、ママタッコーの頭上に大きな枝、いや、丸太を生み出した。
「ピー!」
(すっごく強い木魔法!)
先が鋭利に尖った丸太が、ママタッコーの頭に直撃した。
沈むママタッコー。丸太は水面に浮いて、そのまま流されていく。
気になるママタッコーは、頭から若干血を流しながらもまた水上に戻ってきた。
「タコー!」
そしてママタッコーが大きな水の玉を生み出して、ミドリに向けて放つ。完全に目には目をという感じだ。
「ピー!」
(きゃー!)
ミドリは避けきれず当たってしまう。
「ミドリー!」
思わず叫ぶ。
「キュー!」
(届け、回復魔法!)
シャインがキラキラした光を放った。
それが墜落するミドリに当たり、ミドリはなんとか川に落ちる前に再び羽ばたく。
「ピー!」
(危なかったわ!)
「にゃー!」
(やられてんじゃねー!)
「タコー!」
ミドリを倒し損ねたせいか、ママタッコーは更に怒り出した。とにかく、ミドリがまだ無事で良かった。
「ミドリ、こっちに戻ってきて。無理はしないで!」
「ピー!」
(うー、わかったわ!)
ミドリはすぐにこちらへ戻って来る。すると、ママタッコーもこちらへ向かってきた。
どうやらママタッコーは、意地でもミドリを倒したいらしい。けれど、陸に来るのなら好都合だ。
「ショットスラッシュ!」
私はまだ周囲に残っているタッコー達を減らしながら、ママタッコーが地上に上がるのを待った。
「にゃー!」
(よし、俺が決めてやるぜー!)
「待って、モエル。ここは一度、私だけが挑んでから、モエルが決めて!」
「にゃー」
(ええー)
「皆も、私に合わせて動いて。まずは、私がやるから!」
一応、ママタッコーはカルミヤの領主から注文依頼を受けている。ママタッコーじゃなくてもいいようだけど、きっと焼け焦げていない物を渡す方が良いだろう。
もちろん、きれいに倒せるとも思っていない。だけど、皆の全力を尽くす前に、私の全力を試してみたい。
周囲のタッコーは全て倒した。ここからが本番だ。
「ターコー」
ママタッコーが地上に上がる。そしてミドリをかばう私に、足を伸ばしてくる。
私はそれに合わせて、前に出た。
「スロウスラッシュ、シールドショック!」
私は盾から発する衝撃で迫る足を弾き飛ばし、同時にスロウスラッシュで相手の動きを遅くする。
すると、明らかにママタッコーの動きが遅くなった。それを見逃さず更に前へ踏み出す。
最大限ママタッコーに近づいて、今の私の全力を出す!
「パワーアップ、ファングソード!」
剣で突き刺すように斬り上げる。すると、ママタッコーの顔は布を切るようにあっさり切れた。
そしてあっけなく、ママタッコーは動かなくなった。
「やった」
ほぼ私だけの力で、ママタッコーを倒すことができた。
「キュー!」
(やりましたね二リハ!)
「ピー!」
(凄い、二リハ!)
「ギャウ!」
(一人でやっちまったな!)
「にゃあー?」
(俺の出番はあー?)
「あ、うん。ひとまず、帰ろっか」
思った以上にあっさり倒せたけど、正直上出来すぎる結果だろう。
けれども、同時に想像以上に体力を消耗した。最初の時もそうだったのだけど、ファングソードを使うと激しく疲れてしまうのだった。
その分威力は高いけど、使えて2、3回が限度だろう。使いどころには十分気をつけなければ。
とにかく、こうして私には、5ランクのモンスターも倒せる力があることがわかった。
もちろんモエル達の協力も必要だけど、これなら旅は、多少の危険があっても乗り越えられるだろう。
ようやく、本腰を入れて旅ができそうだ。今回の依頼でお金もかなり貯まったし、このまま一気にケルーミ領まで行っても良いかもしれない。
まあ、焦らなくてもいいかもしれないけど、ジュアラの手紙も持ってるしね。早くそこまで行きたい。
「ひとまず、帰ったらごちそうね。ランギリでまたチチタッコーママイッカーを食べれないかしら」
「にゃー?」
(美味いのか?)
「キュー」
(先輩、この前食べたものすごい美味しいやつですよ)
「にゃー!」
(じゃあ食う!)
「ピー!」
(私も食べたいわ!)
「ギャウ!」
(俺も食うぜ!)
「そうね。私も楽しみにするわ」
でも、あれって本当はいくらするんだろう?
ちょっと怖くなってきた。いや、撤回はしないけど、どれくらい高いのかしらね?
ひとまず、テムにママタッコーをしまってもらって、旅の宿まで戻った。
その内助けた冒険者達も戻ってきて、数人軽い怪我を治してから、別れた。
彼らは今日チチイッカーを倒したので、明日同じ場所でママイッカーを倒すつもりらしい。
「頑張ってね」
「ああ。できれば回復してくれるやつがいてくれると助かるが、これ以上は高望みだな。ちゃんと倒してくるよ」
ちょっと心配だったけど、所詮は他人だ。それに、明日私達がサポートに回ってあげても、今回一回限りでは大して意味がない。だから私は心配とお祈りだけすることにした。
ご飯は一緒に食べて、少し話をして、翌朝別れて、私達は町に戻った。




