ママタッコー 1
5ランクになったので、ママタッコーの討伐依頼を受ける。
あと、シャスデリの依頼も受けておく。やっぱりまだ残ってたか。まあ、昨日貼って今日の朝だものね。それに、報酬額も微妙な気がする。
ひとまず、依頼書を手に取り受付に持っていった。
「あの、これ受けます」
「あ、二リハさんですね。ちょうど良かった。領主様から指名依頼があります」
「え?」
領主って、誰?
そんな人と、会ったこと無いんだけど。
「それ、本当ですか?」
「ええ。二リハさんは前回、ママイッカーとチチタッコーを当ギルドで売却しましたよね?」
「はい」
「あの倒した物を丸ごと持ってきたという噂が、ジェネラルディッカー子爵様のお耳に届いたようなのです」
「ジェネラルディッカー」
凄い名前だ。
「子爵様です。お言葉にはお気をつけて」
「あ、はい。すみません。慣れないもので」
「それで、ジェネラルディッカー様は、次も大型の素材が丸ごと手に入った時は、ぜひそのまま売却してほしいと言われました。参考までに、チチタッコー一体分の報酬は10万シクルです」
報酬も凄かった。
「ママタッコーの討伐を受けるのなら、ちょうどよいですね。どうか、よろしくお願いします」
「あ、はい。わかりました」
「それでは、お気をつけてください」
急な話だけど、どうやらママタッコーをそのまま持ってきて欲しいらしい。
確かに、ママタッコーサイズをそのまま持ってくるなんてこと、テムのつづらでも無い限り難しいだろう。
私達だから、できる仕事ね。
よし、やってみよう。
移動に一日かける。
旅の宿に着くと、宿の主人が変わっていた。
「あれ、この前の人じゃないわね」
「ああ。前の担当とは昨日変わったよ。なんだ、何か用があったのか」
「いいえ、今回も宿代の代わりにごはんをごちそうしようと思って。野菜も買ってきたし」
「おお、良いね。俺にも作ってくれよ。代金は寝泊まり料で相殺でいいんだな?」
「はい。もう作っていいですか?」
「ああ、いいぞ。せっかくだ、できるだけ多く作ってくれ」
「いいわよ。肉は今日倒したイッカーだし」
どれだけ食べても、イッカー丸ごと一体は食べられないだろう。
「皆、ごはんの準備を手伝って」
「にゃあ」
(また俺の出番だな)
「ピー!」
(たくさん枝を出すわ!)
「ギャウ!」
(フライパン出せばいいんだな!)
「キュー!」
(ボクはやることないので待ってます!)
さあ、ささっと作ってしまおう。
今回の宿の主人は結構食べた。
まさか、イッカーを半分近くも食べるなんて。
「いやあ、やっぱり人に作ってもらった飯は美味いな」
「それは良かったわ」
皆食べ終わったところで、突然宿の扉が勢いよく開いた。
「頼む、助けてくれ!」
「何があった!」
宿の主人が素早く反応する。私もすぐに気持ちを切り替える。
「ママイッカーが地上に出てきたんだ。おかげでチチイッカー達と一緒に相手しなくちゃいけなくなって、こっちが劣勢になった。5人重症だ!」
「5人か、まいったな。大怪我に効くようなポーションは1つしかないぞ。ひとまず、救援を呼ぶか?」
宿の主人がそう言う。その間に、大勢の冒険者が入ってきて、内3人は肩を貸されながら入ってきた。
そして、彼らの中で5人の冒険者が集められる。皆、腕か足を折っていた。変な風に曲がっている。
これは大変だ。すかさず声をかける。
「私達が回復魔法を使えるわ。すぐに怪我を治すから!」
「ああ、頼む。早くやってくれ!」
「シャイン、皆の回復をお願い!」
「キュー!」
(はい、お任せあれ!)
流石はシャイン。手早い回復魔法で皆の怪我を治していく。
すると、全員の骨折も治り、また他の人達の軽い怪我も治していった。
「ありがとう。助かった」
「これくらい、なんでもないわ。ね、ありがとう、シャイン」
「キュー!」
(これがボクの存在価値ですから!)
シャインは相変わらず卑屈だ。
「礼は必ずする。名前を教えてくれ」
「二リハよ」
ひとまず、彼らは落ち着いた。
「二リハのおかげで助かったよ。この怪我じゃ下級ポーションも大して効かなかったし、本当に助けられた」
「シャインがちょうどいて良かったわ。それで、これからどうするの?」
「明日は少し歩くが、場所を変えて違うママイッカーを見つける。また同じ場所でリベンジしてもいいんだが、ママイッカーとチチイッカーが同時に襲ってくるのは流石にきついからな。水魔法なら水除けの防具で防げるんだが、接近戦をされると流石に分が悪い」
「なるほど。そういえば、皆同じような防具ね」
「あいつらの強みは水魔法だからな。これじゃなきゃ戦えん。そっちは、変わった装備をしてるな」
「ええ。別の町で仕入れた物なの」
「ほう。流れの冒険者か。そういえば、テイムモンスターをつれた冒険者がチチタッコーとママイッカーを丸ごと狩って持ってきたって聞いたな。あの実力者があんただったとは」
「知ってたのね、私達のこと」
「ああ、流石に、回復魔法まで使えるとは思ってなかったけどな。凄いな」
「この子達が、優秀なのよ。おかげでいつも助けられてるわ」
「二リハはこれからママタッコーを狙うのか?」
「ええ。この前は逃げたから、今度こそ倒したいの」
「よかったら、俺達がサポートに回ろうか。お礼がわりに、手伝ってもいいぞ。なあ、皆」
「ああ。相手がママタッコーとはいえ、サポートくらいならできるだろ」
「恩は早く返したいしな」
彼らはそう言ってくれるけど、でも、私の目的はただママタッコーを倒したいわけじゃないし。
「気持ちはありがたいけど、私達は自分達の手でママタッコーを倒したいの。だから、あなた達の手は借りないわ」
「そうか。なら、お前の無事を祈ってる。死ぬなよ」
「ありがとう。そっちもね。明日も怪我したら、ここで再会した時また治してあげる」
「ははは。魔法の安請け合いはよせ。そんなことしてると、タダだと勘違いされるぞ」
「それでも、治さないよりはマシよ。お金も大切だけど、使ってこその魔法だわ」
「お前、案外お人好しだな。よし、ちゃんと二リハに治療代を返せるように、明日こそママイッカーを倒してやる!」
冒険者たちはすっかり元気を取り戻して、イッカーを食べて寝た。
私達も、明日に備えて寝よう。
翌朝、気分を引き締めるために剣を素振りする。
すると、上手く集中できていたからか、それともたまたまか、私は新たな剣技を覚えた。
「スロウスラッシュ!」
試しに使ってみると、剣が白く光った。
技の効果もわかる。これは、攻撃した相手の動きを遅くさせる技。
きっと、使える技だろう。これで、私も更に強くなったと思いたい。




