武器購入とシャスデリのスープ
ランギリを出て、私とシャスデリは一緒に歩いていた。
「く、まさかあんなに美味いものがあるなんて。あいつにはあれを食わせてやるべきか?」
「それじゃあ、食べさせてあげれば?」
「だが、流石に手が出ないぞ。金はなんとかなるかもしれねえ。しかしチチタッコーとママイッカーの口は冒険者に取ってきてもらわないといけないだろ。上手く雇えるか?」
「あー。ママイッカーなら、倒してる人たちを見たわ」
「そいつらが他の料理人なんかとつるんでたらなおのこと手に入らねえじゃねえか。く、せめて二リハがずっといてくれたらなあ」
「それは流石に無理ね。でもそっか。チチタッコーママイッカーを倒せないと手に入らないっていうのは、結構難しいわね」
私もママタッコーチチタッコーと戦って死にかけたし。決して簡単ではない。もしかしたら返り討ちにあう可能性もあるのだ。
「くっ。だがあいつには一番美味いものを食わせてやりたい」
「私もできるならそれが良いと思うけど、ほどほどにね。きっと無理しても奥さんは喜ばないわ」
「うーん。今のところはイッカータッコーで料理するしかないしな。しょうがない。ママイッカーチチタッコーの口は、手に入ってから考えるとしよう」
「それが良いわね」
「実際俺も、ランギリの店主に言われた通り、まだイッカーとタッコーのことを少ししかわかっちゃいねえ。今の腕前じゃまだ駄目だ。やっぱり目先の目標は、満足のいくイッカータッコー料理を作ることだ」
「応援してるわ。早く奥さんの元に帰ってあげてね」
「わかってる」
話をしていると、シャスデリが雇われている店、ミルモネに着いた。
「着いたぞ。ここが俺がいる店だ」
「へえ。結構わかりづらいところにあるわね。って、飲み屋じゃない」
「そうだぞ。ここでしか雇ってもらえなかったんだ」
「レストランは駄目だったんだ」
「あそこは敷居が高くてな。大体どこ行っても、十年は皿洗いだって言われてな。こっちはそこまで待ってられねえから、なんとか料理人として働けるところを見つけたんだ」
「ふう。まあ、シャスデリの腕はわかってるから、今夜来てあげるけど、絶対飲まないからね」
「わかったわかった。だが俺の料理は酒に合うぞ」
「飲みません!」
ひとまずシャスデリと別れる。さて、それじゃあ後は、日が暮れるまで何してようか。
そうだ。思い出した。せっかくお金も手に入ったし、やるべきことがあった。
それは、テムの所持アイテム増加だ。
私達の中で、テムだけはつづらに武器を多くいれるだけで強くなれる。
今のうちに、できるだけやっておかないと。
「皆。これからテムの新しい武器を買いに行くわよ。テム、ママタッコーにも効きそうな武器を見つけましょう」
「ギャウ!」
(おお、良いぜ!)
こうして、私達は武器屋へと向かった。
ここの武器屋も、やはり町で作ってないため、全ての商品が輸入品らしい。
だが、そのかいあって種類が多く、使えそうな物が多かった。
まあ、その分金額が高いけど。そこは仕方ない。ママタッコーに勝てるようになるなら、必要経費だ。
お金も、まあ5万シクルくらいなら、出しても良いと思う。
「やっぱり、量より質よね。相手はママタッコー。チチタッコーだって生半可な攻撃は効かなかったんだから、強い武器じゃないと意味がない」
まあ、その強い武器をただ飛ばすっていうのも、かなり豪快だけど。使い方がそれしかないから他に選択肢はない。
「なんだ、お客さん。ママタッコーチチタッコーを狙うのかい。それじゃあ、ここらへんの武器か、もしくは魔法の武器だな。まあどっちも見ていってくれよ」
そう言って武器屋の店主が見せてくれたのは、両手で使っても使いづらそうな、大きな剣、槍、斧、ハンマー。
なるほど、いかにも重量がありそうだ。これをぶつけられれば、ただでは済まないだろう。
「ちなみにお値段は?」
「大体1つ1万2千シクルくらいだな」
ううむ。この4つの武器と予算がちょうど良さそうね。
「テム、これ全部入りそう?」
「ギャウ?」
(いけるぜ。これをくれるのか?)
「いいえもうちょっと考える」
とは言うものの、今のところこれらを買いで問題なさそう。
後は、魔法の武器がどんなもんかというところ。
「おじさん、魔法の武器っていうのは?」
「これだ」
店主が見せてくれたのは、片手剣程のサイズの剣3本だった。
「まずこの水色のやつが一番オススメだ。水属殺しの剣。水生生物、およびモンスターへの攻撃力が増す。ここいらで使うならこれが最強の剣だぜ」
「へえ。最強」
それは凄い。
「でもそれなら皆買うんじゃない?」
「魔法の武器だぞ。誰もが手が出るような値段じゃない。これ一本で9万シクルだな」
「高っ」
「そうだとも。それでもママタッコーにもかなり効くんだ。そこらを飛んでるイッカーやタッコーにも効果があるから、この辺じゃ一番良い剣だ」
「うーん」
でも予算を超えてるんだよなあ。それに、水棲モンスターだけを倒すわけでもないし。
一定のモンスターにしか効かないというのも、マイナスポイントだ。よってこれは却下。
「こっちの黄色い剣は?」
「弱い雷を出す剣だ。相手の動きをよく止めてくれる。一瞬だけどな。それに、威力も結構高い」
雷を出す。強そうだ。
けど、一瞬動きを止めるっていうのは、テムの強みと上手く噛み合わない。テムは武器を飛ばす攻撃一回だけだし。
これも、いまいちな気がする。
「最後の剣は?」
「これは普通に切れ味が良くなる剣だ。魔力を込めれば込める程、切れ味が増す」
普通に強そうだけど、これも一回刺さっただけで終わりになるから、やはり大して強くもなさそうだ。
この剣1つで大ダメージを与えられるのなら欲しいけど、って、魔力を込めなきゃ効果が無いって、テムって魔力込められるの?
「ねえテム。この剣に、魔力って込められる?」
「ギャウ?」
(そんなもんわかんねえよ?)
駄目だ。肝心のテムが使いこなせるかわからなかった。
「おじさん、この普通の大型武器4つください」
「まいど!」
こうして私は、対ママタッコー用に大きな武器を4つ買った。
一応更に工夫して、ミドリに出してもらったツルを武器1つずつに巻いて、テムがそのツルを使って出した武器を収納、回収できるようにしておく。
上手くいけば、これでテムは武器切れを起こすことが無くなる。
これでテムが一段と強くなったと思いたい。
日が暮れたので、ミルモネで夕ご飯を食べることにした。
「いらっしゃい!」
「あの、シャスデリの知り合いです。二リハが来たと伝えてください。注文はお任せで」
「なんだ、またあいつの客か。ったく、俺の店なのに客を取られてつまらねえぜ。わかった。少し待ってな」
待つのは本当に少しの時間だけで、私達の眼の前にすぐ料理が運ばれてきた。
出てきたのはイッカーのスープ。珍しい。シャスデリがスープなんて。でもこのスパイスの香り、懐かしい。シャスデリの料理って感じがする。
「いただきます」
「にゃー」
(がつがつ、うん、まあまあだな)
「キュー」
(ズズー。うん、まあまあですね)
「ピー」
(パクパク、うん、まあまあね)
「ギャウ」
(もぐもぐ、ああ、まあまあだ)
皆。そんなこと言わないでよ。聞こえてるのたぶん私だけだけど。
「美味しいね」
ショウユーは使ってないけど、それでも負けないくらい美味しかった。
あと、ちょっと懐かしかった。
これがシャスデリの味なんだなって思った。
ということは、さ。この味、シャスデリの奥さんもずっと味わえてないのよね。シャスデリも早く、この味を奥さんのところに届けなさいよ。
私も応援してるんだから、人一倍頑張ってほしい。と、勝手に思った。




