表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/226

イッカーとタッコー 3

 シャスデリに感化されてか、私も干物とわさびが気になった。

 まずは一日お休みにして、町を回ってみる。

 タオルとか、テントとか、消費したものも買っておく。特にタオルは毒を拭いたり使い道があったので、多めに買っておいた。

 その折、またテムが見た物を欲しくなって、ひとまず壺だけ買ってあげた。

 すると皆も何か欲しがって、ひとまず果物を買って皆に分ける。

 そんな風に歩いていると、保存食屋ですぐにイッカーの干物が見つかった。

 なんか茶色くて硬いものになってるけど、これがあのイッカーなのね。

「おじさん、これください」

「ああ、いくつだ?」

「ひとまず1つ。気に入ったらもっと買います。あとタッコーの干物もありますか?」

「ああ、あるよ。これだ」

「うわあ、やっぱり見た目は美味しくなさそう」

 ひとまず、食べやすいサイズに切られたイッカーとタッコーの干物を買う。そして、その場で皆で少しずつ食べる。

 すると。

「もぐもぐ。硬い。けど、じわじわ味が出てくる。不思議」

「にゃあ!」

(俺これ好き!)

「キュー」

(ボクは好きくないです。サクサクいけないのがちょっと)

「ピー!」

(結構いけるわね!)

「ギャウ!」

(美味いぜ!)

 私も少し好きな味だった。他の皆にも好評。けどシャインだけ駄目か。

 まあ、シャインは野菜がメインだものね。仕方ないか。

「それじゃあ、もっとください。あ、切られてない大きいやつの方が安いなら、それで」

「まいどあり!」

 ひとまず、干物は結構買っておいた。後で自分で小さく切れば歩きながらでも食べれるし、ちょっとお腹が空いた時に良いかもしれない。

 というわけで、干物を切る用にハサミも買わないとね。きっと、あれば他にも使い道があるでしょう。


 買い物ついでにわさびについて訊いたら、普通に野菜屋で売っていると教えられた。

 けどわさびは基本すりおろして食べる食材らしく、食べるならレストランが良いとのこと。そして、近くにあるわさびを使うレストランを教えてもらった。

 レストラン、ランギリ。そこに行けばわさびが食べれるらしい。

 場所は教えてもらったから、後は、お昼時を狙うだけね。

「まだ時間はあるから、防具とか見ましょうか」

 今のところ大して買う気はないけど、買いたいものがあったら逃したくないしね。


 結果的に言うと、ここの武器屋防具屋はハズレだった。

 この町には武器防具を作る職人があまりいないらしい。現れるモンスターの大半がイッカーとタッコーだから、武具に加工できる素材が少ないとのこと。また採取素材も良いものが無いらしい。

 それ故に、ほとんどの武器、防具は他の町から輸入しているそうだ。けどその分、品揃えは豊富だった。そして、輸入な分値が張る。

 つまり、ここで買うよりは他の町で買った方が良いということ。どうしても欲しいものが見つかれば買うが、産地まで足を運べばもっと安く買えるらしい。

 お店の主人は防具の性能を憶えていて、1つ1つ紹介してくれた。しかし、値段を見て購入をためらう。魔法の防具も多かったみたいだけど、魔法の盾を買った時よりも大分高い。やはり、買う気にはなれない。

 そんな時のこと。

「そういえば、お客様のランクは?」

「4です」

「なるほど。それならママイッカーを倒しに行く気はありませんか?」

「ママイッカー?」

「イッカーを生み出す4ランクモンスターです。ここから北にある川にいるんですが、ママイッカーは川の中からあまり出てこないし、水魔法も使うんですよ。それで水対策の装備が必要になってきます」

「はあ」

「この水除けの靴があれば、水に濡れることなく楽に動けますよ。全身水除け装備にすることもできますが、最低靴さえ買っておけばなんとかなります。どうですか?」

「うーん」

 濡れないだけか。

「他の4ランクモンスターを狙うのはどうですか?」

「難しいですね。他にもいるにはいるんですが、数が少なくてめったに会えません。狙うならママイッカーかと」

「そうですか」

 ちょっと悩んだけど、やっぱり今ここで買い物をするのはやめておいた。今ここだけで判断するのはもったいない。もっとギルドでの情報を集めたからでも良い気がする。

 私は申し訳なく思いながらも見ただけで店を出る。でも店の主人は終始笑顔だった。

「あの、すいません。やっぱり、買うのはやめておきます」

「そうですか。いえ、いいんですよ。旅の方なら、ここの品は全部割高に見えるでしょう。そのせいもあって店番はいつも暇でね。もうたまのお客さんに商品を紹介することくらいが唯一の楽しみなんです。よかったらまたいらしてください」

 ただ冷やかしだっただけなのに笑顔で送られるのは、悪い気分じゃなかった。

 人は良いみたいだったから、やっぱり何か買えば良かったかな。でも、商品はみんなお高い。ううん、やっぱり今は無しね。


 お昼時になったので、レストランランギリに行く。

 そこは大きい店だった。しかも、見た目がきれいだ。

「いらっしゃいませー!」

 中に入るとすぐに店員がいて、笑顔で出迎えてくれる。しかも中も広くてきれい。中にはところどころ花が活けられていた。

 なんだか凄いところに来た気がする。

「あ、お客様。店内にペットの同伴は」

「あ、この子達テイムモンスターです。この子達も食べたいんですけど」

 私がそう言うと、店員が固まった。

「しょ、少々お待ち下さい!」

 小走りで奥へ行ってしまう。そして、しばらくすると戻ってきた。

「おまたせしました。テイムモンスターは他のお客様のご迷惑にならないようにとのことです」

「はい」

「お席はこちらになります」

 ここは店員が席に案内してくれるのか。凄い。

「メニューがお決まりになりましたらお声がけください」

「はい」

 え、このお店、本が置いてある。

 なになに、イッカーの刺し身200シクル?

 そうか。この本にメニューが書いてあるのね。これは見やすいわ。ていうか、高!

 これ、間違いないでしょうね?

「にゃあ」

(二リハ、ここ飯屋だろ。飯はまだか)

「ピー?」

(そうなの?)

「キュー」

(匂いはレストランですね。昨日も食べたショウユーとイッカーの味がします)

「ギャウ!」

(この椅子良いな、欲しいぜ!)

「ああ、待ってね、皆。あと、テムはここの物勝手に取っちゃ絶対駄目だから」

 いいや、ここにはわさびを食べに来たんだ。値段に気圧されず、注文しよう。

「あ、タッコーの刺し身っていうのもある。一人前500シクル、やばっ」

 い、いけないわ、ここ。予想以上に。防具買わないで本当に良かった。

 ひとまず、イッカーとタッコーをそれぞれ注文しよう。皆はふたりで一人前でいいよね?

 しかしそれでもそれぞれ3つずつ。お、お金が消えていく。

「あの、すいませーん」

「はーい」

「あの、これわさびついてますよね?」

「あ、はい。刺し身にはついてますよ」

「じゃあ、イッカーとタッコーを、3つずつ」

「かしこまりました!」

 私は勇気をもって刺し身とやらを注文した。

 注文の際に、お金を取られた。く、それなりに稼いでなかったらここも冷やかしてしまうところだった。

 そして結構早めに届けられた刺し身とやらは、驚く程きれいだった。

 一口サイズに薄く切られたものが、ショウユー、そしてきれいな黄緑色のものと一緒に届けられる。

 これが、きっとこの黄緑色のものがわさびなのだろう。それ以外のものは見当たらないし。

 ひとまず、いただきます。

「皆、味わって食べてね」

「にゃー」

(もぐもぐ)

「キュー」

(もぐもぐ)

「ピー」

(パクパク)

「ギャウ」

(がつがつ)

 皆、味わって食べてー!

 ていうか、しまった。あらかじめショウユーとわさびをつけてあげないと、この子達食べれないじゃない!

「にゃあ!」

(これ美味いぜ!)

「キュー」

(結構美味しいですね。野菜じゃないけど)

「ピー」

(美味しいわ!)

「ギャウ!」

(もっとねえのか!)

 あ、良かった。皆は満足してた。

 じゃあ、後は私だけか。

 まずは、わさびだけ食べてみる。せっかく別にされてるし。

「ぱくっ」

 なんだかツンと鼻にくる辛さが舌を焼いた。

「んんー!」

 いかん、これいかんやつだ!

 仕方なく耐える。予想外の刺激だった。でもこれ、本当に美味しいの?

 今度はほんのちょっとだけ、イッカーにつけてショウユーと共に食べる。

「あっ」

 すると、少しだけピリっとする刺激が、味覚を楽しませた。

「本当に美味しい」

 不思議だ。でも、たしかに宿の主人が美味しいと言うのもわかる。

 私はタッコーの刺し身も食べた。こちらも美味しい。初めて食べる味だ。

 イッカーとタッコーを薄く切っているのも、美味しさの秘訣となっている気がする。

 でも、高いわね。

 ここより安い場所、あるのかしら。いえ、きっとある気がする。

 それでも、やっぱりまだ高めな金額だとすると。

 これ、もの凄い高級品ね。

 しばらくは、いえ、もういいかも。お腹を満たすだけなら、黒パンかじってても平気だし。

 10シクルと500シクルって、雲泥の差だものね。

 けどまあ、旅の思い出としては、良かったかな。

「にゃー!」

(からーい!)

「キュー!」

(辛いですー!)

「ピー!」

(ヒー!)

「ギャウー!」

(かれー!)

 そして、皆もわさびを食べたらしく、店内に絶叫が響き渡った。

 その結果、店の奥からガタイの良い男の人がやって来て、私達を追い出したのだった。

 でも、多少騒いだからってそこまでする?

 ギルドの酒場なんて、いつも騒いでるわよ?

「あの」

「ふんっ」

 あ、扉を閉められた。

 もう、ここには来れそうにないわね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ