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イッカーとタッコー 2

「この新しい味、そして歯ごたえ。独特の匂い。これなら、俺は自信をもってあいつに出せる」

「シャスデリ。そう、見つけたのね」

 確かに、このイッカーとタッコーは悪くない。普通の肉とも違うから、新鮮な気分で食べれるだろう。

 私も、シャスデリの判断は、間違ってないと思った。

「ああ。これが俺の、新しい料理だ」

 シャスデリがそう言ってうなずいた。

「早く、あいつに食わせてやりたい」

「それが良いわ。そうしなさいよ」

「だが、そうもいかない。なあ二リハ。このイッカーとタッコーは、ここに来て初めて見たモンスターなんだろ?」

「ええ、そうよ」

「だとしたら、こいつらを新鮮な内にここからペースに運ぶ方法を考えたい。それに、本場の料理を学ぶ時間も必要だ。俺の新しい目標は、イッカーとタッコー料理のマスターと、イッカーとタッコーをペースの町まで運ぶことだ」

「確かに、そうね」

 それができなければ、シャスデリの目標が達成しない、か。

 料理を習得するのはできるんだろうけど、生の食材をここから持って行くというのは、難しそうね。

 というか、本当にできるのかしら?

「一応訊くけど、奥さんをここまでつれてくる、なんてのは無しなのよね」

「当たり前だ。ペースには店があるし、それにここはイッカータッコー料理の本場だろう。それじゃあ俺の新料理が白ける」

「たしかに」

 ナンセンスだったわね。私の発言は。

「じゃあ、食材を運ぶあてはあるの?」

「一応ある。1つは、冬を待つことだ。寒くなれば、その分生モノも腐りにくくなる」

「なるほど」

 たぶんそうなのだろう。私はそういうのよくわからないけど。

「イッカーとタッコーなら、干物にして持ち歩くこともできるぞ」

 ここで、宿屋の主人がそう言った。

「干物。そうか、干すのか」

「ああ。イッカーとタッコーの干物は保存食に向いててな。高レベルの冒険者は大体それを持つ。それに旨味も増して、酒にも合うぞ。どこかに行商する気なら、一度見てみるといい」

「ああ、わかった。それも確かめよう」

「ところであんたら、イッカーとタッコーを求めてここまで来たのか?」

「ああ、まあな」

「変わったやつらだな」

「そうだな。だが平凡なものは求めてないから、それでいいのさ」

「ほう。言うねえ」

「ああ。俺はプロの料理人だからな」

 その後、私達はそれぞれ自分の話をして、頃合いを見て眠った。

 シャスデリは求めるものを見つけたからか、いつもより早く、かつグッスリ眠った。


 翌朝、私達はまたシャスデリの料理を食べた。

 今回はスープだ。イッカーとタッコーの味がスープにしみ出て、かつ食感も少し変わって美味しかった。

「これもいけるわね」

「うーん。やっぱもっと味が濃くないとな。だが、なんとなく使い方がわかってきた」

「くうっ。旅の宿場だっていうのにえらく美味いな。俺も料理ができればなあ」

「時間があるんなら覚えたらどうだ。料理は人生の半分だぞ」

「なるほど。人生の半分か。そうだな、たまにはやってみるのもいいかもしれない」

 腹を満たした私達は、すぐに旅の宿を出た。

 ちなみにこの宿の主人はこの後少しだけ料理の腕を磨いて、旅の宿で料理を振る舞って少しだけ小遣い稼ぎすることにしたらしい。


 その後はイッカーを倒しまくりつつ、無事カルミヤに着いた。

 その間にタッコーは現れなかった。もしかしたらタッコーは町に近づかないタイプなのかもしれない。

 なにはともあれ、門をくぐったところで、他の人に迷惑にならないように壁の端に寄りながら、私達とシャスデリは向かい合った。

「二リハ、世話になったな。お前との旅も、ここで終わりだ」

「ええ。寂しくなるわね」

「そうか。俺は嬉しくてたまらないがな。またあいつが俺の料理で胃袋をつかまれると思うと、うれしいもんだ」

「そうね。そうだったわね。あなたはそうね」

「ガハハ。冗談だよ。お前さんには恩がある。またいつか、俺の料理を食いに来い。しばらくしたら、ペースにな」

「ええ。またそっちの方に行けばね。私の味の好み、それまで憶えておいてよ」

「憶えてる内に来るんだな」

「もう。旅の思い出くらい大切にしなさい」

「イッカーとタッコーに比べれば霞むだろうなあ。あとそれと、ショウユーな。更にもう2つ、干物とわさびも食ってみねえと」

「これから大忙しね。早く、じゃないか。無事に奥さんのもとへ帰りなさいね。私はまた旅に出るけど、帰りも良い冒険者を見つけるのよ」

「ああ、わかってる。お前程の腕のやつをまた見つける、か。そう思うと難しく感じるな。よし。未練がましくなる前に別れよう」

「宿は一緒じゃなくていいの?」

「そんなのは白けるから俺は別にする。じゃあな。元気でいろよ。ちっこいお前らもな」

「にゃー」

(じゃあな、手下)

「キュー」

(ここでお別れですね)

「ピー!」

(ごはん美味しかったわ!)

「ギャウ」

(なんだ、もうごはん作らねえのか)

「みんなもまたねって言ってるわ」

 そういうことにしておこう。うん。

「本当かあ?」

 シャスデリ、鋭い。

 けれど、真実は私のみぞ知る、である。

「この子達は素直なのよ」

「まあ、そういうことにしといてやるよ」

 こうして私達は別れた。後で冒険者ギルドに行くと、シャスデリの依頼が達成扱いになったと報告を受けた。

 それと同時に、ロント村の周辺調査も頼まれた。私がそこでスカルポイズンモンキーを倒したから、名指しで頼まれたんだけど、やっぱり来た道を戻るのも嫌だし、その話はちゃんと断っておく。

 かわりに、ロントで換金できなかった分の小切手や毛皮素材を売って、それなりのお金を得た。もとから持っていた分もあるし、当分は生活費には困らないわね。

 けど、5ランクのモンスターと戦って、少し力不足を感じた。ううん、ダークネスウルフと会った時はあんなものじゃなかったと思う。

 まだ私達には、力が足りない。

 できればここで力をつけて、5ランクに上がっておきたい。

 いや、ランクというよりは、ちゃんと実力を上げておきたい。

 皆の力を底上げするだけでなく、いざという時自分自身の力で身を守れるように。いや、むしろ私が皆を守れるように。

 強くならないとね。目指せ。5ランクモンスターの安定討伐。

 でもその前に。

 まずは銭湯だ。久しぶりにゆっくりしよう。

 私は銭湯で皆を入念に洗ってから、心ゆくまで体を芯から温めた。



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