石砕きの刃と共に 2
ゆっくりお湯に浸かって、さっぱりした。
ふうー。満足したわ。
これでまた頑張れるってものよ。
外に出ると、ポリシャとランゾはもう待っていた。
「もっときれいになってる」
「ああ、そうだな」
「おまたせ、二人共。待った?」
「いえ、全然待ってないです!」
「まったく、ポリシャったら」
さて、それじゃあ次は。
「まだ日が明るいし、次は防具屋につれてって。それか食料屋」
「はい、わかりました。こっちです!」
私は一通り紹介された店を見た。
やっぱり、この町の人に案内してもらうと助かる。これからも頼んでみようかな。
夕焼け空になってから、レストランを案内してもらった。
店の名前はショベル。中に入ろうとして、私はキュール達を見た。
「あなた達は入らないの?」
「私達はその、お金、あんまりないんで」
キュールがそう言って、えへへと笑った。
そっか。でも、ここでお別れというのも、寂しすぎる。
「せっかく来たんだから、食べていきましょう。今回は私が奢るわよ」
「え、いえ、悪いですよ!」
「お、俺は、自分で出してもいいっ」
「それなら、ありがたく食べさせてください」
キュール、ポリシャ、ランゾの思いが皆バラバラだ。
面白いな。なんか。こんな会話も久しぶり。
少なくとも、悪い子達じゃない。
「今日、町を案内してもらったお礼よ。あんまり高いのもダメだけど、少しくらいならかまわないわ。ほら、入って入って」
「いえ、そもそも、私達助けてもらったお礼に案内してたんですけど」
「そ、そうです。おごってもらうなんて」
キュールとポリシャが渋っていると、ランゾがこっちへ来た。
「あ、ランゾ!」
「お前らも、おごってもらえ」
ランゾは振り返って言う。
「久しぶりの、美味い飯だぞ」
「うっ」
「ぐっ」
お、効いてる効いてる。
「ランゾ、あなたは素直ね」
「もらえるものはもらっておきたいので。それに、俺も案内したこの店が本当に美味いかどうかも気になります」
「なるほどね。さて、あなた達はどうする。ここで立っているのも周りの邪魔よ?」
「そ、それじゃあ俺も」
「わ、私も」
2人もおずおずとこっちへ来る。
「ごちそうさまです、二リハさん」
「はい。せっかくの依頼の後だもの。しっかり食べて、一息ついて」
皆でメニューを注文する。ごはんが運ばれるまでの間、私達はなにげない話をした。
「二リハさんが倒したモンスターの中で、一番強かったのはなんですか?」
「一番強かった、ねえ。うーん。あ、フェスティバルプラントっていうのがいたわ。何十人ものほかの冒険者と一緒に戦ったんだけど、大きなツルで攻撃されて、近づくのも一苦労で。あれは大変だったわね」
「何十人もの冒険者と?」
「そんな依頼もあったんですか?」
「ええ。集団依頼って言って、集まった冒険者と一時パーティを組むの。そこで知り合った冒険者の一組がこれまた嫌な奴でね。その時3ランクだった私を足手まといみたいに言ってたわ」
「あはは。でも、冒険者なんて、そんなものですよね?」
「そうかしら。もう一組のパーティは礼儀正しかったけど。それに、嫌な奴は普通に嫌よ」
「二リハさんにそんな態度をとるなんて、なんてやつらだ!」
「災難でしたね」
「んーまあでも、その人達は最後には丸くなったんだけどね。ちょっと前の出来事だったけど、なんだか懐かしいわ。お金もいっぱいもらえたし」
「集団依頼って、そんなに儲かるんですか?」
「あの時はモエルが大活躍してくれたから。そのおかげよ。仲間が褒められてると思うと嬉しかったわ」
「やるな、カジーニャなのに」
「にゃー」
(なめんなよ)
ランゾはモエルを見て感心している。
でもたしかに、その見た目からはあんまり強そうには見えないわよね。
それはそれで相手の油断を誘えて、いいかもしれないけど。
「あなた達は、どうなの。調子は?」
「あー。私達は、スタンプホースに、大苦戦するくらいです」
あ、振っちゃいけない話を振ってしまった。
「ごめんなさい」
「いえ、いいんです。でも、当面はスタンプホース以下の相手が、手頃かなあ」
スタンプホース以下。つまり、2ランクのモンスターね。
「まだ実力が伴わない内は、それが安全かもしれないわね」
「お、俺、きっとすぐにスタンプホースなんて楽に倒せるようになりますから!」
「ポリシャ。油断は禁物よ。依頼には自分たちの命を賭けてるんだから、慎重くらいが良いわ」
「は、はい」
ポリシャがうなだれる。すると、ランゾがポツリと言った。
「二リハさん。その、まだ仲間内で相談もしていないのに、こんなことを訊くのもどうかと思うんですけど」
「あら、何かしら?」
「二リハさんの依頼、俺たちで手伝わせてくれませんか?」
え?
「ちょっと何言ってるのよ、ランゾ」
「そうだぞ。だいたい、俺達じゃ二リハさんレベルの依頼は足手まといだ」
「違う。そういうことを言ってるんじゃない。二リハさんが目的のモンスターと出会うまでの道中、俺たちが戦うんだ。俺たちはその倒したモンスターで生計を立てる。二リハさんはそれまでの間体力を温存して、目的のモンスターと全力で戦う。それなら、ウィンウィンの関係なんじゃないですか?」
ふむ。なるほど。
「それは、いいかもしれないわね」
「え、でも、いいんですか?」
「それなら、たしかに手伝えそうだが」
「このあたりの土地勘は俺たちの方があるし、それに、まだ俺たちは二リハさんに恩を返しきれていません。だから、それくらいさせていただけないでしょうか」
「私はいいわよ。ひとまず、一回それで様子を見るってことで。でも、キュールとポリシャはどう?」
私は2人に確認した。
「二リハさんが構わないなら、俺はそれでオールオッケーです!」
ポリシャの返事は早い。
「ふ、2人が、いえ、二リハさんもそう言うなら、私もそれで、かまいません。むしろ、こちらこそよろしくお願いします!」
キュールも頭を下げる。
これは、ランゾの言う通りお互いに良い話かもしれないわね。
「それじゃあ、明日の朝、冒険者ギルドで会いましょう。そして相談して依頼を決めよっか」
「はい!」
これはまた、頼もしい仲間が増えた。
いや、実力的にはまだまだだけど、でも、彼女たちには戦闘以外の効率に期待する。
この町に来てそうそう、良い子たちに会えて良かったわ。
そして運ばれてきた料理は、美味しかったけど、味が濃かった。
私はもっと、薄味が良いなあ。
喜んでたのは、ミドリとポリシャくらい。
でも、久しぶりのまともなごはんだったから、ある程度は満足できた。




