石砕きの刃と共に 1
ペースに着くと、ホッとした。
無理もないか。まるまる10日あるき続けたんだものね。
あるきどおしだったことは今までもあったけど、宿が無いのは初めてだった。
ここまで来ると、なんだかどっと疲れが押し寄せてきた。
「やっと、たどり着いたわね」
「にゃー!」
(飯だー!)
「キュー!」
(ふかふかのベッドですー!)
「ピー!」
(ここまでくれば、敵との戦いは無いわね!)
モエル達も喜んでいる。
皆もよく頑張ってくれたわね。ちゃんとねぎらってあげよう。
「帰ってこれた」
「ええ。そうね」
「また明日から、依頼を受けないとな」
ポリシャ、キュール、ランゾが言う。
「冒険者ギルドは、あそこね。それじゃあまずは、素材を換金しましょう。その後、宿屋を案内して」
「はい!」
さあ、あともう少しだ。
荷物を軽くしたら、ゆっくりのんびり休もう。
素材センターで、持ってきた素材は結構高く売れた。
キュール達も、依頼の達成を済ませた。再び合流して、宿屋に案内してもらう。
その際に、私はその次の目的地を訪ねた。
「ねえ。宿屋の近くに銭湯はある?」
「銭湯ですか。少し遠くになりますが、ありますよ。あ、それとも銭湯に近い宿の方が良いですか?」
「うーん、そうね。ここでしばらく依頼を受けようと思うから、宿はギルドに近いところでいいわ。そんなに遠くないなら、大して気にしないし」
「そうですか。それじゃあ、このまま案内します」
「俺たちも、しばらく銭湯には行っていなかったな。たまには入るか」
「ぐ、今は金もそんなにないだろ。我慢していいんじゃないか?」
ランゾの提案に、ポリシャは難色を示す。
けれどそれはない。ありえないわ。ポリシャ。
「ちょっと、ポリシャ、何言ってるの。お湯くらい入りなさいよ!」
「何言ってんだ、金の方が大事だろ!」
それは絶対違う。私もキュールに続いて言う。
「皆にはもう少し案内してもらいたいから、臭いのはちょっと。それに、銭湯は大事よ。身も心もさっぱりするんだから」
「そうよ。二リハさんの言う通り!」
「ぐ。わかったよ」
「お願いね。案内を全部終えてから銭湯に入ってもいいけど、どうせならすぐに入りたいし。一緒に入ったら、その後もスムーズじゃない」
「一緒に入る」
「ポリシャ。男湯と女湯は別だぞ」
「そ、そんなのわかってるよ!」
「ポリシャったら最低!」
「何言ってんだキュール!」
そう言っている間に、宿屋に着いた。
「それじゃあ、部屋が空いてたら泊まるわね。ところで、あなた達はどこで寝るの?」
「俺たちは、冒険者ギルドで寝泊まりしてます」
ああ。あの噂の。
どうやら、本当にお金が無いみたいね。
「そう。それじゃあ、ちょっとまってて。行ってくる」
「はい。私達はこのままここで待ってます!」
こうして私達は、宿屋に泊まって、荷物を部屋に置いた。
さあ、久しぶりの銭湯だ。
「皆、おまたせ」
宿屋から出ると、キュール達は黙って私を見つめた。
「あの、皆、どうかした?」
「い、いえ。二リハさんって、普通の服を着るとそんな感じなんですね」
キュールにそう言われて、すぐに察する。
「ああ。そうね。装備は宿にあった方が安心できるでしょ。それに、重いし、着づらいし。普段着も持ってきてあったし、こっちの方が良いかなって。待たせちゃった?」
「いえ、全然待ってないです!」
ポリシャが即答する。良かった。
「そうして見ると、普通の町娘ですね。二リハさんって」
ランゾがそう言う。
「そりゃね。武器持ってないし。さあ、それより銭湯に早く行きましょうか!」
「はい!」
私は皆を急かした。
だって、お湯が私を待っているから。
ああ、早くゆっくりしたい。
もちろん銭湯に入ってすぐに、モエル達を念入りに洗った。
旅の間にすっかり汚れたものね。特にモエル。自慢の毛並みをしっかりきれいにしておく。
「にゃー」
(なんか疲れたー)
「キュー?」
(そうですか?)
「ピー」
(ピカピカになってきれいよ)
「にゃー」
(んん、まあな。俺だしな)
なんかモエルが変な自慢の仕方をしている気がする。
まあいいや。私もやっと、お湯に入る。
「はあー。生き返るー」
「そうですねー」
隣にはキュールも一緒だ。お、シャインも隣まで泳いできた。でも銭湯ではあまり泳がないでね、シャイン。
「やっと一息つけるわ」
「二リハさんは、隣のカタード領から来たんですよね?」
「ええ、そうよ」
「やっぱり旅を続けるって、大変ですか?」
「うーん」
まあ、そうねえ。
「大変だけど、それでも続けたいのよね」
「その理由、聞いてもいいですか?」
「いいわよ。私、好きな人がいるの」
私はゆっくりお湯に浸かりながら、旅の目的を話した。
するとキュールは、ほうっと息を吐いた。
「素敵ですね」
「でも、そんなに良いものでもないけどね」
「そうなんですか?」
「今のところ手がかりは0。いつになったら出会えるかもわからないし。まあ、それでもやりたいんだけどね」
「応援します。私!」
「ありがとう。私もキュールのこと、応援するわ」
「え、あ、ありがとうございます」
「ポリシャのこと、気になってるんでしょ?」
「えっ、そ、そんなこと、ないです。あいつとは、ただの幼なじみだし」
「まあ、違うなら、私の勘違いだけど。でも、会える時に仲を進展させないと、後で後悔するかもよ。あとになってからじゃ、遅いかもしれないんだから」
「は、はい。二リハさんが言うと、説得力ありますね」
「んーまあ、恋バナだし。それに、ね」
私はお湯を両手ですくって、そのお湯をそのまま落とした。
「恋をしている方が、人生って生き生きすると思うの」
「やっぱり、説得力あります」
「キュー」
(ボクは今もう生き生きしてますよ。二リハ達との旅は最高ですー)
「ありがと、シャイン」
もうちょっと、今日はお湯に浸かっていよう。




