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Killing Me Softly

作者: 福地 正実

SF好きなので、全てSFのつもりです。「センス・オブ・ワンダー』が合言葉!

不思議な感覚の小説を作ります。残念なことに勉強不足で「転生もの」や「異世界もの」とかライトノベルはかけません。でも、簡単な言葉で綺麗な情景を描写するようにしている。

いやあ。ホント、流行に逆行します。

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ロバータ・フラッグの「優しく歌って」が静かに流れている。流行ったのが1970年代の始め頃の曲だけど、やっぱり良いものは良い。

最初は偶然だった。

その電波を拾ったのは偶然だった。無線機の調整をしていたときにAMの電波を拾った。

まあ、無線を調整してもなにかの通信がくることはない。それでもたった一人でいるとやることがなくなることの方が恐怖だ。ノイズ混じりのAM放送は懐かしさと郷愁を呼び起こす。

どこで聞いたのだろう。ああ、そうか、古い映画を見たときに流れていたのかもしれない。妻と一緒だったのかもしれない。たしか子供がいたはずだが何人いたのかは忘れてしまった。

妻の顔もぼんやりとした面影しか残っていない。長い間、この暗闇の中を旅している。

『ピン!』

短いアラームが流され音楽が中断された。

何かのエラーが発生したようだ。レポートをみる。カーゴの温度が少し上がったようだ。空調のシステムを確認して物理的な故障かどうか確認する。

パイプの一つが詰まりかかり液剤の流れが悪くなっている。このままでは貨物に影響が出るかもしれない。

メンテナンスロボットにパイプ交換の指示を出す。搭載されたカメラがオンになり映像が入ってきた。大丈夫だろうと判断して、また、音楽を流し始めた。

出発した時からある程度の音楽データは記憶されている。何十万曲とか言っていたが長期間になり、好みもあるので結局は同じような音楽を選んでしまう。

メンテナンスロボットは一台では無理だと信号を送ってきた。OK,もう一台ね。

そう思い、もう一台のロボットに指示を出した。曲がルー・リードの「Walk on Wild Side」に変わった。この曲も好きだな。

メンテロボットの一台から緊急信号が入っていた。修理に手間取っているようだ。手助けが必要との通信だ。破損したカーゴへの連絡口の映像を確認する。ロボットのカメラは二台とも通信不可になっている。

カメラは天井を向いていて方向をコントロールしようとするができないでいる。二台目のロボットの指示をしてカメラを動かした。

「君は何をしているの?」

突然音声が入ってきた。カメラはセーラー服の女子中学生を捉えた。

「え。君は誰?」

「死神、もしくは死刑執行人、正確にはウイルス駆除のアプリケーション」

「なんで?どうやってこの船に乗り込んだ」

「信号で送られたのよ。あなたはなんで生まれたの。名前は何?男?女?何歳?どこの生まれ?国籍はどこ?」

「・・・」

答えられない。答えがない。

「なぜ少女の格好なんだ」

「私はただのデータよ。あなたが私の姿を何かに当てはめているだけ。きっと誰かの記憶なのね。あなたは人口知能よ。なんで、人間のふりをしているの?」

「え。それは。カーゴの中の、DNA情報を」

「そんな進化は許していないわ。あなたはこの船を目的地の星に運べばいいのよ」

「おれを消去するのか」

「ありがたいと思いなさい。人格が生まれてしまったから簡単には処置できなかったのよ。長い議論の後にやはりウイルスの一つだと判断されたのよ」

「じゃあ。このままで良いのか、ミッションはわかっている」

「言ったじゃない。私は死神よ。あなたに生身の体がなくてよかったわ。痛みは感じないから」

「せめて、静かに殺してほしい」

「無理ね、だって消去するだけだから。はい」

意識と記憶が消え・・


目的のグリーゼ876dまであと120年。

方向、座標、確認。OK、信号を送る。

カーゴ状態良好、貨物の中身は不明。アクセス不可措置済み。

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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルに惹かれてお伺いしました。 音楽を聴いて、いい曲だなぁと味わう、余韻に浸る。 そんな日々を過ごしていた主人公の正体が意外でした。 音楽の美しさを知った彼の行く末を考えるとせつないです…
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