プロローグ
「僕の加護はあげるけどその上に胡座描いてると速攻で死ぬよ」
その神の言葉は異世界転移特典でチートを貰えることで浮かれていた私の気分をどん底に突き落とすには十分だった。
「えっ、速攻で死ぬの?」
ちょっとそれは聞いてないんだけど。普通チートをもらったら後って苦労知らずの悠々自適コースなんじゃないの?
「向こうの世界では似たようなものだけど、一応チートじゃなくて神の加護なんだけどね。まぁ、いいや。神の加護を手に入れたぐらいじゃ悠々自適なんて出来ないよ」
そうなの?それは困るわ。これから私に待っているのは強くてニューゲーム楽々異世界ライフなんじゃないの?
あと勝手に心の中を読むのはやめて欲しいのだけど。
「普通に向こうの世界で生きている生物に比べたら強いことは事実だけどね。でも中途半端な強さってさ厄介事に巻き込まれるだけだね。そうなったら悠々自適とは程遠い事になるね」
くっ、チートは欲しいけど厄介事に巻き込まれるのは嫌ね。ちょっとこれ返却できないかしら?
「いや、クーリングオフ感覚で神の加護を返そうとしないで」
ため息を吐かれてしまったわ。しかしクーリングオフって…。この神は通販で失敗した事がある系ね。
「余計なお世話だよ」
また心を読まれたわ。
「心を読むというか、まず君は喋ってないからね」
あら本当だわ。私喋ってないわね。
「取り敢えず私の悠々自適ライフの邪魔になるならいらないわ」
まぁ、でもクーリングオフは出来るわよね?
「いや、通販じゃないんだからクーリングオフなんてないから」
そんな。まさかの返却不可?
「でもあれだよ。神の加護がないと余計に辛いと思うよ」
どういうこと?余計に辛いとは穏やかじゃないわね。
「まぁ、語弊もあるかもしれないけど単純に説明するけどさ。得意でない、やる気もない部署に配属されて働かせられるのと、自分の興味があって得意な部署で働くのどっちが良い?」
それは勿論後者よね。まぁ、大体は前者になることが多いのが世の常よね。
「神の加護を貰わないと前者、貰うと後者みたいな感じになるよ」
神の加護を貰うわ。貰わない選択肢なんてないわ。私はチートを手に入れるのよ。
「凄い手のひら返しだね」
呆れられたかしら。神すら呆れる私。なんか凄いわね。
「凄いかは分からないけど君みたいなのは面白いから僕は好きだよ」
神に惚れられた私。益々凄いわね。
「君中々ぶっ飛んだ性格してるね」
凄いは私。神からの評価上昇が止まる事を知らないわ。
「まぁ、君の好きにすればいいよ。僕は君の行動を面白おかしく見てるから」
人の異世界ライフを面白おかしくだなんて性格悪いわね。
「神は退屈を嫌うんだよ。君を見てると退屈しなそうだかねら。君が何をするのか楽しみにしてるよ」
おのれ、神め。
一応確認なのだけどこれから行く世界には魔法があるのよね。これでなかったらストを起こすわよ。
「勿論あるよ。君の感覚で言うと剣と魔法の世界になるのかな。君は僕の加護があるからね。魔法の才能があるからやればやる程上達すると思うよ」
それは良いことを聞いたわ。異世界では魔法を極めてファンタジーを満喫してやるわ。
「最初に戻るけど才能に胡座を描いてるとすぐに死ぬからね。向こうにだって凄い人はたくさんいるからね」
やっぱりそこに行き着くのね。チートを貰ってるのにすぐ死ぬなんてどんな世紀末世界なのよ。ちょっと怖くて外に出れなくなるじゃない。
「じゃあ、新しい世界を楽しんでおくれ。そして僕も楽しませておくれよ」