赤珊瑚と桃珊瑚の見た思い(13)
みなもを囲むように鞭が襲う。みなもが、ぐるりと周りに光を張り巡らせ鞭を受け止めると、鞭は水玉となり弾け飛んだ。
(⁉なんじゃ!)
みなもを襲った鞭が次々と水玉になっていく。だが、真上からきた一本が、光に触れたとたんに桃瑚売命の姿になった。身体をクルッと一捻りするとみなもを狙い拳を突き出して襲う。
桃瑚売命の拳は光を通り抜け、グッと鋭く突き出されていく。それはまさに一撃という言葉にふさわしい、闘気をまとった正拳の突きであった。
みなもは右腕で拳を防ぎながら、勢いよく後ろに下がり威力を逃した。それでも受け止めた右腕の防具は砕け散っていた。激痛が襲い、思わず目を細める。
「水の神。武具による攻撃は受けつけない。だが、唯一受ける攻撃がある。それは素手による攻撃。水の性よね」
桃瑚売命が格闘術の防具を身につけ、拳を見つめる。その姿は闘神という言葉がピタリと当てはまった。姉である赤瑚売命より武に優れていると謳われた妹。そう神々から認められるようになったのは、ユウナミの門守の神となってからだ。争いが収まった後でも、天上神に恨みを持つ多くの大海、地の神々、その他にも悪霊、妖怪などの魑魅魍魎がユウナミを襲った。それら全てを葬り去り、ユウナミを守った赤と桃の二柱。その数々の武勇のなか、桃瑚売命はあらゆる武術で姉を圧倒していた。神々はその姿に、勇の赤瑚売命、武の桃瑚売命と称え、恐れた。
「直前に私に気づいて防御したのは褒めてあげる。けど、その腕はもう使えないわね。人の身体だから骨は砕けたはず。もっとも、防具がなければ吹き飛んでいたわよ」
桃瑚売命がニコリと笑う。みなもは表情を変えることなく、スッと左手に青い光を纏うと右腕を押さえた。内出血でどす黒くなっていた右腕がもとに戻る。
(あれは水波野菜乃女神の力。そう、水面野菜乃女神はその妹。やはり、食えない奴)
「分霊とはいえ、あなたは妹よね。さっき、姉に憧れていると言ったけど、あれは本心なの?」
「本当も嘘も無かろう。儂は、姉さに憧れて生まれたのじゃ。それ以外答えようもなかろう」
みなもは幸せな笑みを浮かべる。その顔を桃瑚売命は突き刺すように睨みつけた。
「もう一つ。お前はいつまでも姉を追い続けるつもり?」
「そうじゃな。儂にとって姉さは、姉さじゃ。これからもずっと、姉さのようになりたいと思うであろう」
「姉を越えるつもりは無いのね」
「考えたことはないのう」
みなもは桃瑚売命の瞳を見つめる。その瞳に飲まれる寸前に桃瑚売命は桃色に瞳を輝かせた。
「いつまでも姉を追うなど。笑わせるわね。それでは、ただの木偶だ!」
桃瑚売命が叫ぶと、みなもに拳を振りかざし攻撃を仕掛けた。




