赤珊瑚と桃珊瑚の見た思い(5)
赤瑚売命の手に東門仙の封書が納められた。ゆっくりと封書を開けていく。
二柱が封書を見つめる。封書の中に文字などない。あるのは一つの世界だった。真っ白な紙の中に広がる世界。それは陰と陽が互いに混じり合う世界であった。どちらが大きいとうことはなく、互いが引き合う世界。
二柱はその世界を眺めていた。その世界に東門仙の願いと覚悟が込められていた。この調和が崩れるとき、東門仙は全ての責めを負い、天津が原へと消えること。この封書の世界はそう語っていた。
赤瑚売命と桃瑚売命は互いの思うことを確認した。
(門の神がこうまでしてなぜ人に味方をするのか。その答えがユウナミの神が待つものであるのなら、ユウナミの神は闇に対峙するお覚悟。それを我らが止めることはできぬ。ならば)
「そこの人」
赤瑚売命が真奈美を見る。
「いま、お前は琴美を待つ運命を知ったであろう。それでも行く覚悟はあるのか。この先を進めば、後へは退けぬ。動くものが大きいのだ。いま一度問う。それでも行くのか」
赤瑚売命の突き抜ける厚い声に真奈美は答える。
「琴美に待つものが何かは分かりません。だけど、そこまでしても琴美が望んでいたものがあるのなら、私は行かねばなりません。例えそれがどんなに大きな罪でも私は琴美のもとに行きます」
赤瑚売命と桃瑚売目は、互いを見ると頷いた。
「ならば、その覚悟があるのか見せてもらうわね。本当に私たちの目を誤魔化せると思ってたの?ずーっと、見えていたのよ。このまま見過ごしてユウナミの神の前に行かせるわけにはいかないのよ。さあ、いつまで隠れているつもりなの?人ならざるもの!この先は通さない」
桃瑚売命は叫び声とともに矢をつがえ、実菜穂達に向け構えた。
次の瞬間、あたりは暗く静かな世界へと包まれていった。




