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泣いているんだね。もういいんだよ(6)

 陽向が実菜穂を見ると、泥だらけの姿に目を丸くしていた。だが、陽向以上に驚いたのは実菜穂である。


「いやいや、陽向ちゃんこそどうしたのその姿⁉大変だよ!血が出てるし、顔色も悪いよ。病院行かないと。とっ、とにかく、真奈美さんのところに」


 実菜穂が目にしたのは、服もジーンズも切り裂かれ、胸元や足に流血の跡がついた姿だった。


 実菜穂は陽向の手を引くと真奈美の待つ鳥居に入った。真奈美も陽向の姿に驚いたが、素早くスポーツタオルを取り出し、露わになった胸元を押さえた。実菜穂はミネラルウォーターを手渡した。陽向は力が入らない手で受け取ると、一気に半分ほど飲んだ。よほど喉が乾いていたのかフーッと息をついた後は、顔色がいつもの陽向になった。


「ありがとう。あーっ、人心地ついたあ」


 元気を取り戻した陽向が笑う。本人はあまり気にしていないようだが、露わになっていた胸元や引き裂かれて素肌の見えるジーンズは、どう見てもただ事ではない。


「あの邪鬼に襲われたの」

「まあ、そんなところ。でも大丈夫。片付けたから。それにほら、血も止まってるでしょ。昔から傷の治りは早いんだ」


 実菜穂の心配をはねのけるように、陽向は笑っている。


「さすが陽向さんです。だけどものすごく疲れているのではないですか。かなり危険だったのでは」


 真奈美が陽向を木陰に連れて行き、腰を下ろして休ませた。


「なんとか祓えました。私たちに幻覚を見せていたのは、邪鬼の頭領」

「陽向ちゃんがやっつけちゃった?」


 実菜穂の問いにニッコリとして頷いた。


「勿論って言いいたいけど、夜神に助けられちゃった」

「夜神ですか?」


 真奈美が興味を示す。


「うん。夜神が夜の世界で()()()()()()。あれは、きっと結界。おかげでなんとかやり過ごせたの。大丈夫。敵もいるけど、味方もいる。希望は十分にあるよ」

「あーっ、味方と言えば、そうそう」


 実菜穂は、いまあった出来事を説明した。



「死神が動いている。それは力強い味方だよ」

「だけど、死神はなにも答えてはくれません」


 真奈美はタオルを陽向の胸から肩に掛けて巻くと背中で結びつけた。包帯と上着代わりといったところだ。


「真奈美さん。死神が答えないのは、本気で御霊を取り戻させるためです。ユウナミの神は、すでに私たちを見ています。感じませんか?この力強くて熱い。それでいて安らぐ空気」


 陽向はゆっくりと息を吸い込んだ。


 涼しい風が、三人の火照った顔をなでていく。


 騒いでいた心が次第に落ち着いていくのを真奈美は感じていた。

 

「いま、感じました。さっきまで感じることがなかった空気。不思議だな。この感じ」


 真奈美はあたりを見渡し、五感を使い神社の空気に触れていた。


(確かにユウナミの神の姿を感じる。でも、その前に何かすごい壁がある)


 実菜穂は、スッと息を吸い込むと随身門の方を見つめていた。


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