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泣いているんだね。もういいんだよ(3)

 真奈美が胸ポケットから光る物体を取り出す。光っていたのは、コノハからもらった九つ葉のクローバーだった。クローバーが眩しい輝きを放つと、その光はヒイラギの葉となった。無数のヒイラギの葉が足に絡まった糸を断ち切っていった。


 実菜穂と真奈美は足が自由になると、素早く立ち上がった。痛みも汚れも気にしている暇などない。

 蜘蛛はヒイラギの葉と格闘している。その隙に二人は鳥居へと走る。鳥居までは五十メートルほどの距離だ。

 ヒイラギの葉を払いのけた蜘蛛が二人を追いかける。その速さは巨体からは想像できないほど素早く、野獣のようであった。蜘蛛は再び糸を繰り出し、実菜穂を捉える。実菜穂はそのまま立ち止まり、真奈美を隠すように蜘蛛の前に立ちはだかった。


「真奈美さん、早く鳥居に入ってください」

「でも、実菜穂ちゃんが」


 真奈美はクローバーを持ち駆け寄ろうとしたが、実菜穂が遮った。


「駄目です。いま、蜘蛛は私に糸を絡めました。真奈美さんはすぐに逃げてください。鳥居に入れば、そこからはユウナミの神の聖域です。手出しはできません。早く」

「でも、それでは実菜穂ちゃんが」


 真奈美の言葉を実菜穂が遮った。


「行ってください。琴美ちゃんが待っているんです。蜘蛛が狙っているのは私じゃない。真奈美さんです。だから行ってください」

「どうしてそんなことが言えるの?」


 真奈美が半分泣きそうな顔をして実菜穂を見ると、実菜穂は振り向いてニッコリと笑顔を見せた。


「妹の勘です」


 その言葉と同時にクローバーが光り、鳥居の方向から無数の蔓草が延びて真奈美を包むと、そのまま鳥居へと引っ張っていった。蜘蛛も糸を真奈美に放っていたが、蔓草が真奈美を運ぶ方が早かった。


 実菜穂は足に糸を絡めたまま蜘蛛と対峙していた。


(さあ、どうするかな。やっぱり私も狙われてるのかな。だとしたら、目的は)


 不思議なくらい冷静な目で状況を観察している自分に驚きながら、蜘蛛の瞳を見つめていた。 


 蜘蛛の瞳がゆっくりと茶色に染まっていった。

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