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この子は!(6)

 陽向が守りに掛けた手が赤く光る。その光から剣が取り出された。両刃の剣。先端は鋭く尖り、刃には厚みがあった。


(あれが、カムナ=ニギの剣)


 夜神の瞳に抜き出した剣が映し出される。だが、次の瞬間にはその顔に興ざめの色が表れた。

 陽向は、剣を引きずるように地面に落とし肩で息をしている。剣も光を失いくすんでいた。まるで錆びた重い鉄の塊を持っている姿であった。


(私は期待を外されたのですか?)


 夜神の瞳は陽向をジッと見つめていた。陽向は、肩で息をし続け、俯いたままであった。


「なあんだ。武具を出すなんて、やはりただの人ではないね」


 ジバはニヤリと残虐な色の笑みを浮かべると、邪鬼に陽向を襲うよう指示を出した。十ほどの邪鬼が陽向に襲いかかる。興奮した二、三の邪鬼は夜神の方に飛びかかる。


「邪魔です」


 夜神が軽く払いのけると邪鬼は近づくこともできずにはね飛ばされ、地面に叩きつけられると体は弾け飛んだ。


 陽向に襲いかかった邪鬼は鋭い爪と牙で攻撃を仕掛ける。陽向は重そうに剣を振り回し、何とか間合いを取るのが精一杯の状況であった。


 ジーンズも上着の袖も切り裂かれ、陽向のふくよかな胸元には肩から流れた血がその跡をつけていた。邪鬼を一体も倒せぬまま、荒い息遣いで立っている。


(この子は何を考えている。剣を使うだけの力がない?まさか、邪鬼を気遣っているの?それとも私を信用していない?)


 夜神は力尽き必死で立つ陽向を見つめ続けた。引き裂かれていく服と身体。その血で染まる胸元に赤い光を見つけた。


(そういうこと……陽向。この子は)


 陽向は襲い来る邪鬼に再び重たい剣を振り回す。その姿は、重い棒を持ち必死で獣を追い払う小さな女の子のようであった。


「アッーッ!」


 陽向は、引き裂かれた痛みに悲鳴を上げそうになるのを歯を食いしばり耐えた。いまにも崩れそうな体制になりながらも、その目はシバを捉えていた。

  

「どうしたのかな。その剣は棒っきれの役目もしていないねえ。もういい加減倒れてよ」


 シバの顔には苛つきの色が表れる。陽向の目がそうさせたのだ。


「夜神、この女を始末したら御霊を喰らってもいいよな」


 シバが陽向を見ながら夜神に確認する。夜神はフフッと笑うと頷いた。


「いいわ。気分は良くないけど、見なかったことにしてあげる。ただし倒せたらね」


 シバは手を挙げ周りの邪鬼に命令する。


「夜神から許しが出た。御霊以外はおまえ達の好きにしていい」


 シバが手を下ろし陽向を襲う命令を出そうとしたそのとき、女の子の声が空間に響き渡った。

 

『陽向お姉ちゃん、逃げて。早く逃げて』

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