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この子は!(5)

 いましがた見えていた邪鬼の世界から、明らかに別の世界へと変わった。


 陽向は何があったのか分からず驚いていたが、少年の顔にも驚きの色が濃く表れていた。とにかく予想していない状況が人と邪鬼の間に起こっているのは間違いない。陽向は周りの景色を見渡した。シーンと静まる空間。全くの暗闇ではない空間。刻々と時を刻み眠りにつく空間。


(これは……夜。暗闇ではない静かな夜の世界)


 陽向の感じ方は間違っていなかった。それを証明するかのように周りは心が落ち着く空気に満たされていく。


「フフフ……」


 空から女の子の笑う声がした。陽向はゆっくりと声のする方を見上げる。その目には宙に浮かぶ影が映る。光が静まる中、不思議とその姿が浮かび上がる。黒い着物に赤い帯を纏い、輝くような黒髪が足下近くまで真っ直ぐに伸びている。その姿は細身の日本人形のように美しく、妖しい光を滲ませていた。なかでもひときは惹きつけられる黒く大きな瞳が、人ではない何かを印象づけた。


(この子も神様!)


 陽向の頭にそう声が響く。目に映る者は神。それは、水波野菜乃女神、みなも、紗雪、死神でもなく、身も心も緩んでしまう雰囲気を纏った神。



「夜神、これは何の真似だ」


 少年が女の子を見上げると威勢よく甲高い声を上げるが、その声は明らかに動揺も混じっていた。

 

(この子が夜神)


 陽向の視線に応えるように夜神は大きな黒い瞳を陽向に落とした。


 薄く口元に笑みがこぼれる。


「そう喚かなくてもよろしいのでは。たしかジバでしたか?ユウナミの神の足下にまでノコノコ出てくるとは。よほど大切な用事があったのでしょう」


 夜神の瞳はジバという少年へと移された。その瞳にジバの顔が一瞬ゆがんだ。


「神といえど、俺たちの存在を否定することはできないはずだ」

「ええ、もちろん。そのとおりです。私は、ただ見たいものがあるだけ。この場のことを邪魔するつもりはありませんわ」


 夜神は静かに笑う。


「そうかい。なら、この世界はなんだ。ここに閉じこめて何をするつもりだ」

「そうね。ここはすでにユウナミの神の足下にあたるところ。本当は思いっきり手足を出したいのだけど、その子が少し恥ずかしがっているみたいだから。ちょっと隠してあげた。ってところかしら」

「なら、俺たちの邪魔はしないのだな。ことが終わればこの世界は解くのだろうな」


(世界って、この夜の状況ってこと。何をこの少年は夜神に確認している?)


 陽向はジバと夜神の会話からこの空間は幻覚ではないことを悟った。


「どちらが残っても私はかまわないわ。見たいものを見ることができればいいの。だから、そこのお嬢さん。抜いてもいいわ」


 夜神の黒い瞳が陽向を捉えた。全てを吸い込むような大きな瞳の前で陽向は構えた。 


「知っているのですか」

「ええ、もちろん。日御乃光乃神が持っていたことは、最近まで知りませんでしたが。いまは、陽向でしょうか。心配は無用です。この世界、私の許しがないかぎり何者も出ることも入ることもできません。光すら漏れませんので。存分に」


 夜神は陽向とジバを空から見下ろしていた。 

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