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ユウナミの思い(1)

 三人は駅の前にいた。昼下がりの日差しが眩しく地面を照らしている。さっきまで穏やかで暖かい世界にいたのに、この場は灼熱地獄である。もっとも、これが今の人の世界なのだけれども。


 時計を見ると一時間ほどしか時間は経っていない。半日は過ごしたと思っていたのに不思議な感覚が三人を驚かせた。


 真奈美は、御札を取り出して眺めた。夢なのかそれとも現実なのか区別がつかなかったが、手の中に収まってヒンヤリとその肌に感じることで、経験したことが現実であることを頭の中で理解した。


 銀色の小石も九つ葉と十葉のクローバーまでポーチに入っている。イワコの神とコノハの神。自分は確かに神様と会ったことを真奈美は実感した。


「行きましょう」

 

 陽向が声をかけると。真奈美は頷いて駅の中に入った。実菜穂は後ろに続きながら、もう一度振り返って呟いた。


「ありがとうございます」 


 三人は列車の中でしばらく無言であった。先に口を開いたのはやはり実菜穂である。


「ユウナミの神は私たちをどう思っているのだろう」

 

 唐突な言葉に、二人が実菜穂の顔を見た。実菜穂は持っていたペットボトルの水を眺めている。


「ユウナミの神は人を見ている神。琴美ちゃんの御霊を預かったのは、その悲しみを知っているから。私たちが入り込むのはユウナミの神の社。やすやすと入り込めるとは思えない。東門仙様の言葉では、随身門の神は私たちを通さない。封書で通してもらえるか」


 実菜穂は深く考え込んでいた。


「実菜穂ちゃん、それはどういうこと?」


 陽向は実菜穂を導くように言葉をかけた。


「聞く耳を持っているかと。ユウナミの神はみなもや日御乃光乃神を遠ざけた。我が子の言葉も聞こうとしないのに、どういった理由で私たちの言葉を聞くのか」


 実菜穂は、ペットボトルを手の中で転がしながら問答をしていた。真奈美は、微かに震えながら実菜穂の手を掴んだ。


「それでも、行くしかないの。もう、それしかない」

「分かっています。真奈美さんは、ユウナミの神に思いを伝えてください。問題は、私と陽向ちゃん」


 実菜穂の言葉に陽向は静かに真奈美の手をとった。


「問題って?」


 真奈美の言葉を車輪から伝わるレールの音が、かき消していった。

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