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神と人の御霊(11)


 真奈美はコノハとシロツメクサが一面に咲いている野にいた。


「すごいね。こんなに広い野原見たことない。見渡すかぎりシロツメクサだ。こうなると壮観だね」


 真奈美は息を飲んで辺りを見渡していた。


「ねえ、真奈美。作って。華の冠、作って」

「うん。いいよ。久しぶりだから上手く作れるかなあ」


 コノハが抱きついておねだりすると、真奈美はその場に座り込んでシロツメクサを詰んで編み始めた。最初は思い出しながらのぎこちない手つきだったが、すぐに要領をつかんで手際よく編んでいった。綺麗に編み込めたシロツメクサの冠ができあがると、それをコノハの頭に優しく添えた。コノハは冠に触れると、右に左に頭を傾けながら喜んでいる。真奈美はその笑顔を見て、気を良くして二つ目の冠を作り始めた。


「琴美、泣いてた」

「えっ!」


 コノハの呟きに真奈美の手が止まった。


「琴美、いつも泣いてた。『お姉ちゃんのように上手に作れない。お姉ちゃんに会いたい』ってそう言って泣いてた」


 真奈美はコノハを抱きしめると、大声を出して泣いた。誰にも聞こえることのない広い野で、真奈美は思いっきり泣いた。


 コノハが耳元で囁く。


「妹は姉を鏡として自分を見る。その絆が強ければ、例え地の果てからでも呼び合える。アサナミとユウナミ、岩と華のように」

  

 真奈美はコノハを背負い紗雪のところに戻ってきた。実菜穂と陽向が手を振って迎えた。


「さて、真奈美、ユウナミの神のもとに行く心構えはできましたか」


 紗雪の言葉に真奈美は頷いた。


「これはこの白新地に来た記念だ。持っていてくれ」


 イワコが真奈美に銀色の小石を手渡した。


「私からもこれを。真奈美持っていて。華の冠のお礼」


 コノハが九つ葉と十葉のクローバーを差し出した。


 真奈美はそれを受け取ると、イワコとコノハを抱きしめた。


 三人はもと来た道を戻っていった。道には三人を送り出すように季節の華が道しるべとして咲いている。


 三人が見えなくなる頃、イワコとコノハは童子の姿から立派な神の姿になっていた。逞しく力強い姿のイワナガヒメと美しく可憐な姿のコノハナノサクヤヒメの二柱がそこにいた。紗雪は二柱を横目に一言ぽつりと呟いた。


「なにも童子の姿でなくとも良かったのではないのですか」

 

 二柱はクスクス笑っていた。




 白新地は再び人がいない静寂とした世界に戻った。




 紗雪は白銀の瞳を閉じると、もとの白い着物姿になった。

 静かに椅子に腰をおろして悲しげな表情で空を見上げていた。


(実菜穂と陽向。二人なら光と闇の均衡を保つことができるのかもしれません。たとえそれがどのように過酷で残酷な道でも二人はやはり進むことを選ぶのでしょう。いずれ……)

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