神と人の御霊(5)
紗雪の説明に真奈美は気持ちが抑えることができずに言葉を続けた。
「琴美は。琴美はなぜ死神に御霊を刈られたのですか」
紗雪は表情を変えることなく、真奈美に優しく答える。
「琴美が自ら命を絶とうとしたのは、知っていることと思います。本来であれば、そのときに死神により御霊は刈られていました。死神自身もそのつもりで待っていました。これは、死神の役目です。そのことは、責められるものではありません。ただ、このときにあり得ないことが三つ重なりました。一つは、琴美が自らの力で死を思いとどまったこと。二つは、生きている琴美が死神を見ることができたこと。そして、三つは琴美が死神を受け入れたこと。琴美は御霊を死神に預けたのです」
「なぜです」
「なぜでしょう?」
「知っているのなら教えてください」
真奈美は紗雪の柔らかい物言いに誘われ、すがる思いで聞いた。紗雪は微笑みながら、真奈美を諭した。
「真奈美、その答えはあなたが一番知っていることではないのですか。答えだけを知りたいのであれば教えます。しかし、それでユウナミの神のもとに行けるのでしょうか。ユナミの神に私が答えたことをそのまま伝えますか?それでユウナミの神が納得すると思うのであれば、大きな間違いです。ユウナミの神は人の御霊を預かる神。人を見続け、人を知り、人の拠り所となる神です。それゆえ、人を恐れている神。それを忘れないでください」
紗雪の言葉に真奈美は涙をこらえうなだれた。その様子を見てコノハが真奈美の手を握った。
「真奈美、あっちで私と遊んで。お華の野があるの」
「コノハの神。真奈美はいま大切なときなのですよ。困りましたね」
紗雪はコノハを『駄々をこねる困った子ね』という目で見つめると、コノハは真奈美に抱きつき甘えていた。真奈美は、コノハを抱き上げ笑顔を向けた。
「お華を見せてくれるの?」
「うん」
真奈美はコノハに案内され、その場を後にした。紗雪はそれを見送りながらクスクス笑っていた。
「実菜穂、陽向。真奈美なら大丈夫です。コノハの神は真奈美を気に入っています。きっと、導いてくれるでしょう」
実菜穂と陽向は紗雪の笑顔のなかに単なる無邪気さだけでない、何も見通せない奥深さを感じていた。




