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神と人の御霊(3)

 雪神が差出した札は、短冊ほどの大きさで白い雪の結晶である六華が三つ連なった形をしていた。今にも結晶の継ぎ目が折れそうな札を真奈美がおぼつかない手で受け取る。札はヒンヤリとして手に心地よく収まった。真奈美ははかない印象の札を不安げに眺めていると、雪神は優しく言葉をかけた。


「真奈美様、心配は無用です。その札、見かけは頼りなさそうですが、大力の鬼が捻ろうとも、火中に投げたとしても傷一つ付けることはできません。ユウナミの神が受け取るまでけして消えることはありません」


 雪神の言葉に実菜穂も陽向も興味津々で札を触った。


「なんだか冷たくて気持ちいいね」

「本当だ。実菜穂ちゃん、力を入れてもビクともしないよ」


 陽向は札を力いっぱい曲げようとしたが、全く歯が立たなかった。真奈美は強く握ってみたが、折れ曲がる気配はない。見かけと裏腹に札が強靱であることに感心しながら、代わる代わる触れて驚く三人の姿はさながら化学の実験に没頭してる生徒のようであった。雪神はその様子をみてクスクス笑っている。楽しそうに笑う雪神の袖をイワコが引くと、先にある大きな木陰を指さした。そこには、石でできたテーブルとイスが準備されていた。


「皆様、ここで立ち話というのも疲れるでしょう。あちらに、イワコの神が準備をしてくれました。どうぞ」


 実菜穂たちは雪神と一緒に石のイスに腰をかけた。イスは石の硬そうなイメージとは違い、しっかりと身体を支えてくれ、体の曲線にピッタリと合った背もたれは自然に背筋が伸びて心地よく、実菜穂たちはウットリと顔を見合わせていた。


 いつの間にか姿を見かけなくなっていたコノハが氷でできた器に苺を絞ったジュースを運んできた。氷の器は透明で手に持つと冷たく感じるが、凍えるようなことはなかった。ジュースは果肉が多く、綺麗な赤色が甘い香りを引き立たせて辺りを明るい空気で包んだ。


「コノハの神が苺を摘んでくれたようです。お口に合うか分かりませんが、よろしければどうぞお召し上がりください」


 雪神はコノハが運んできたジュースを勧めた。コノハは真奈美の隣に座り、ジュースに口をつけている。実菜穂たちも勧められるまま、一口飲むと口いっぱいに苺の香りと甘みが広がり、少し遅れてくる酸味が甘みで占領された舌を締めてくれる。それが一層、苺の香りを引き立たせるのだ。さらに氷の器で適度に冷えた果肉が良いアクセントを付けてくれる。本当に絶妙な味と香りのジュースだった。三人はお互い目を輝かせて、その味に感動していた。


「真奈美さん、陽向ちゃん。これ、美味しすぎる!私、お店でもこんなの飲んだことないよ」


 実菜穂は声を上げて感動を二人に伝えると、陽向も真奈美も同じ思いと表情で『美味しい!』と声を上げていた。


「お気に召して何よりです。良かったですね。コノハの神。真奈美様も喜んでいるようで」


 雪神の言葉にコノハは、はしゃいで真奈美に笑顔を見せていた。真奈美もコノハに笑顔を返していた。


「そうそう、実菜穂様。水面の神から聞きました。実菜穂様がれる【紅茶】というものがとても香りが良く美味しいとか。今度、私も飲んでみたいものです」

「ワタシも飲みい」

「それなら私もだ」


 雪神が言ったそばからコノハが乗っかり最後はイワコもついてきた。その一連のやり取りは実菜穂には本当に自分たちは神様と話しているのかどうか分からなくなるほでおであった。


「はい、お口に合うかどうか分かりませんが、もう一度この地にくることができるときがあれば是非に」


 実菜穂は緊張した笑顔で答えた。


「ほんとうに。もう一度、来ることができれば。楽しみにしています」


 雪神は優しくそれでいてどこか悲しげな瞳で実菜穂を見つめた。


 陽向は、実菜穂に向けられている瞳が、心の奥に留められていくことが不思議でならなかった。

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