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神と人の御霊(2)

 鹿は実菜穂に近づき顔をつきだしてきた。鼻を実菜穂に近づけ香りを嗅いだり、瞳を見つめたりしている。実菜穂は鹿の顔に自分もゆっくりと顔を近づけ、鼻を鹿の鼻と合わせてその瞳の奥をのぞき込んだ。鹿の大きな黒い瞳の中に、自分の瞳が写っているのが見える。実菜穂はゆっくりとまぶたを閉じると、またゆっくりと開けた。鹿も同じように瞼を閉じたり開けたりしている。そして、ゆっくりと背を向けると、雪の神の方へ帰って行った。


 雪の神は帰ってきた鹿の瞳を見つめ、頭をなでていた。


「ここにいる動物も鳥も人というものを知りません。だから、とても珍しいと感じたのです。なかでもこの子は一番好奇心が強い子なので、近くで見てみたかったのでしょう。もっとも、いまの実菜穂様がこの子達にとって人の印象になりましたけど」


 雪の神はゆっくりとそれでいて美しい歩みで実菜穂たちに近づいてくる。イワコも雪の神の方に歩みよると実菜穂たちもついて行った。

 隼がイワコの肩に止まった。狼もイワコの側に来た。メジロやウサギはコノハの側に集まる。コノハは背負われたままメジロを真奈美の頭に止まらせてはしゃいだ。真奈美は、逃げないのかヒヤヒヤしていたが意外にもメジロは居心地良さそうに止まっていた。


「真奈美様の頭からメジロが逃げないのは、実菜穂様からこの子が受けた人の印象が皆に広がったからです。ご存知ですか?陽向様の足下にいる雷鳥。外の世界でも人をあまり恐れてはいません。雷鳥は外の世界では古来より神の鳥として人は大切に接してきました。それゆえ、人を信頼しているのです」


 雪の神が側にいた鹿を軽く撫でると、その鹿は実菜穂を見てゆっくりと頭を下げた。


「撫でてあげてください」


 実菜穂は雪の神の言葉に促されて、鹿の頭を優しく撫でた。鹿は大人しく実菜穂の側に付いていた。


「初めて、お目にかかります。実菜穂様、陽向様、真奈美様。まあ、コノハの神、真奈美様を解放してあげなければ。この先もまだ大役があるのですから」


 雪神は実菜穂たちに挨拶した後、真奈美の背中にいるコノハに年上のお姉さんのような物言いで降りるように説得をした。コノハは残念そうな顔をしながらも、素直に真奈美の背中から降りた。真奈美は、コノハが降りた後は身体が軽くなりホッとする一方、なにか物足りなく寂しさも感じていた。


「雪神様。私たちはユウナミの神に会いに行きます。会うためには、雪神様の御札が必要だとみなもに教わりました。そのため、勝手なことだとは承知しながらもこの地に御札を頂に参りました」


 実菜穂は雪神に本題を話すと、雪神は笑顔のまま頷いた。


「はい。水面の神から事情は聞いて存じております。何も出し惜しみをすることはない物ですから。真奈美様、どうぞこちらに」


 雪神は、白い御札を真奈美に差し出した。

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