門を守る神(4)
昼休みが終わり、午後の授業を告げるチャイムが鳴った。実菜穂も陽向も名残惜しがったが、授業に向かうことにした。そのとき、東門仙は二柱に目配せをした。それに気づいたみなもと火の神は、しばらく東門仙と話をしたいから残ると言うと、実菜穂は手提げ袋から黒糖饅頭を取り出してみなもに渡した。
「東門仙様、食べるかな。昼休みに食べようと思ってたけど、みんなで食べて」
実菜穂と陽向は東門仙に手を振りその場を離れた。東門仙も笑顔で手を振って見送った。
みなもは、実菜穂から渡された黒糖饅頭を東門仙と火の神に手渡した。
餡がずっしりと詰まった、手のひらに乗るくらいの食べ応えありそうな饅頭であった。実菜穂がこれをみんなで食べようと用意しているところを想像すると何となく可愛らしく、笑いがこみ上げてきた。
「実菜穂から気を利かせてもろうた。有り難く頂こう」
みなもがそう言うと、東門仙と火の神も笑顔で応えた。
「出過ぎたことであるとは承知ですが、実菜穂殿、陽向殿。お二人とも光るものを持っている。水と火その心が二柱と繋がっているのが分かります。いずれ、神に近き人になると感じますが」
東門仙は、そう言うと手にしていた饅頭を一口食した。その動作一つからも若き神ながら、どこか落ち着きのある雰囲気を持っていた。みなもと火の神も饅頭を食した。
「そう言われると、儂も正直嬉しく思う。陽向もそうであるが、儂は実菜穂からこの世界に留まるための時間を与えてもろた。それに儂にとっても唯一御霊を合わせられる人じゃ。陽向は近いうちに火の神の巫女となろう。実際もうその力もある。あとは火の神次第じゃ。じゃが、儂はといえば……迷うておる」
みなもは火の神に目をやってから、東門仙に言った。東門仙は、みなもの気持ちを察してゆっくり頷いた。
「それにしても、ここに俺らを引き留めたのは、何か話があるのでは」
火の神は、東門仙の目配せが気になり、みなもが聞くよりも先に聞いた。
「はい。お二人の前では話すことを思い止まりまして」
東門仙はそう言うと、みなもと火の神に黒き瞳を向けて話した。