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神と人の御霊(1)

 白い光をくぐり抜けると、そこは一面に緑が広がっていた。山がそびえ、心地よい風が吹いていた。その風景は、外の世界と似ているのだけれど、明らかに何かが違った。たとえば、水の輝き、頬をなでる風、空気、草華、飛んでいる鳥やトンボ、草の根を育む土まで全てが美しく、安らぎがあり、そして生き生きとしている。もちろん外の世界でもその営みはあるが、ここでは目に見えて輝いているのである。


 イワコは辺りを見渡すと、温かく、澄んだ空気が漂う一角を指さした。


「あそこに雪の神がおる」


 イワコの指し示す先を実菜穂たちは見つめた。そこには、隼が空を舞い、鹿やウサギが周りを囲むように集まっている。イワコと一緒にその鳥や動物が和んでいる場所に向かった。近づくにつれ、何者が立っているのが見えてきた。鹿やウサギ、キツネ、猫、狼、雷鳥など、いろいろな鳥や動物が集まっていた。その中心に、白い着物と帯、黒い髪が美しく光り輝く女の子がいる。その子は指先にメジロを止まらせて、何やら語りかけていた。楽しそうなその顔に実菜穂と陽向、そして真奈美も見とれていた。間近で見る神話やおとぎ話のような光景。だが、その女の子の姿は、神様というよりは綺麗な人という感じであった。それゆえ実菜穂はこの光景に見覚えがある。


「陽向ちゃん。私、これと同じ光景を前にも見たよ」


 実菜穂の言葉に、陽向はすぐに相槌を打った。


「うん。私も同じことを思った。実菜穂ちゃんに話しかけるきっかけになった光景」


『みなもと同じだ!』


 二人が叫ぶと、あたりの鳥や動物からその目を注がれた。実菜穂は、声を上げて驚かせたことを悪く思い、静かに深く頭を下げた。陽向も同じように深く詫びた。直接は関係ない真奈美も同じように頭を下げた。実菜穂が、頭を上げたとき鹿が一頭ゆっくりと向かってきていた。雪の神はその様子を優しい目で見ている。実菜穂は雪の神の瞳が鹿を心配するというよりも、実菜穂たちがどう動くのか期待して見ているように思えた。実菜穂自身、鹿を怖いとは思わなかった。田舎では、みなもと一緒に鹿や猿、猪とも遊んだことはある。ただ、ここで試されているのは怖がるとか楽しむとかではない。

 

『信頼』


 なぜかそう思えてならなかった。

 実菜穂はみなもと遊んでいた時のことを思い浮かべていた。 


(あのときって、きっと……こういう気持ちだった)

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