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人を出迎える神(17)

 祠の前に来た秋人は、周りを見渡した。辺りに人影はなく、蝉の声が共鳴し、思わず耳を塞ぎたくなるほどであった。人がいないことを確認すると、祠に語り掛けた。


「僕の声が聞こえているかどうか分かりませんが、短冊を琴美ちゃんのところに置いてきました」


 秋人の声から少し間をとってみなもの透きとおった声が頭に声が響く。


「聞こえておる。お主も、儂の声が聞こえておろう。どうじゃ」

「響く程度ですが聞こえています」


 秋人は、祠をのぞき込んだ。


「不思議がって疑うと聞こえなくなる。声が聞こえるのは、お主が儂の存在を認めている証拠だ。嬉しいことじゃ」


 みなもの声に秋人は、実験が成功したときと同じ喜びの表情で祠を眺めていた。


「琴美はどうじゃ?」


 心に伝わる声に笑みを消して、いつもの秋人に戻った。


「蝶は見えました。紫色の綺麗な蝶が無数に飛び回っていました」

「そうか。これではっきりした。琴美と死神は繋がっておる。死神が琴美をこの世界に返したい理由も分かった。秋人、ありがとう」

「水の神様」

「なんじゃ?」


 秋人のかしこまった声に、みなもが返事をした。


「あー、秋人。その『水の神様』という呼び方、やめぬか。どうも、遠くで愛でられているような気がするのでな。実菜穂や陽向のように『みなも』でよい」

「じゃあ……みなも。一つ、予想しない展開がありました」


 名を呼ぶのに戸惑いがあったが、実菜穂に一つ近づけた思いが後押しをした。


「どうしたのじゃ」

「僕はたしかに無数の蝶を見ました。だけど、短冊に触れていない詩織さんが一匹ですが見えていたようです。なぜでしょう?」

「詩織に見えていた……考えられる理由は三つある。良い理由から悪い理由の三つ」

「良いことと悪いこと……」

「そうじゃ。良い方から順に申そう。一つは、詩織自身に『神の眼』の素質が芽生えていたか。二つは、死神と何らかの接点があったか。そして、三つ目じゃが。これが悪いという理由。詩織自身に死が何らかの理由で近づいておるか。蝶が見えた理由は、この三つのどれかじゃ」


 秋人は、みなもの言葉にみるみる血の気が引いていき、首筋に冷たい汗が流れ言葉を返すことができなかった。


「心配いたすな。お主の気持ちは分かる。最悪の理由のことを考えておるのであろう。じゃがな、今はどの理由かは分からぬ。最悪の場合でも、今すぐというわけではない。かなり時が経たねば確かなことは分からぬ。ならば、今は琴美のことに全力を注ぎたい。その後に儂も詩織のことを見てみよう。しばらくは秋人、お主が詩織の様子を見ておいてくれ。あってはならぬことじゃが、琴美と同じ道は歩ませぬよう」

「わかりました……」


 秋人は承知しながらも、いまひとつ気が重そうな表情が残っていた。


「実菜穂のことなら心配いたすな。あやつは、人の心を大切にする人じゃ。お主の事情などすぐに理解する。むしろ、しっかりしろと叱りつけるわい」


 みなもに全てを見抜かれたことに加え、実菜穂ならそう言うだろうと納得をして秋人は頷いた。


「ところで、琴美ちゃんと死神の関係は何なのですか」


 秋人は、本題を後回しにしたことを思い出し、みなもに訪ねた。みなもの確信に満ちた声が蝉の声よりも大きく響いた。


「死神か。それはな……」

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