人を出迎える神(15)
冬の道へと入る。そこには、白い着物を身につけ、銀の髪をなびかせて優しく静かに微笑む女が立っていた。一目で神様だという雰囲気があった。静かに舞い散る雪と戯れているように辺りを愛でていた。イワコは女に近づいて行く。実菜穂もイワコに続いて女に近づいた。
「お声かけします。雪神様でしょうか?」
実菜穂は、立っている女にかしこまり尋ねた。冬の景色のなか雪と戯れている女神。もの静かで、白き着物が良く締まり美しく見えた。銀色の髪も雪神を思わせる威厳のようなものが感じらる。だが女は、優しく笑顔を見せ、ゆっくりと首を振った。
「私は、冬の神。宇津田姫です。実菜穂様、陽向様、真奈美様をここで待っていました。ここは、一面の冬景色。道に迷うこともありますゆえ。雪の神は、この奥です。どうぞ、足下に気をつけてください」
宇津田姫は右手をゆっくり上げると、小道に積もっていた雪が一斉に舞い上がった。雪で隠れていて全く見えなかったが、美しく白く光る小道が現れた。
「どうぞ」
宇津田姫は、優しく言葉をかけ道の先を示した。
「宇津田姫様。先ほどは雪神様と間違えたこと。お許しを」
実菜穂は、宇津田姫に深く頭を下げた。宇津田姫は静かに笑う。
「実菜穂様、なにも謝ることはありません。私はむしろ嬉しく思います。この白新地にはまだ多くの神がいます。その神々全てが雪の神が好きなのです。私もその一つの柱。ですから、雪の神に間違われることは嬉しいのです。いままで通ってきた四季の道もいわば雪の神を守るための道なのですから。白新地に入ることが許されない者は、どの道も通ることはできません。邪鬼が入口から動けなかったのもそのためです。それから、もう一つ」
宇津田姫は守りのある実菜穂の胸に手を当てると、言葉を続けた。
「同じようにこの地の神々全てが水面の神も好きなのです。なぜなら、雪の神が水面の神を大切に思っているから」
宇津田姫の瞳は実菜穂の守りを映していた。自分が知らないみなもがまだまだ多く存在していることに、実菜穂は心が大きく波立つ感覚をおぼえた。イワコは、仕方がないなという顔で実菜穂の複雑な表情を眺めていた。
「いろいろ思うこともあろう。雪の神に水面の神のこと聞いてみるのも面白いかも」
イワコは調子を上げた声で実菜穂に向かって笑いまがら雪の小道を進んで行った。
「さあ、ようこそ。ここが白新地。雪の神の世界。人でこの地に入ったのは、あなた達が初めてだ」
三人は導かれるように眩しく輝く白い光の中に入っていった。




