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人を出迎える神(14)

 夏の道を通り過ぎ、秋の道になったのはすぐに分かった。一目で景色が秋色に変わるのと同時に、夕暮れがずっと続く小道だったからだ。


「なるほど。夏から秋は何となく続いてる感じがするね。ひょっとして、夏の神と秋の神が一緒に行動してるのはそれでかな」


 夏から秋の景色を見ながら、実菜穂は陽向たちも方に振り向いた。真奈美の背中ではコノハがスヤスヤ眠っている。実菜穂と陽向は、コノハをのぞき込んで目を大きくした。可愛らしい寝顔はやはり人とは雰囲気が違い、成長したら美しい姿になるだろうと容易に想像もできた。真奈美は、コノハが寝ていることに気づくと嬉しそうに笑っている。


「その感じ方、間違ってはいない。春の神で芽生えた命は、夏に栄え成長し、秋に実りをむかえる。そして冬に眠る。四季の流れの中で冬には一つの区切りができる。夏と秋がともに外にでるのは、その流れを途切れさせないため。四季の神は生命を育むのに必要な神だ。コノハがここで眠るのもそんな理由がある。とはいえ、コノハはこれでも神だ。いつでもどこでもというわけではない。それだけ真奈美の背中が気持ち良いのだろう」

 

 イワコは秋の道を歩きながら、実菜穂たちに語った。実菜穂は、イワコの後ろ姿から感じる光から、本当は見かけよりもっと大きな存在の神のように思えてならなかった。


「水闍喜のこと、許してやってくれ。あれでも皆のことを好いているのだ」

「そんなあ、イワコの神に謝れると申し訳なく思います。気にしていません。十分、伝わってます。みなものことあんなに思っていてくれるんだもん。悪い神様じゃないよね」


 イワコの急な言葉に実菜穂は驚いて陽向たちに確認した。陽向も真奈美も同じ気持であった。


「水闍喜は神ではない。邪鬼だ」


 イワコの言葉に三人は「えっ!」という顔でお互いを見合った。


「私が入口で見た邪鬼は、険悪で絶望を振りまくような顔でした。ですが、水闍喜は人のように表情があり、前向きな明るい顔をしていました。同じ邪鬼なのですか」

 

 実菜穂があまりにも?顔で陽向を見るので、陽向が代わりに問いかけた。イワコも実菜穂の顔を見てフッと笑った。


「水闍喜は、邪鬼として生まれた。名などあるはずもない。邪鬼は人に絶望や迷いを与え、御霊を食らうことで生きている。力のある邪鬼は一つの群れもかまえる。あいつもその群れの中にいた。だが、人に仇をなすことがどうしてもできなかった。不器用なのだろう。邪鬼にもなれず、かといって人になれる訳もなく、仲間から始末されることになった。その身を引き裂かれ、えぐられ、もだえ、殺される寸前のところを水面の神に助けられたのだ。水面の神はボロボロに傷ついた身体を癒してやり、名を与え、この世界に連れてきた。それ以来、邪鬼とは違う顔つきになったのだ。おもしろいことだ」


 イワコはそう語りながらニッコリと笑っていた。その顔は、本当に不思議な奥深い優しさと逞しさを感じさせるものがあった。

 

 実菜穂は、イワコのその笑顔にコノハと違う可愛さがあるなと思い自分もクスリと笑った。


 秋の道は、夕暮れを映しだしながら過ぎていった。

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