人を出迎える神(13)
水闍喜は、手を合わせてイワコに頭を下げていた。まるでクラスのガキ大将の男子をとっちめる女子がおりなす光景。実菜穂と陽向の目は真奈美に向けられた。真奈美は、「どうして見てるの?」っといった表情で自分を指さして首を傾げた。
「本当に悪かった。見てみたかったんだ。水面の神が連れてくる人を。一目見たかったんだ。雪神様にはどうか内緒に。ここを追い出されたら、水面の神に顔向けができない。俺は、水面の神をここで待っていると決めてる。だから、堪忍してくれ」
「確かに水面の神を悲しませるわけにはいかないな。それなら、実菜穂たちに謝りなさい。実菜穂たちが許すのであれば、いまのことは忘れよう」
イワコの言葉に水闍喜は目を輝かせ、実菜穂達に頭を下げた。
「さっきは、本当に悪かった。見たかったんだ。水面の神が連れてくる人を。きっと凄い力があるんだろうなって思ったんだ。そしたら、見事な水龍波を食らった。驚いたよ。さすがだなあ」
「水龍波……?」
実菜穂は訳が分からないという顔をして、水闍喜やイワコを見た。
「いま実菜穂が放った光は水龍波といって、水の神が使う技の一つ。幻術、呪術を破り、まともに食らえば身体ごと飛ばされてしまう。龍神の力を込めた技だ。水の神の前では誤魔化しはきかぬ。全てお見通しだ。それよりも水闍喜、お前は謝罪になってないぞ」
イワコは水闍喜が興奮して話しているのを嗜めて、ムッとしている。
「イワコちゃん、もうそのくらいで堪忍してあげて。うん、分かった。水闍喜はみなものこと知ってるんだね。みなもを良く思ってくれているんだ」
「良く思うなんてそんなものじゃない。俺がいま生きているのも水面の神が助けてくれたからだ。ここに連れてきてくれなければ、とっくに邪鬼たちに引き裂かれて死んでいた。だから、俺は雪神様のもとで学んで、力を付けてここを出たら水面の神の盾になるんだ。そう決めている」
水闍喜は、高ぶった気持ち抑えることができずに思っていることを次々に言葉にした。水闍喜の言っていることの多くは、人が聞くには訳が分からなかったが、まっすぐな気持ちは伝わってきた。実菜穂は水闍喜ともう少し話しがしたくて質問しようとしたが、コノハが先に行こうと言うのでイワコに案内を頼んだ。
「実菜穂たちが許すようなのでもうよい。とにかく、先を急ぐからもう行くよ。悪戯も程々にしないと、いつまでも出られないよ」
イワコはガシガシと荒っぽいながらもどこか親しみがある感じで、水闍喜の頭をなでた。口ではぶっきらぼうな言い方をしているが、お姉さんのように水闍喜を見守っているようだ。実菜穂にはそう見えてならなかった。




