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門を守る神(3)

 実菜穂と陽向は、二柱に連れられて、校庭の片隅にある立木の側にいた。


「ここにな、ほれ、木の根本に小さな祠があろう」


 みなもが指さす先には、鳥の巣箱のような小さな祠がちょこんと置かれていた。本当に気をつけて見ていないと、見過ごしそうなほど目立たない場所にあった。


「ここには、城を守る門があったようじゃの。そのときに守備を祈願して祀った祠に神が宿っておる。いま、目の前に立っておるわ。実菜穂、儂と手を繋いでみろ。陽向も」


 実菜穂と陽向は、みなもと手を繋いだ。みなもの神の眼を通して、男が立っている姿が見える。自分たちと同じ年頃の若い神であった。鎧を纏い、手には刀を持っている。勇ましく、若々しさが感じられた。


「門の神、先日話した実菜穂と陽向じゃ。お主に会わせたくて連れてきた」


 みなもが声を掛けると、門の神は遠くまで見通すような黒い瞳で二人を見た。


「これは、水面乃神と日御乃神。それに、実菜穂殿と陽向殿ですね。お二人の話は聞いております。私は、この城の東門を守る神。東門仙と申す」 


 そう言うと東門仙は、深くお辞儀をした。実菜穂も陽向も同じようにお辞儀をした。


「東門仙は東の方角の守り神、持国天の流れをくむ神でな、ここにある城ができた

400年ほど前に迎えられた神じゃ。小さき祠であるが、そこに宿る神は立派なものじゃ。門は無くなってしもうたが、いまはこの学校、そして実菜穂や陽向たち生徒を邪鬼どもから守っておるのじゃ。この学校で事故など無いのはこの神のおかげじゃ」


 言い終わると愛おしげな瞳で東門仙を見つめた。みなもは、かの地に迎えられるため御霊を授かって以来、神の大小に関わらず敬意を持って接する姿勢を保ってきた。実菜穂も陽向もそのことはすごく感じており、何よりそれを一番見てきたのは火の神である。みなもの周りに華一輪、虫一匹までが喜び集うのはそれがゆえである。


「私は、持国天の流れをくむと言っても、遠きものでほんの少しです。分霊を賜ったわけではなく、この祠に宿った憑き神です。水面乃神や日御乃神のように太古神の直子や分霊ではありませぬ」


 そう言うと東門仙は畏まり、みなもと火の神に頭を下げた。


「そうではないぞ。大きな社で何もせずにおる神も多いが、お主はここを立派に守っておるではないか。門が無くなってしまえば、この世界を離れても十分に勤めを果たしておる。なのにお主は、ここに残り人を守っておるではないか。誰にも気づかれず、感謝もされずにだ。儂はそのようなお主こそ誠の神だと思う。神であるべきだと思うぞ」


 みなもの言葉に火の神が静かに頷くと、実菜穂も陽向も頷いた。


「有り難き言葉です。ただ、ここにいるのもそう捨てたものではありません。私も水面乃神と同じく人が好きです。今まで、多くの人がここで学びそして去っていきました。その一人一人の成長を見守るのも悪くはありません。それに何より、こうしているおかげで水面乃神、日御乃神。そして実菜穂殿や陽向殿に出会うことが出来ました。私に気づいてくれたこと、私はまた、ここに留まる時間を頂けたのだから」

 

 東門仙は、温かい瞳で実菜穂たちを見た。実菜穂も陽向も、その瞳から東門仙の優しさと強い意志を感じた。小さき祠といえど宿る神の偉大さに二人は感激をしていた。


「そう言えば、お城には他に北、南、西にも門があったと聞いているけど。東門仙様のように、神様はいるのですか」


 実菜穂は、東門仙の話に興味が湧いて聞いた。 


「この城には確かに東西南北に各門がありました。でも、今は門を守る神は私と城北門を守る北門仙だけです」

 

 東門仙の話ではかつて城には東西南北の四つの門が建築されることとなっていたが、実際に機能する門は、東門と北門の二つの門であり、他の南と西は門があること自体が秘密とされていた。それ故、建築されたものの門としての役目を果たさぬまま、城の明け渡しの際に取り壊されてしまった。守り神もいたが、取り壊されたことでこの世界を去った。いまこの世界に残っている神は、東門の東門仙と北門の北門仙である。門があった箇所にはどちらにも学校が建ち、城東門校と城北門校になっているというわけである。


「なるほど」


 実菜穂は頷きながら東門仙のいる祠を見て、かつては存在した立派な門を想像していた。


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