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人を出迎える神(8)

 (見える。邪鬼の群。やはり百は越えている。なに?この数、それにこの険悪な空気)


 陽向が意を決し託された物を取り出そうとしたとき、背後から呼びかける者がいた。


「いまここでそのつるぎは抜かぬ方がいい」


 陽向は意表をつかれて掛けられた声に振り向いた。そこには自分と同じくらいの年齢の女の子が立っており、陽向が胸に当てていた手を取るとそっと離した。袴姿で髪を一つに束ねた女の子。細い指先が美しく見えるのが何よりも印象に残った。


(この子、神様だ)


 陽向は、神の眼から見える女の子の姿からそのことはすぐに分かった。


「あなたは?」


 陽向の問いに女の子は、表情一つ変えずスッと隣にきた。人の動きではない。


「私の詮索はいましても意味はない。それよりも先に行った人たちを追った方がいい」


 女の子は、陽向の瞳をのぞき込み静かに頭の中に響く声で語りかけると、陽向は、深紅の瞳で女の子の瞳を見つめ返した。 


「いい瞳の色だ。さすが《《日御乃光乃神の社の巫女》》。この邪鬼は、なぜか先に入り込んでいたものが半分。さっき、人が通るときに紛れ込んで入ったのが半分。そのようなところだろう。この白新地しらあらたのちは雪の神の世界。人はおろか邪鬼など到底入ることができぬ場所。それゆえ、そこに人が入り込めば、その隙に人の性に誘われ邪鬼が紛れ込むのも道理。まあ、紛れ込んだところでこの先に進めるわけではないのだが。だからこの場でその剣を抜くのは策ではない。ユウナミの神がすぐに気づく。それほどその剣は存在力がある」

「あなたは剣のことをなぜ知っている?それにユウナミの神のことまで……」

「詰まらぬ詮索はしないこと。この場は、私が片づける。あなたはそのまま先に行った人を追えばよい。ただし、けして振り返らぬこと。古来、この手の契りを破り、不幸な結末を招いた者が多くいる。よもや、あなたはそのような愚かなことはしないでしょう」


 女の子はそう言うと、陽向に期待する目を向け微笑んだ。陽向は、その瞳の奥に深い闇と光を感じるのと同時に、女の子の言うことに分があることを理解した。陽向が、女の子に背を向けると深紅に輝く目を見開く。


「行きます」


 陽向は一言告げ、そのまま振り向かずに春の道を駆けて行った。

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