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人を出迎える神(7)

 実菜穂はイワコに深々と頭を下げた。イワコはそれに応えるように手を強く握り、実菜穂を引いていった。イワコに連れて行かれたのは駅の裏側にある石垣であった。


 石垣は登山口へと続く道がその上を通っている。イワコが石垣に手を触れると、石垣には空間ができた。


「おかしいよ。誰かさっきここをくぐっている。とにかく早く入って」


 イワコはそう言うと、駆け足で実菜穂を引っ張って入った。真奈美と陽向は、続いて入ろうとしたが、陽向が最後に石垣をくぐろうとしたとき険悪な空気を感じた。


 石垣の中は、真っ暗な空間で灯りが何一つなかった。


「イワコちゃん、真っ暗だけど見えるの?」


 実菜穂はイワコの手をしっかり握って聞いた。イワコも実菜穂の手を離さないように握り返した。その力は童子のものとは思えないほど強かった。


「違う。これは、邪鬼のせいだ。ここは、春色の明るい道が続くよ。夏の道、秋の道、冬の道と続く。たぶん、誰かここに邪鬼を入れたんだ。邪鬼が勝手に入ることは出来ないよ。入口を開けたときに入ったんだ」


 イワコはそう言うと、実菜穂を守るように立った。それを見て、実菜穂はイワコを抱き上げた。


(おもっ……)


 一瞬、よろめきそうになったが実菜穂は踏ん張った。


「おいおい、何をする?重いぞ」


 イワコは驚いて、実菜穂を見た。


「イワコちゃんこそ、危ないよ。陽向ちゃん、すごい嫌な感じするんだけど」

「いる。邪鬼が十や二十じゃない……百はいる。この者たち本気だ。私たちを食いつぶす気だ。恐らく、真奈美さんの希望に食らいついてきたんだ」


 陽向は、入口の方に体を向けて、二人を守るために立ちふさがった。


「真奈美さん、実菜穂ちゃん。コノハの神とイワコの神を背負えますか」


 陽向の言葉に、二人はそれぞれの神を背負った。


「いけるよ」


 実菜穂と真奈美が答える。


「じゃあ、そのまま突き抜けていってください。けして、後ろは振り向かないで。私がここでくい止めます」


「くい止めるって。案内がないのに陽向さんはどうやって来るの?」


 真奈美は、コノハを背負ったまま陽向の声の方に顔を向けて、声を大きくした。


「大丈夫です。私には守りがあります。それに、この時のために託された物があります。案ずることはありません。最悪、ここで待っていれば、真奈美さんにはまた会えるでしょう。いま、絶対に必要なのは真奈美さんが雪神様から札を授かること。それがなければ、先がありません。だから、行ってください。実菜穂ちゃん、お願い」


 陽向は実菜穂に向かって声を上げた。


「わかった。陽向ちゃん、先に行く。イワコの神、案内お願いします。真奈美さんも続いてください」

「でも、陽向さんが」

「陽向ちゃんなら大丈夫です。日御乃光乃神から守りを授かっています。それに、この場に留まってイワコの神、コノハの神を傷つけるわけにはいかない。行きましょう」 


 実菜穂の言葉に、真奈美は気持ちの整理がつかないながらも納得して駆けだした。


 陽向は、二人が離れていったことを確かめてから、左胸に携えていたお守りに手を当てた。陽向の瞳が深紅に輝きを放つ。

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