絶望をしたときに期待されているもの(10)
真奈美が帰ったあと、実菜穂と陽向は神霊同体となったままで二人は別れ、みなもと火の神の声を聞いていた。
『実菜穂、このままの状態でいられるのも出発までじゃ。お主が、ここを発つときは、お主一人の身でいかねばならぬ。じゃが、道中、神に会うためには【神の眼】を持たねばならぬ。それゆえ、これをお主に授ける』
実菜穂の手には青いお守り袋が握られていた。その袋は人が織りなしたものでないことが一目で分かる美しさと肌に触れたときの心地よさがあった。
『これは、お主の眼となり、お主を危険から守るものじゃ。儂が一緒に行けぬので代わりとなるものじゃ。じゃがな、このお守りは一柱に一つしか作れぬでな。無くさぬよう気をつけてくれぬか』
みなもは、クスリと笑った。
(みなも、このお守りすごく大切なものでしょ。下着にでも縫いつけておくか離れないようにしておかないと。それに、このお守り。神様が作っただけあって美しい……)
『その袋は栲羽千鎚乃姫命が、織ってくれたものじゃ。織物の神じゃ。儂の色で織ってくれた。まあ、神にとっては二つと無いものじゃから大切にしてくれ。きっとお主を助けるであろう。火の神も同じ物を持っておるでな、陽向にも預けたであろう』
陽向は、火の神から実菜穂と同じように紅色のお守り袋を受け取った。
『陽向、もう一つ授けておく物がある。それはいま手にある袋の中に納められている。陽向が必要と判断したとき、その手に収まっているであろう。これは、稽古用ではない。心して使うよう。全て陽向に委ねる。実菜穂殿、真奈美殿をどうか守るよう。そして陽向自身も』
(承知しました)
陽向は、お守り袋を胸に当て深く祈り火の神に応えた。その表情は、普段の陽向ではなく神に仕える巫女そのものの麗しさと凛々しさを備えていた。




