表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/171

絶望をしたときに期待されているもの(8)

 補講も3日目が終わり、みなもの祠の前に実菜穂と陽向そして真奈美が集まっていた。火の神も側にいる。みなもは、三人を前にして事の成り行きを話す。


「実菜穂、陽向。いまから神霊同体と成るぞ」


 実菜穂と陽向はそれぞれ神を現す姿となった。真奈美は、それが見えないまでも二人の雰囲気が舞の時と同じであることを感じた。


『こうすれば直接お主らに語りかけられる。それゆえユウナミの神からは、少々ことが分かりづらくなるのでな。都合がよい。実菜穂、陽向、真奈美の手をとってやってくれぬか』


 二人は真奈美と手を繋いだ。その瞬間、真奈美は二人の神懸かった姿に目を見開くのと同時に、自分がいる世界とは全く別の世界にいるような感覚をおぼえた。


『真奈美よ、聞こえておるか。儂は水面野菜乃女神みなものなのめかみじゃ。実菜穂を通してお主に語りかけておる。そして、陽向に写る神が日御乃光乃神ひみのひかりのかみ、この社の氏神じゃ。お主が儂の祠に来たこと。それに応えよう』


 実菜穂は、真奈美にうなずく。真奈美は心の波が穏やかになるのを感じながら、ただただ二人を見つめていた。


『真奈美よ。琴美は、自分のこれからの人生に絶望をした。そして自ら命を絶とうとした。じゃが、それを止めたものがおる。それが死神じゃ。琴美と死神に何があったのかは分からぬ。じゃが、琴美の御霊を刈り取ったのは紛れもなく死神。さらに、生きているうちに綺麗に刈り取られておる。それゆえ、琴美の身体はあのような状態なのじゃ。ただこれは嘆くことではない。身体に御霊が戻れば、もとの琴美にとして生きていけることを意味しておる』


 実菜穂の瞳は青く輝いた。真奈美は、それを見つめ心に呟く。


(どうすれば琴美の御霊は戻るのでしょうか)


『琴美の死を止めたのは死神じゃ。じゃが、琴美がもう一度この世界に戻りたいと願う灯火がなければ、死神はあのような御霊の刈り方はせぬ。琴美が欲しかったものがこの世界にあるのじゃ。それが何か……真奈美、お主じゃ』


(私が……実菜穂ちゃん、……いや……水面野菜乃女神様、琴美は私を思っていてくれるのでしょうか。琴美と過ごした時間はつかの間といえど、私は、琴美を憎いとも思いました。そんな私を琴美は、思っていてくれるのでしょうか)


 真奈美は、みなもの言葉に戸惑いながらも自分を動かすためにすがることができるもの、信じたいものを見つけたくて聞いた。


『真奈美、琴美はお主を一度たりとも疎ましく思ったことはない。むしろ、お主の心が離れてしまうことを恐れておった。琴美の人生にとってはお主が待っておること。それが、琴美の灯火なのじゃ。今、灯火が消えた暗闇のなか琴美は眠っておる。これは、琴美だけではないのじゃがな、誰かが、あるいは何かが待っているということ。それは誰の生きる道にも必ずあるものじゃ。じゃから、それが見つかれば人はたとえ今が絶望的であったとしても全てを受け入れて前に進むことができる。それは琴美も真奈美も誰もが同じじゃ』


 真奈美の瞳は前が見えないほど涙が溢れていた。みなもは、言葉を続けた。

 

『よいか、琴美の御霊はユウナミの神のもとにたどり着いておる。ユウナミの神の加護を受けておる状態じゃ。ユウナミの神は、琴美がこの世界に絶望したと考えておる。人でありながら同じ人を死に追いやる。ユウナミの神はそのことに心痛めておるのじゃ。お主はユウナミの神のもとに行かねばならぬが、その手はずはあとで伝える。お主の手伝いをするため、実菜穂と陽向も一緒に行く。肝心なのはユウナミの神のもとに行ってからじゃ。ユウナミの神にはお主自身が、琴美の御霊を返すよう頼まねばならぬ。ユウナミの神がお主の話に耳を傾けるか。それは他でもない。お主の思い次第じゃ。その覚悟はあるか』


 みなもの問いかけに、真奈美は目を見開き頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ