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絶望をしたときに期待されているもの(2)

 みなもが話を続ける。


「じゃが、二人が離れ離れになってから、琴美が姉となる日が来た。琴美は、真奈美が自分にしてくれたように懸命に妹に尽くした。新しい家族も琴美にそれを強いた。じゃがな、これだけは真奈美のようにはできなんだのじゃ。琴美は次第に家族としての居場所が無くなったんじゃ。どんなに懸命に尽くしても、誰も認めてはくれなかったんじゃ。琴美は、ずっと一人じゃった。ずっとじゃ。そして真奈美を思っておった。真奈美に会いたいと……実菜穂、似てはおらぬか儂やお主と」


 みなもは、慈しむ瞳を実菜穂に向けると、実菜穂は目に涙を浮かべた。


「なぜ……どうして?一言、家族なのにたった一言だけ『ありがとう』て声を掛けられなかったの?その一言があれば、琴美ちゃん、死のうとなんて考えなかった。私にはみなもがいた。だから私はここにいる……だけど琴美ちゃんには……」


 実菜穂はギュッとこぶしを握った。陽向は実菜穂の肩を抱いていた。


「そうゃじゃな。人は己の進む道が閉ざされたと思うと、全く周りが見えなくなる。自分の進む道に絶望をしたときには、別の道や周りの景色は見えぬのじゃ。じゃが、自分がその道に絶望しても、自分に絶望していないものもある。むしろその道は自分に期待しておるのじゃ。しかもほんの小さな灯りを見つけることができれば、進むことができるのじゃ。ユウナミの神はそれを見ようとしている。人によって消された灯火を人によって再び灯せるかということを。儂らが直接関わることをユウナミの神が拒むのはそのためじゃ。じゃが、儂は琴美の御霊を取り戻したい。もう一度、この世界で琴美の華を咲かせてやりたい。琴美はこれからもこの世界には必要となる人じゃ。儂は必ず琴美の御霊を取り戻す。そのために、死神が手のひらの上で舞えと言うのであればいくらでも舞おうぞ」

「死神?」


 実菜穂と陽向は、みなもの言葉に反応した。


「琴美の御霊を刈り取ったのは死神じゃ。しかもご丁寧に生きているうちに一閃のごとく刈り取っておる。これは、再び琴美がこの世界に戻ることを考えてのことじゃ。なに故かは分からぬがな……じゃが、今は琴美の御霊を取り戻すことが先決じゃ」

「それじゃ、決まりね。私たちが動く。これしかない!」


 陽向はニコリと笑って火の神を見た。火の神は力強い光を放ちながら、陽向にうなずいた。


「実菜穂、陽向。動くことができるのは、お主らだけじゃ。頼めるか」


 みなもは、全てを預けるという覚悟のもと青い瞳で二人を見た。実菜穂と陽向はその瞳を見つめ、思いを受けたとばかり深く頷く。


「みなも、私がここで嫌って言うと思う?みなもが止めても私は行くよ。手段はある。このまま黙っていたら、琴美ちゃんは二度と戻らない。私、そんなこと見過ごすなんてできない!」

「上出来じゃ」


 みなもは、たくましく応える実菜穂に顔をほころばせた。


「みなも、私も同じだよ。氏神もそれを望んでいるんだよね」


 陽向はそう言うと、火の神に黒い瞳を向けてその答えを待った。


「我が母、ユウナミに私の声を届けることができるのは、陽向、そなたしかいない」


 火の神は、初めて陽向に自分の思いを託して願った。陽向は、その思いをしっかりと受けたことを水晶のように輝く瞳で伝えた。


 みなもは、頼もしい二人に対して、最初に必要なことを伝えた。


「琴美の御霊を取り返すには、真奈美にもユウナミの神のもとに来てもらう必要がある。琴美にとっての灯りをともせるのは真奈美じゃ。まず、お主たちにやってもらいたいことは真奈美が動くよう説得してくれ。話はそこからじゃ」


 二人は、頷いた。実菜穂と陽向は明日、真奈美に会うことを確認し、実菜穂は家に帰った。


 みなもは、陽向の側に行くと耳元で囁く。


「実菜穂は、水の心が強すぎてな、他の者の痛みを自分の痛みとして受け止めようと己自身を傷つける性がある。ある意味、寄り添う力が大きいということじゃが、痛みが大きいと自滅してしまう危なっかしいところがある。陽向、お主がいてくれて実菜穂はずいぶん助けられておる。儂も安心できるのはお主が実菜穂を支えてくれておるからじゃ。真奈美は、いま迷いが大きい。実菜穂の説得が功を奏さぬときは、お主がこれを真奈美に伝えてくれ。実菜穂に伝えると、また己を痛めつけてしまうからの……」


 陽向はみなもの言葉を聞いて確かにと頷くと、笑顔を見せてみなもを安心させた。


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