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鴇色の紐(3)

 実菜穂はCT室の前にいる。実菜穂の母もそばで座りフーッとため息をつく。真奈美が陽向に連絡をして、陽向が知らせたのだ。

 実菜穂が『異常なし』の結果を話すと、真奈美はしきりに頭を下げていた。実菜穂は、母親の袖を引き耳打ちした。


「真奈美さんは何も悪くないから。すごく心配して救急車呼んじゃって」

「分かってるわよ。どうせ、あなたがボーっと歩いていたんでしょ。真奈美さんがあんなに恐縮して。こっちが頭を下げないと」

「はい。全く返す言葉がございません」


 実菜穂がそう言いながら頭を下げると、母が真奈美にお礼を言った。


「真奈美さん、心配してくれて本当にありがとう。実菜穂は、あのとおりオッチョコチョイなので。真奈美さんが居てくれて、安心しています。話は聞いています。尊敬できるお姉さんができたとあの子も喜んでいて、私も嬉しいのですよ」


 真奈美はその言葉を聞くと急に涙目になり、嬉しそうな表情になった。実菜穂は、その表情を見て、みなもが語っていたことを思い出した。


(妹が中心の生活。感謝されること真奈美さんは無かったのだろうか)


 実菜穂は傷の手当のため処置室に呼ばれたので、真奈美はその場に残ると言った。実菜穂が待合い室から出ようとしたとき、車椅子に座った少女とすれ違った。


(可愛い子だな……)


 実菜穂はそう思って眺めていたが、真奈美の表情がこわばっている。次に実菜穂が戻って来たときには、そこに真奈美の姿は無かった。


 翌日は、最後の梅雨とばかりに雨が景気よく降っていた。賑やかな雨音のなか実菜穂は真奈美の教室を訪ねてみたが、真奈美は欠席をしていた。終業式までは補講的な授業しかなく休む生徒もチラホラいた。とくに特進クラスではこの時期は塾の講習に顔を出す者も多く、欠席は珍しいものではない。

 実菜穂が真奈美を見かけたのは、それから2日後である。いつもの真奈美ではなく、元気がない沈んだ感じで、顔にも寝不足を思わせるやつれが見えた。実菜穂は、病院に担ぎ込まれた日のこともあり、真奈美に明日、陽向の所へ一緒にいこうと誘った。陽向も声を掛けてきたこともあり、真奈美は元気ないながらも素直に応じた。みなもは、真奈美を青い瞳で見つめていた。


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