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鴇色の紐(1)

 終業式も近い午後、実菜穂と真奈美は陽向の神社に行くことを約束しており、二人は待ち合わせて一緒に帰ることにしていた。陽向は二人を迎える準備をするため一足先に帰っており、真奈美は待ち合わせ場所で、そわそわしながら実菜穂を待っていた。真奈美にとって、憧れの人の家に行くのである。緊張と高揚が交互こみ上げ、自然に気合いも入ってきた。実菜穂が、遠くに見えるとすかさず手を挙げ合図した。


「実菜穂ちゃん。こっちだよ」


 真奈美は実菜穂に呼びかけた。実菜穂も真奈美を見つけて駆け寄ってきた。


「待ちました?」


 実菜穂は軽く息を整えると、真奈美を見た。


「待った。待ったよ。もう、待ちくたびれた」


 真奈美が実菜穂の頭を撫でると手が髪をスルリと滑っていく。


「髪に潤い出てきたね。実菜穂ちゃんはプールで泳ぐから特に保湿しておかないとパサツくから」

「真奈美さんに勧められたシャンプー使ってから良い感じです。もともと髪質なんて気にしてなかったけど、凄く違いが分かります。陽向ちゃんはいい髪しているからなぜだろうと思ってたから。真奈美さんに良いこと教えてもらいました」

「うんうん。実菜穂ちゃんは、もっと綺麗になるよ」


 真奈美は、優しい目で実菜穂を見ると、実菜穂はその顔に照れて顔を下に向けていた。こうしていると二人は仲の良い先輩後輩というよりも、より近しき姉妹のように見えた。


「私ね、初めて陽向さんと実菜穂ちゃんを見たのはあの動画なんだ」


 真奈美は歩きながら、秋祭りでの感謝の舞について一つ一つ思い出すように話した。


「あの舞っている姿、凄く心が揺さぶられたんだ。始めは陽向さんが実菜穂ちゃんを支えていてリードしている感じ。まるで陽向さんがお姉さんで実菜穂ちゃんが妹のように見えた。でも、そのあとに舞っているときは違っていた。舞そのものもだけど、実菜穂ちゃんが先に進んでいた。実菜穂ちゃんがお姉さんのようになって、その後を追いかける妹が陽向さん。そんな感じに見えたの。どんなに追いかけても追いつけない感じ。それでも何か幸せそうな二人。いつの間にか入れ替わってるのに……。何だか、心が熱くなって、羨ましくて。なぜだろう」


 真奈美は微かに潤んだ目で実菜穂を見ると話を続けた。


「あの動画、何回も見たなあ。それでね。春になって、噂を聞いたの。日御乃神社の巫女が舞うっていう。私も絶対に見たいって思って行ったわ。陽向さんと実菜穂ちゃんをこの目で見ることができた。本当に嬉しくて、感動して舞を見たの。でも、今度は動画で見た感じとは全く違っていた。二人は全く対等にいたの。お互いを認めて、お互いを尊敬して、お互いを高めていた。息が合った舞だった。そして、実菜穂ちゃんが鈴を鳴らした。何なんだろうあの時の姿。美しいなんていう言葉では表現できなかった。人じゃない何かもっと高みにいるもののように……不思議だった。そして、そのあとにまた二人は舞った。今度は、陽向さんがお姉さんになっていた。でも、実菜穂ちゃんも陽向さんを支えていた感じ。お互いが成長していた。そんなふうに感じた。二人は美しかった。私、それを見ていて、気がついたら泣いてたの。なぜだか分からないけど……涙が溢れていたの」


 真奈美はそう言いながら、実菜穂を愛おしげに見つめた。実菜穂は真奈美の言葉に優しく頷いた。


「真奈美さんのその感じ方。間違っていません。もしかしたら、そう遠くないうちに真奈美さんにも見えるかもしれません」


 実菜穂の瞳は真奈美の姿を優しく包み込んでいた。真奈美はその瞳に自分が溶けていくような感じがした。


「何が見えるの?」


 真奈美は、実菜穂に聞いた。


「『礼を持って礼を伝える』これは、私が今まで学んできたことで一番大切だと思っていることです。これを教えてくれたもの。私が一番大切にしているものです」


 実菜穂はそう言うと、真奈美を上目で見ながらニンマリと笑った。その笑顔に真奈美も思わず、顔を赤くした。陽向といるときとはまた違った真奈美の表情であった。




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