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赤珊瑚と桃珊瑚の見た思い(23)

 みなもが横目で桃瑚売命を見る。桃瑚売命は首を振った。


「勝てないと思うよ。人の身体ということだけじゃなく、私でも勝てないかも。私が武に勝るといってもそれは技だけの話。戦いとは、相手を知り、周りを知り、己を知ってはじめて勝てるものだから。己を知らない私は、姉には勝てない」

「そうじゃろうな。儂も姉さには勝てぬと思う」


 二柱はお互いを見てクスクスと笑った。


「水面の神、あなたの覚悟を確かに見たわ。その守りの中にあるものが証。今なら何となく分かる」

「なにがじゃ?」

 

 みなもが首を傾げた。桃瑚売命はクスリと笑う。


「真波姫の怒りを鎮めた柱は、水面の神だということ」

「あーっ、……あれは成行きなんじゃ。母さとの約束で……内緒なのじゃ」


 みなもが上目遣いで見る。その姿が可愛らしく、桃瑚売命に笑みが浮かんだ。


「ふ~ん。じゃあ、内緒にするから、今度、人の身体でない水面の神と思いっきり戦いたいな」


 今まで見せなかったみなものモジモジした表情に、悪戯心が芽生えた。   


「あー、それは、儂はもう…………懲り懲りじゃあ」


 みなもが力の抜けた顔で笑うと、その何とも言えぬ可愛らしくも困ったという笑顔に、桃瑚売命も笑った。美しく可愛い門守の神の笑い顔である。その笑顔のまま桃瑚売命はスッと門の中に姿を消した。


 みなもは、桃瑚売命を見送ると、全身の力が抜けていった。フ~と息をつき、その場にペタンと座り込んだ。


 さっきまでの、凄まじい戦いが想像できないほど辺りはシーンとしていた。





 壁が取り払われた。


 火の神が飛び込んでくる。


「大丈夫か!」

  

 深手を負った姿でみなもを見つけた。その火の神の姿を見て、みなもの方が目を丸くしていた。


「おお、随分と手加減をしてもろたのでな。このとおり、何ともないぞ。それより、お主の方こそ酷いではないか。あ~あっ、それでは、陽向が哀れじゃ。火の神、こっちへ来い」


 みなもの言葉に火の神は素早く駆け寄っていった。みなもは火の神を優しく抱きしめると、清流のオーラで包み込んだ。清流が陽向と実菜穂の身体の傷を癒してく。オーラが消え去った時には、二人とも傷一つない身体になり、衣服の破れもなく元の状態になっていた。火の神の力も思いも満たされていった。



「夜神、すっかり世話になったの」

 

 みなもが声を掛けると夜神がその姿を現した。夜神の姿に目を広げた。


「おおっ、見違えるほど美しいのう。何とも綺麗じゃ。これは、まさに夜の華じゃの。月の神も惚れるわけじゃ。それにしても、儂が知っておるのは、こーんな小さきときかのう」


 みなもが自分の腰を差しながら笑っている。


「いや、お前もその頃は同じであろう」


 火の神が思わず突っ込んだ。


 夜神はみなもと火の神を見ながら「フフフ」と静かに笑った。


「大したことはしていないわ。いずれまた近いうちに」


 夜神はそう言葉を告げたあと、音にならない言葉を呟いていた。みなもは、その言葉を理解して笑みを浮かべた。夜神もその笑みに応えるとフッと消えた。


 夜の世界は解かれた。それと時を同じく、みなもと火の神も消えた。


 随身門の先は明るく光が差し、拝殿がその姿を現していた。

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