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地球疑  作者: 新垣新太
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第4章~雲海・前編~

3年生へと進級した日和、権太、美代子。4月の暖かな風に吹かれながら、日和達は秋組の先生の授業へと向かっていた。東棟の前には、日和のクラスメイトが集まり始めていた。生徒達の前には、既に先生とサポートの人と思われる男性が立っていた。


夕葉(ゆうは)先生 それでは、そろそろ授業を始めたいと思います。皆さんと会うのは歓迎会以来かな?、私は秋組担任の夕葉です。そして、こちらは雨組リーダーの千鳥(ちどり)君。


そう言って、夕葉先生は千鳥リーダーに目で合図を送る。


千鳥リーダー 初めまして千鳥です。そして、もう1(ひとり)

ピィウィ!

千鳥リーダーが口笛で高い音を出した。すると、生徒達の頭上を大きな黒い影が通った。


権太 でかっ!、何?

美代子 え?、鷹じゃない?


夕葉先生 私達秋組は、旻天(びんてん)を創る組です。雲を操る組とも言われますが、特に秋組にとって重要なパートナーが千鳥リーダーの手に乗る鷹です。この鷹の力を借りて、雨や雷を雲を使い発生させる事で、地球を照らす月や太陽の休息。そして、穀物や動植物の成長を時にコントロールしています。


千鳥リーダーの手に乗った鷹は、大きな姿を勇ましく生徒達に見せながらも、視線は遥か遠くを望んでいた。


日和 綺麗なまん丸お目め。


夕葉先生 今日は、この鷹の力を借りて、実際に部分的に雨を降らしてみます。それでは、広場の中央で千鳥リーダーを大きな円で囲むように皆さんに見てもらいます。


そして、千鳥リーダーは鷹を手に持ち広場中央へ移動。生徒達は大きな円に広がり千鳥リーダーを囲んだ。


夕葉先生 千鳥君!お願いします。

千鳥リーダー はい!


すると、千鳥リーダーは鷹を手元から離した。鷹はバサッと大きな羽を広げると、大きな円の内側をグルグルとゆったり飛び始めた。空は薄い青空に白い小さな雲が点々と浮いているだけだった。


奈々 鷹ってこんなにでかいんだ!

あやみ 羽ばたく風がこっちまで来る。

達也 ん?、何か目光ってね?


ピィウィッ!

中央にいる千鳥リーダーがまた口笛で高く鋭い音を出した。すると、鷹の目が黄色い光を出した。

キイィィィイィィン!


日和 うぅ。耳鳴り。

権太 何の音だよ。


夕葉先生 皆さん上でーす!


そう言われた生徒達は空を見上げた。すると、さっきまで近くを飛んでいた鷹が上空に向かって真っ直ぐに飛んでいた。そして鷹は全身に黄色い火花を帯始め、空の中に消えていった。


美代子 消えたけど、何?

バキンッ!!

突然上空から稲光が千鳥リーダーに降り落ちた。だが、何事も無かった様に表情ひとつ変えずに千鳥リーダーは立っていた。そして、左手の上には少し小さくなった鷹が乗っていた。


将生 どうゆうこと?

夕葉先生 雨が降りまーす!


ぽつ、ぽつぽつ、ぽつ。

すると、上空から雨粒がたしかに降ってきた。空を見上げると、青空の中、生徒達が作る大きな円と同じ程の鼠色をした雲が上空に出現していた。


権太 マジかよ。あの鷹が雨を降らせたって事?

日和 でも途中耳鳴りで目瞑ったから良くわかんなかった!


夕葉先生 千鳥君ありがとう!、皆さん雨に濡れるといけないので、一旦こちらに移動して下さい!


生徒達は円を崩し、雨雲を避けて先生の所へ集まった。さっきまでの青空は一変し、雨雲に呼ばれるように薄い雲が空に現れ始めていた。


夕葉先生 はい。では今の現象を確認しましょう。まず、鷹の能力は雷を起こす力があります。そして、その雷は上空の空気中の成分を刺激し、雲を誘発させました。そして、皆さんが作った円の上空にだけ雨雲を発生させて帰ってきました。鷹は能力を使う回数が限られています。1度使うと、この様にいつもの身体よりもサイズが少し小さくなります。今回は、わざと雷を起こしましたが、本来はしっかりと雨を降らせる位置や上空の空気中成分の分析。他への有害影響が無いか等をしっかりと判断した上で雷の管理を行います。では、今のを踏まえた上で、このクラスの中で1人だけ鷹を使って雨を降らせて欲しいと思います。立候補はいますか?


そう言われ、生徒達は何だか自信の無い表情を浮かべていた。


直人(なおと) 僕やります!

権太 直人やれんの?

直人 いやわかんないけど、俺のじいちゃん鷹飼ってて。遊びに行った時は、必ずじいちゃんの鷹と遊んでたから怖くねえんだ。

権太 じいちゃんすげぇな!


夕葉先生 よし!じゃあ千鳥君の所へ行って打ち合わせを!

千鳥リーダー じゃあまずは、この手袋をしてー。利き手はどっち?右?、うん。じゃあこっちに手袋しようか!


そうして、直人は千鳥リーダーと鷹の扱い方と雨雲を起こす為の細かい意識の仕方を指導していた。日和は雨の降る雲と、他の空を見比べていた。既に青空は雲に隠され、少しの切れ間から顔を覗かせる程度だった。


千鳥リーダー 大丈夫かな?出来なくても大丈夫だから。

直人 はい!

千鳥リーダー 夕葉先生大丈夫です!

夕葉先生 はい!、では皆さん、先ほどと同じ様に大きな円を作って下さい!


今度は、千鳥リーダーと直人が円の中央に移動する。そして、大きな円が出来た事を確認した千鳥リーダーは、左手に乗せていた鷹を直人の左手に乗せた。


千鳥リーダー じゃあ、自分のタイミングで。僕は離れるよ。

直人 はい。、おお!ちょっと思ってたより重いな。


夕葉先生 千鳥君ありがとう。彼大丈夫そう?

千鳥リーダー はい。落ち着いて説明聞いてましたし、後は平常心さえ保てれば。

夕葉先生 そうね。、只さっき筒眼鏡で空を確認したらね、青い龍がいたのよ。

千鳥リーダー 今ですか?

夕葉先生 いつだって探しても出て来ないのにね。こんな時に現れるんだから。、龍の逆鱗(げきりん)にだけは触れないで欲しいわー。


直人は鷹を支える左手を少しふらつかせながら、握っていた右手から黄色いミミズを鷹に餌付けした。そして、鷹は食べるや否やすぐに直人の左手から飛び立った。


美代子 おお!飛んだ。

権太 やるなー!直人!


そして、鷹は少し小さくなった身体で円の内側をグルグル飛び回る。直人は鷹の表情から目を離さないようにしていた。すると、鷹の目が徐々に黄色い光を帯びてきた。


直人 そろそろだ。行け!

直人は素早く右手を空に真っ直ぐと伸ばした。

ピィウィッ!

それを確認した千鳥リーダーが口笛を鳴らす。


直人 行った!速いなー!


勢い良く空へ飛び上がった鷹、ぐんぐんと曇り空の中へ近づいていく。そして鷹は雲の中へ消え、数秒後。


直人 そろそろか、、ここからじゃ見えないな。

バチンッ!


一瞬の出来事に直人は気付くまでに時間がかかった。だが、痺れを左手に感じた事を認識して自分の左手を見た時には、先ほどよりさらに小さくなった鷹が乗っていた。


千鳥リーダー 上手だな。

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロー!

夕葉先生 龍の声がするわぁ。千鳥君筒眼鏡で龍の(うろこ)を確認出来る?

千鳥リーダー はい!やってみます。


直人 おぉお。帰って来た、、お帰り。

権太 すげーじゃん直人!

日和 何だろう、さっきより耳鳴り感じなかったからちゃんと見れた!


夕葉先生 どう?鱗は見えた?

千鳥リーダー えー。と。あ!見えました。、、1枚黄色くなってますね。

夕葉先生 ビンゴだわ。台風が来るわ、私は海組に連絡する。千鳥君は鷹を五重の塔の職員室に飛ばしてくれる?

千鳥リーダー はい、わかりました!


ピィウィ!

千鳥リーダーが口笛を吹き、直人の左手に乗る鷹を呼んだ。そして、何かを鷹の足に結び五重の塔の方向へ飛ばした。


夕葉先生 皆さん!勇気を出して挑戦した仲間に拍手で称えましょう!!

パチパチパチパチパチパチ!


ぽつ、ぽつ、ぽつぽつぽつぽつ!

すると、上空から大きな雨粒が降りだしてきた。夕葉先生は、これから雨が全体に広がるので。と授業の続きは次回へ持ち越された。校内へと戻る生徒達、直人は数人の男子に囲まれ褒め称えられていた。


夕葉先生 今が4月だから。、、9月頃ね。今年の夏は嵐が多いかもね。

千鳥リーダー 何も起きなければ良いですけど。

・・・

その翌日。日和達は、東棟1階の教室にいた。今日は夕葉先生が行う屋内の授業だった。


夕葉先生 はいではー、授業を始めます。今日は秋組の銀杏(いちょう)リーダーに来てもらっています!

銀杏リーダー 銀杏です。よろしくお願いします!

夕葉先生 今日は、皆さんのテーブルの上に置かれてある様々な材料を使って色玉を作ってもらいます。色玉は、皆さんの歓迎会や空祭等の場所で目にした事があるかと思います。私達秋組は、空の景色を創る際、小さな丸い空壁玉と呼ばれる透明な玉に、空に描く色彩をイメージしながら、粉を作り玉に入れていきます。そして、出来上がった色玉は、このパチンコを使って空に飛ばします。外部の空人達は、広範囲の景色を創るので、空気圧の高い機械で空に飛ばしています。この色玉を作る特別な職人さん達もいらっしゃいますが、今回は、自分達で色玉を作って空に飛ばしてみましょう!


6人掛けのテーブルの上には、野菜や植物。花や根っこ等が置かれている。その隣にはすり鉢とすり棒、フードプロセッサーの準備があった。他には試験管やじょうご、そして空壁玉と呼ばれる透明な玉が白いボウルに沢山入れられていた。


夕葉先生 まず初めに、自分が描きたい空をイメージしましょう。そのイメージが出来たら、次は色に合った材料を選んで粉を作ってみて下さい!それでは始めー!


日和 へえー!そんな事出来るんだ~。面白そう!

美代子 ね!、私は何にしようかしら?

権太 俺は空祭で経験済みだぜ。さて何を作ろうかな?


各テーブルでは、生徒達が黙々と色玉作りに励んでいた。夕葉先生と銀杏リーダーは、テーブルを周りアドバイスや相談にのっていた。様々な色を粉にして、試験管に色分けしながら粉を注ぐ。カラフルに並ぶ試験管。生徒達の手や顔には、色んな色が付き、それを楽しんで遊ぶ者もいた。教室内は、材料をすり鉢で潰す音、試験管や空壁玉にじょうごが当たる音が響いていた。生徒が空壁玉に粉を詰め終わると、規則的に丸い窪みの付いた焦げ茶色の木の板に並べられていく。そして、その開いていた穴を夕葉先生と銀杏リーダーが手をかざして塞いでいく。綺麗に並んだ様々な色玉。空に飛ばすのを待ち遠しそうに生徒達が眺めている。


夕葉先生 大分熱中して作業してくれたお陰で、全員の色玉が完成しました!

パチパチパチパチ!

自然と教室にいた全員から拍手が起こった。


夕葉先生 では、先生のテーブルに置いてあるパチンコを1人1つ持って外へ出ましょう!


生徒達は、自分の作った色玉を片手に先生のテーブルのパチンコを取りに動く。そして、日和のクラスは東棟の前に集まった。


夕葉先生 色玉に使ったこの空壁玉は、空気中の成分に反応して破裂します。それは、上空の空気の薄さや気圧の関係等、職人さん達が様々研究した賜物がこの美しい球体に込められています。簡単に創れる物ではありませんから、ちゃんと丁寧に感謝を込めて空へ飛ばして下さい!

生徒全員 はい!

夕葉先生 銀杏リーダー!お手本を。

銀杏リーダー はい!


そう言われ、銀杏リーダーは腰ベルトに引っ掛けていたちりめん柄の袋から色玉を2個取り出した。そして、パチンコのゴムに色玉をかけ空へ飛ばした。先に1個目を飛ばし、続けて2個目も空へ飛ばした。


ヒュン!、ヒュン!

パチン!、パチン!


空高く飛んだ色玉は、生徒達の上空で乾いた静かな音を2つ鳴らし弾ける。


日和 あっ!空が黄色くなった。

加南子 次は赤だ。すごい段々色が広がってる。


空を黄色と赤色の色玉が染め始めていく。生徒達の上空に色付いた景色はじんわりと青い空に広がる。そして、黄色と赤色は混ざり合って綺麗な茜色の空に変わる。


美代子 わぁぉ。昼間なのに空が夕焼け色だわ。

権太 ほんとなー。雲は染まってない、白い雲が良いアクセントになってて良いなぁ。


夕葉先生 見事な夕焼け色ね。銀杏リーダーありがとう!、それでは、次は皆さんの番です!少し広めに間隔をとって、横一列に3人ずつ空に飛ばしていきましょう!


生徒達は、銀杏リーダーの夕焼けを余韻に感じながら列を作った。そして、前列から先生の合図で空に色玉が飛んだ。


ヒュン!、ヒュン!ヒュン!

パチン!、パチン!パチン!


青空に三者三様の色が色付く。赤い空。深い夜の様な紺色の空。ピンク色の空等、生徒達は想い想いの色に染まる空を満面の笑みで望んでいた。そして、日和、権太、美代子の順番が来た。


日和 楽しみ!

美代子 1番高く飛ばすわ。

権太 見よ、俺の力作。

夕葉先生 よーい!、発射!


ヒュン!ヒュン!ヒュン!

空に飛んだ3つの色玉は、それぞれ高さをバラつかせて弾ける。

パチン!パチン!パチン!


1番高く飛んだ美代子の色玉は、深緑色と黒色がまだらに混ざる空に変わる。

美代子 うーん。迷彩柄にしたかったんだけどな~!イマイチだわ。


2番目の高さで飛んだ日和の色玉が弾ける。檸檬色の粉が空を染め、そして同時に白色の粉が檸檬色に混ざり綺麗なグラデーションを空に描いていた。

日和 綺麗、かな?、朝焼けっぽくしたかったけど赤入れたら良かったかなー。


そして3番目の高さで飛んだ権太の色玉が弾ける。黒色の粉が空を染め、そして徐々にその中から金色のラインが縦横に何本かの直線となって現れた。


日和 え?権ちゃんの何それ?

美代子 キラキラしてる!画面?

権太 上手く出来たぞ!

夕葉先生 ほー。彼上手ねー。男性が着そうなスマートなチェック柄。均一なラインを上手く表現したわね。


そうして、クラス全員の色玉を飛ばし終わった。次回は、夏組の光の性質を利用して虹を空に架ける授業をやります。と、夕葉先生から伝えられ授業は終わった。


・・・

5月に入ってすぐの事。美代子が食堂で柏餅を鱈腹(たらふく)食べているのを横目に、日和は壁に貼られたポスターを見つけた。


日和 空の市。今度の15日にやるんだー。

美代子 ん?、なんかルームメイトが言ってたけど、3年に1回やる物産展みたいよ!

権太 3年に1回!?、皆で行こうよ面白そうじゃん!

日和 そだね。秋エリアで開催だって!

・・・

5月15日。空の市開催当日。日和達3人は、秋エリアで行われる空の市会場に到着した。そこには、白いとんがり帽子の形のテントが沢山立てられていた。色とりどりの装飾と賑わう人だかりで会場は熱気に包まれていた。


日和 アコーディオンの演奏だ~。

権太 すごい人だなこりゃ!

美代子 う~ん!美味しそうな香りがするわねー!


3人は「秋の空市」と書かれた入口を通り、沢山の人混みの中へ入っていく。空の市は大きな円形状に白いテントが立ち並び、その中央部分では、ワークショップや楽器の演奏が行われていた。


美代子 悩んでる暇はないわ!、私先に食べ物見てくる!

そう言って美代子は食べ物エリアを目指し消えて行った。


日和 相変わらず美代子は早いね。ねえ権ちゃん見て!虹の水だって!

権太 おお!飲む度に味と色が変わるドリンクって書いてある。

日和 ほら今女の子が持ってるやつ、綺麗に色変わってるよー!私あれ3つ貰ってくる!

権太 オッケー!じゃあ中央のテーブルで待ち合わせな!

そう言って権太は日和と別れ、他に気になるものを探す。


権太 よし。食べ物と飲み物はあの2人に任せて。俺は芸術系をみよっかなー!


権太は、飲食店の良い香りを通り越しアンティークな物販店のエリアを目指した。そこには、細かい装飾品や服。食器からお花等、所狭しと展示されていた。


権太 あ!コップかー。マグカップも良いなぁ。

権太はクリーム色をしたマグカップを手に持った。すると、マグカップを触る手の部分から徐々に色が変わり、あっと言う間に黒色のマグカップに変化した。

権太 触ると変わるのか。でも、黒は微妙かなー。


次に権太は、服飾の所で服を見ていた。権太の近くで服を見るカップルがその場で試着をしていた。


女子生徒 これどう?

男子生徒 おう、ちょっと着てみたら?

女子生徒 うん。、あ!ぴったりかも!どう?

男子生徒 うん。あれ?何か、服から良い香りしてるな。

女子生徒 うそ?、あ。本当だ。なんかラベンダーみたいな香りする~!、さっきまで匂いしてなかったのに。


権太 服から香りが出るのか。、なるほどね~。

そして、服飾エリアを抜けて今度はアクセサリー品のエリアに来た。そこには、大小様々な大きさの水晶が付いた耳飾りが並べてあった。


権太 水晶かぁ。母ちゃん水晶好きだからなー!でも、ピアスしないだろうな~。

女性店主 兄さん。プレゼントかい?

権太 あぁ。いや、母ちゃんにあげようかなって。

女性店主 そうかい。この耳飾りは気に入ると思うよ!ちょっと手に持ってみて。


そう言われ、権太は中位の大きさの水晶が付いた耳飾りを手のひらに乗せた。

女性店主 そしたらその耳飾りをちょっと揺らしてみな。

権太 揺らす。はい。、、おお!水晶の中に星が。


権太が揺らした水晶の中には、小さな星達がキラキラと揺れながら光っていた。そして、揺れが収まるとスッと消えて透明に戻る。

女性店主 今度はその水晶に息を吹き掛けてごらん!

権太 え?吹けば良いんですか?、フーー!


権太が水晶に息を吹き掛ける。すると、息の風に押し出される様に、水晶の中には綺麗なピンク色の小さな桜吹雪が舞った。


権太 うぉお。桜だ。すごいねおばちゃんこの耳飾り!

女性店主 母さんが喜ぶ顔が想像出来たかい?

権太 うん!これ貰うよ!

女性店主 あいよ。ちょっと待ってな。


そして、権太は水晶の耳飾りを赤い包装で綺麗にラッピングしてもらい、鞄にしまった。丸っきり日和と美代子の事を忘れていた権太は、やっと我に返り待ち合わせの中央に位置するイートインスペースへ向かった。


美代子 あいつ遅い!冷めるっつーの!

日和 こんだけ人がいるから見つけらんないのかな~?、あ!いたいた!

権太 あー!やっと見つけた!ごめんごめん!

美代子 暖かい内に早く食べよ!

権太 うわぁ!何かうまそうだし変わったの広げてるなー!

美代子 当たり前でしょ?私達を誰だと思ってんのよ!


3人は、日和と美代子が探し集めてくれた食べ物や飲み物を楽しみながら堪能した。日和は虹の水を様々な色に変化させ味を教えていた。美代子は宇宙屋と呼ばれる屋台で貰ったと言う、三日月型のドーナツと星雲(せいうん)チョコケーキをバクバクと口に放り込む。権太は星形の断面の長いチュロスを選び、何が変わってるのかを聞くと。チュロスをブンと降るとチュロスの棒の穴から星が飛ぶと言われやってみた。すると、穴から細かい星屑がキラキラと空中に散布する仕掛けお菓子だった。調子に乗った権太は、食べながらもブンブンとチュロスを振り回し星屑を空に飛ばして楽しんでいた。だが、余りにも強くチュロスを振っていたせいで周りの人達にチュロスの砂糖も飛び散っていたらしく、近くにいた先生に注意を受けた。ちょっと落ち込んだ権太を見て、美代子は権太の手のひらに星キャラメルと呼ばれる白い小さな星形のキャラメルを数個渡した。美代子曰く、星キャラメルの味は無数に存在し、基本はフルーツやチョコのキャラメル味らしい。だが希に当たり付きの味が隠れているとか。それを聞いた権太は一粒星キャラメルを食べた。


美代子 どう?

日和 何の味?

権太 もぐもぐ。あ!、どら焼きの味がする!!、これ当たり?

美代子 私も当たりが何なのかはわからないのよ!

日和 でも多分、どら焼き味ではないと思う。


権太は星キャラメルで少し元気を取り戻したのか、顔がちょっとだけ緩んでいた。すると、近くで演奏していた舞台から権太が聞いた事のある声が聞こえてきた。


草香先生 皆さんこんにちは。草香サリーです。天気に恵まれて、この晴天の空の市の舞台で歌わせて頂ける事に感謝致します。、この後も楽しんで空の市の散歩が出来るよう。そんな寄り添えるような歌を届けたいと想います。それでは、「空の旅人」と「夜市(よるいち)」2曲続けて歌います。、行きましょう。

♪~♪~♪~、♪♪♪~♪~。


権太 うそだろ。


保健室の草香先生が、マイクを持ち。アコースティックギターの男性2人と素敵なメロディを奏で始める。その場にいた誰もが、草香先生の(つや)やかな歌声に耳を奪われ、魅了されていった。権太は、このまま時が止まれば良いのにと思う程。草香先生が作り出す空間に引き込まれていった。

・・・

美代子 いや~食べた食べた!

日和 ねー!、雑貨とかも沢山見れたし面白かったね!

権太 あぁ。もぅ。はぃ。

美代子 本当男子ってバカよね!

日和 権ちゃん顔がとろけてるよ(笑)。


こうして3年に1度の空の市は賑わいをみせ、幸福感に包まれながら幕を閉じたのであった。

・・・

日和のクラスの秋授業は、雷を起こす鷹の生態や空気成分との科学反応の原理を学ぶ座学。そして、色玉作りでは他のクラスが空に飛ばした色玉の映像の視聴。リモート中継で色玉職人さんが作る実際の色玉作りを先生の解説付きで学んだ。日和は夏授業が始まる教室に座っていた。窓から見える6月の空からは、雨がしとしとと降っていた。


陽光先生 お待たせしました!、今日は皆さんに流れ星を作ってもらいたいと思います。只、叶え人達の様な大掛かりな流れ星ではなく。皆さんには、こちらの割り箸鉄砲を使って小さな流れ星を作ってもらいます!


そう言って、陽光先生は生徒達に割り箸鉄砲を見せた。様々な長さに切られた割り箸が、輪ゴムで数ヶ所とめられている。それには、たしかにトリガーが付いており、そこを動かすと引っ掛けた輪ゴムが外れ前方に飛ぶ仕組みらしい。


達也 何か知らないけど面白そう!

あやみ 聞いた事無い。知ってる?


陽光先生 では、早速割り箸鉄砲を作る所から始めます。作り方は皆さんの座るテーブル上空にスクリーンを表示します。順番通り進んだら、スクリーンを手でスライドさせると次の工程が表示されます。テーブルに座るメンバーで協力して作ってみて下さい!では材料は先生のテーブルに準備してあるので取りに来て下さい!、はいどうぞ!


生徒達は、テーブルに材料となる割り箸と輪ゴム。小さなノコギリを集めて作業を始めた。テーブル上空には大きなスクリーンに作業工程が番号でふられて6マスに分かれて表示されている。男子生徒は鉄砲に興味があるのか乗り気でサクサクと作っている。対して女子生徒は、全く興味が無いのか男子生徒の作り方を見ながらゆっくり進めていた。

・・・

陽光先生 はーい。そろそろ皆さん完成しましたか?、、うん。テーブルを見る限り完成しているわね。よし。そしたら次は、この白い輪ゴムを各テーブルに配ります。まだ割り箸鉄砲で飛ばさないで下さい!、まずは、玉木リーダーが使い方の見本をお見せします。では玉木リーダーお願いします!

玉木リーダー はい!


そう言って玉木リーダーは、教室の陽光先生が立つ教壇の正面。そこから1番後ろ側の壁に立ち、割り箸鉄砲に白い輪ゴムをセットした。


陽光先生 はい。そうしたら、この黒板の真ん中に描いてある月があります。今からここを狙って玉木リーダーに割り箸鉄砲を射ってもらいます。


玉木リーダーから黒板に描かれた月までの一直線。そこまでは、距離にして8メートル程だろうか。その間は、生徒達が座るテーブルの上を通る軌道になっている。玉木リーダーは両手で割り箸鉄砲を持った。


玉木リーダー はい。行きます!


すると、玉木リーダーの割り箸鉄砲に掛けられた白い輪ゴムが少し輝き出す。

ビュン!、バチン!


白い輪ゴムは黒板の月を目掛けて白い光を帯びて命中した。その軌道からは、細かく煌めいた星屑が落ちていた。黒板に描かれた月は、白い輪ゴムから出た星屑が残り、キラキラと光を放っていた。


陽光先生 お見事!皆さん拍手~!

パチパチパチパチ!

玉木リーダー ありがとうございます!

陽光先生 的となる月に対して、輪ゴムが一直線に飛ぶイメージ。そして、白い輪ゴムに光を込めて、軌道を輝かせる意識を合体させてトリガーを引きます。、とは言っても、中々初めから上手くはいきませんので。これからテーブル毎にチームになって頂き、シューティングゲームをしてもらいます。


そう言って陽光先生は、教室の電気を全て消した。教壇に立っていた陽光先生は、教室のドアの前に移動した。


陽光先生 これから、各テーブル毎に教室の1番後ろに横1列に並んでもらいます。そして、そこから割り箸鉄砲を構えて、先生が暗闇の中に的となる月を出現させます。それを狙って取ったポイントで競うゲームです。名付けてシューティングスター。

将生 ダジャレ。


陽光先生 はい、それでは早速テーブルに書かれたアルファベット順にいきます!、まずはAチーム、後ろへスタンバイ!


権太 マジか。よりによって1番最初じゃん。

日和 先生いつもだけど、テンポ早くない?

美代子 練習させて欲しいわー。


日和達Aチーム6人は、教室の後ろに1列に並んだ。そして、白い輪ゴムを割り箸鉄砲に引っ掛ける。


陽光先生 準備は良いかしら?、時間は3分間、月に当たれば1ポイント。かすってもOKよ!、じゃあ用意、始めー!


そして、暗闇に向けてAチームは割り箸鉄砲を構える。すると、黒板の前の暗闇から大きな月が現れた。


権太 よし!これなら楽勝!

ビュン!

陽光先生 外れ!、ちゃんと月を狙うのよー!権太君先生の所に輪ゴム来たわよ!

権太 あれ?すいません!


ビュン!ビュン!ビュン!

権太に続き、他の生徒も輪ゴムを飛ばす。只、白い輪ゴムは微かに光る程度。玉木リーダーの様な輝く輪ゴムにはならない。


日和 あの時のアーチェリーみたいな光を。

美代子 意外に真っ直ぐ飛ばないわね。


ビュン!ビュン!ビュン!

暗闇に現れる月が大きさを変えながらあちこちに現れる。輪ゴムの軌道と的への命中に集中するあまり、流れ星所では無くなるAチーム。

ビュンビュンビュン!

陽光先生 あと1分。初めてにしては当たってる方よ頑張って!、権太君!先生は的じゃないからね?

権太 はい!、何で軌道が反れるかなー?

美代子 権太ちゃんと狙って。


将生 お!当たった!

日和 よし!私コツ掴んできたかも。


権太 よーし。今度こそ!当たれっ!

陽光先生 うん。権太君にとって私は月なのね。痛いけど嬉しい。うん嬉しい。、はい!終了~!、ではAチームの結果は12ポイント。じゃあ輪ゴムを回収して席に着いて下さい!次はBチームね。準備して下さい。


日和 権ちゃん輪ゴム反れまくってたね。

美代子 権太、ちょっと鉄砲見せて。、あんたトリガーのココ曲がってるからよ。だから全部右に反れてたんだわ。直してあげる!

権太 そう言う事か!、暗いから分かんなかった!ありがとう美代子!

美代子 なんか、暗闇の中で先生が痛い痛いって言うちっちゃな声が耳に入って全然私集中出来なかったんだから。

日和 うん。美代子、わかる。私もそうだった。


割り箸鉄砲を使ったシューティングスターは、しばらくの期間実施された。権太は美代子の修正のお陰で2度と陽光先生に輪ゴムが当たる事は起きなかった。だが、あれ以来、クラスの間で権太の輪ゴムに痛がる陽光先生のモノマネが少しだけ流行った。

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