第3章~叶え人と流星群・前編~
2022年4月
桜の花びらが夏お城の開いた扉から舞い込んで来る頃。日和達は2年生に進級をし、寮の部屋は2階から3階へと変わっていた。クラス替えやルームメイト替えもなく、特に日和の心境の変化はなかった。只あっと言う間に2年生になってしまった様に感じ、少しもの寂しさを感じていた。昨日あった陽光先生の授業ガイダンスでは。日和のクラスは今年、夏の授業に特化した1年間のスケジュールになると言っていた。
日和、権太、美代子の3人は、夏組の最初の授業が行われる教室に向かっていた。
美代子 日和!食堂に貼ってあったポスター見た?
日和 え?なに?何か貼ってあった?
美代子 今年8月にお祭りやるみたいよ!もう楽しみ!
権太 良いねお祭り!昨年やんなかったもんな!
日和 うそー!何やるんだろー!気になるね!
美代子 ねー!
柿原先生は、職員室に貼られた空祭と書かれたポスターを見つめていた。
柿原先生 また何て言う風の吹き回しかしら。あの騒がしいだけが取り柄みたいな男が来るなんて、、。
・・・
陽光先生 はーい!皆さん、各テーブルどこでも良いので席に着いて下さい!
陽光先生のいる教室には、大きな黒色の液体がたっぷり入った水槽が10個のテーブルに置かれていた。そして、先生が立つ教壇の前にあるテーブルにはやたらと細長い水槽が置かれていた。
達也 何だこれ?
奈々 黒いねー!
美代子 深海魚かな?
陽光先生 まだ水槽には触らないでねー!
生徒達が水槽を怪しげに見ながらもそれぞれのテーブルに座った。
陽光先生 では始めますよ!今日の授業は光を出す力を皆さんに鍛えてもらいます。夏組の主な力は3つ。光を操る力、子どもの願いを叶える力、太陽を創る力です。どの力にも必要なのが光です。今回皆さんのテーブルに用意した水槽は、特殊加工職人さんが作ってくれた物です。この中には、深海生物が泳いでいます。液体が黒いのは、深海の状態に似せる為です。間違っても水槽には指1本触れないこと。水槽の中は深海と同じ水圧にしてあるので、指を入れたらどうなるか想像つきますよね?
権太 こえーよ。
陽光先生 まずは、水槽の中に何がいるのか?そこに興味を持ったら、手を水槽にかざして見て下さい。知りたいと言う情熱を手に集中させます。先生の目の前にある水槽を見てて下さいね!
そう言って陽光先生は、目の前に用意してある黒い液体の水槽に両手をかざす。すると、黒い液体が徐々に薄くなり始めた。
日和 なに?魚?長くない?
将生 どうなってるの?
美代子 深海魚だ!
陽光先生 はい!水槽の中にいたのはラブカと言う深海魚ですね!では戻します。はい。
生徒 スゲー!!
生徒 めっちゃ気持ち悪い顔してなかった?
陽光先生 今回は、テーブルに座ったグループ毎に協力して水槽の中身を見ながら、その生物をこのプリントにスケッチして下さい!、出来る所までで結構です!良いですかー?
生徒全員 はい!
各テーブルの生徒達は、先生のお手本を参考に水槽に手をかざしていた。声を出しながら手に力を入れる者。目を瞑って念を送る者。両手で何かを発射しようとする者。それぞれが試行錯誤していた。日和は、美代子と権太、そして将生の4名で水槽を囲んでいた。
日和 これには何が入ってるんだろ。
権太 俺こえーよ。何で見えなくしてんだよー!
美代子 バカね!そんな事したら授業の意味ないでしょ!
将生 光出せって言われてもなぁ。
早速、美代子と日和が両手を水槽にかざしてじっと黙って見つめていた。男子チームは、自然とプリントとペンを手元に準備し水槽を見つめる。だが、一向に変化は見られない。他のグループからは諦めの声がぽつぽつとあがってきた。
カチッ。
陽光先生が教室の電気を消し、窓のカーテンを閉めた。
達也 暗くなった!
生徒 え?
陽光先生 余計な事は考えない!グループ皆の意識が一致しないと何時まで経ってもできないわよー!
美代子 よーし。見せてやるわよ!深海ちゃん!
日和 うん!
環境が少し変わったからか、生徒の話し声が少なくなった。静けさの中、外からは鳥の囀りと風の音が微かに聞こえてくる。日和はかざす手の内にほんのりとした熱さを感じていた。その熱は徐々に指先まで広がる。すると、薄い柔らかい明かりが水槽の中の黒い液体を薄めた。
日和 わっ。光った。
権太 おぉ、光った!
美代子 権太黙って!
他のグループの黒い水槽が徐々に薄くなる。部分的に明るさを発するグループも出てきた。
美代子 日和どう?きてる?
日和 きてるきてる!明るくなってきた。
陽光先生 皆さん、電気を付けますよ!
カチッ。
すると、半分程のグループは水槽の中身がほとんど見える状態にあった。日和達のグループはかろうじて中身を確認できる部分が出ていた。
日和 うわぁ!
美代子 かわいいじゃん!何コレ?
権太 タコの赤ちゃん?
将生 にしては顔がブサイクっぽいような。
陽光先生 うんうん。ここのグループはメンダコね!深海魚よ!、早くスケッチスケッチ!
権太 やばい!そうだった!
そして、日和達のグループは男子チームの絵心のないスケッチに呆れながらも無事に課題を達成した。先生からは、徐々に難易度が上がるので今日出来たグループは感覚を忘れないうちにレポートに書いて提出するよう宿題が出た。美代子はメンダコに心奪われてしまった様で、しばらくタコを使った食堂メニューは食べれないと漏らしていた。
・・・
日和は権太と美代子と食堂でお昼ご飯を食べていた。日和はテーブルの側に貼ってあった空祭のポスターを眺めていた。大きな文字で空祭と書かれ、その文字はステンドグラスの様にきらびやかにデザインされていた。その文字の右上に変な一文があった。
日和 魔人凱旋。魔人?
美代子 午後の授業何だっけ?
権太 技術!たしか西棟の3階、だよな?
権太はカバンの中からガイダンス冊子を取り出し確認していた。春の陽気に誘われて、食事を終えた3人は食堂のテーブルで昼寝をしていた。そこに、白い服を着た男性が日和達のテーブルを横切った。
月来 君は、、あの時の少女かな?
・・・
日和が食堂で目を覚まし時間を確認した。午後の授業開始5分前。慌てて2人を起こし、急いで技術室へと走った。
権太 ひえーーーー!あっぶねえ!ギリギリセーフー!
美代子 もう無理。さっきのホタルイカが、出そう。
日和 やめて美代子!早く座ろ。
日和達は技術室の空いていた前の席にバラバラに座る事になった。そしてすぐに前の扉からこんがりと焼けた肌の先生が現れた。
佐久先生 はい。授業を始めます。初めに私が2年生からの技術指導をする佐久と言います。よろしくお願い致します。
生徒全員 よろしくお願いします!
佐久先生 今日から皆さんに作って頂くのはこちら。エアーキューブと言います。
そう言って、佐久先生は教壇から生徒達に見えるよう小さな箱を上に掲げた。前の席に座る日和達はまじまじとその小さな箱を見つめた。
佐久先生 枠組みはカラクリの木を細く切り、何度も漆塗りをして作ってある。そして、この箱の6面には透明なプラスチックパネルに特殊加工職人の影虎さんが空壁をコーティングしている。今は只の小さな箱に見えるが、皆さんが高学年になればなるほど神秘的な箱になるだろう。今日はまず初めに、カラクリの木を同じ1辺の長さに切り揃え、紙ヤスリで表面を綺麗にします。その後、この漆塗りの1回目を行います。漆塗りの工程は全部で10回。それが終わったら、透明パネルとカラクリの木を組み合わせて箱を作ります。流れは大体わかったかな?
生徒全員 はい!
佐久先生 では前と後ろに道具と材料が置いてあるので、自分の机に集めて作業をして下さい。ゆっくりで良いので怪我の無いように!あと漆は手に付くと被れるので、取扱いには気を付けて下さい。
佐久先生はエアーキューブの見本となる白い箱を生徒の机に1つずつ置いていった。生徒達はそれを見本にして、カラクリの木をノコギリで切り揃えていく。技術室の中は、ノコギリや紙ヤスリで削って粉となったカラクリの木の香りが広がっていた。切り揃えられていくカラクリの木を今度は広い廊下に並べ、漆塗りを始めていく。黙々と作業する生徒達。順調に1回目の漆塗りが終わり、一旦技術室に戻り席に着いた。
佐久先生 はい。お疲れ様です。今日から3日置きに漆塗りの作業を行うので、今日の作業はここまで。先に、エアーキューブのお話をしておきます。さっき話した通り、作る作業は単純です。難しいのは作った後。このエアーキューブを1人1人が情熱を込めて育ててもらいます。例えば、
そう言って、佐久先生は自分のエアーキューブを手の平に乗せ生徒達に見えるように前に伸ばした。
佐久先生 キューブの中の色を変えれたら。
すると、透明だったエアーキューブの中の色が青く変わった。そして、青から緑。緑から赤。赤から黄色。グラデーションになりながら次の色へと変化していく。
生徒達 おー!!
佐久先生 皆さんは若いから知っているかと思いますが、パソコンに画像を取り込んで立体的に印刷する3Dプリンター。あれがこのキューブの中でできるとしたら。
黄色だったエアーキューブが上部から段々と透明に戻っていく。その時、同じくしてキューブの中の上部から姿を現してきたのは。綺麗なウグイス色をしたメジロの姿だった。
将生 マジシャンみたいだ!
佐久先生 大事なのは皆さんの情熱の力です。情熱を磨けば磨くほど、このキューブの可能性も広がります。、もし、このキューブの中に街を作ることが出来たら。もし地球の様な惑星を作れたら。銀河系や宇宙を作れたら。このキューブの枠を越えられる時が来るかもしれませんね。今日はここまでにしましょう。お疲れ様でした!
生徒達 ありがとうございました!
日和 へー!すごい綺麗な鳥だったなー!
美代子 私、あれでご飯めっちゃ作りたい!
権太 何でいつも食べ物なんだよ美代子は!
美代子 じゃあ権太は何作るのよ?
権太 鳳凰に決まってんじゃん!
美代子 は?
権太 あ!美代子鳳凰知らないんだ!残念だなー。うんうん。しょうがないしょうがない!
美代子 知ってるわよ!
日和 危ないよ!2人ともちゃんと前見て歩く。
・・・
日和達のクラスは、5月にかけて光を出す授業では、光のコントロールを出来る様になる為、水槽に隠される内容が事細かになっていった。生き物や食べ物。英語で書かれた新聞を和訳せよ。等で生徒達は苦しめられていた。その頃技術の授業では、エアーキューブが完成した。それからは、生徒達が空き時間を利用してキューブ内を変化させて楽しんでいた。季節は梅雨を迎え、6月の雨模様の中、日和達が受ける光の授業は次の段階を迎えていた。
陽光先生 皆さん!今日は光を細かく操る力を身に付けたいと思います!、これから皆さんには星座が1つ書かれたプリントを配ります。
陽光先生は束になったプリント用紙を前の席に配っていく。そのプリントの表面は、プラスチックシートの様な素材でツルツルとしていた。
陽光先生 手元に届いたら、そのプリントをトントンと2回タップして見て下さい。皆さんの目の前に小さな星達が現れると思います。
権太 うお、ほんとだ!
日和 ちょっと動いてる?
陽光先生 出ましたね。その星達は星座の形にはなっていません。なので皆さんには、プリントに書かれた星座の図を頼りに光の糸で星を繋いでいって下さい!、出来たら次の星座プリントを渡します。では教室の電気を半分だけ消します。
カチッ。
教室が少し薄暗くなり、生徒達が座る机の上の星達が美しくキラキラと泳いでいた。星に触れるとゆらりとかわされる。少し星粒の大きさにばらつきがあるのを見つけた生徒もいた。
美代子 え?てんびん座って。ムズくない?
日和 私は、いるか座。可愛いかも!
権太 おいおいおいっ!、鳳凰座なんてあったのかよ!良いじゃん1発目に相応しいねー!
日和はプリントの星の位置を確認し、星粒の違いに気付く。起点となる大きな星を探し、人差し指で見つけた星に触れる。
日和 うわぁ。面白い!少し周りの星達が離れた。で、問題は次の星。、これかなー。
日和は次のポイントとなる星座の星を狙い人差し指をなぞるように動かした。しかし、光の糸は出ずに起点となる星は違う位置にずれてしまった。
日和 あーー。ダメかー。
達也 先生!糸が出ませーん!
奈々 私もー!!
続々と上がる生徒達の声に陽光先生はヒントを出した。
陽光先生 光の糸を出そうとすると中々出ないと思いますよ。星と星の間のバランスを整える事に意識すると上手くいくかもしれませんね。
その後、先生のアドバイスを受けるも生徒達は中々先に進まなかった。あっと言う間に時間は過ぎ、誰も星座を完成するまでには至らなかった。只権太1人を除いては。
日和 おぉおぉおぉ!、権ちゃんすごいじゃん!!
美代子 何?権太もしかして出来てんの?
権太 出来ちゃった。いつの間にか集中してたみたい。
美代子 権太が作ったのって、鳳凰座。これが鳳凰って言うんだー!
権太 やっぱ美代子知らなかったんだろ?
美代子 は?
権太が紡いだ鳳凰の星座線。完成した星座線の上には綺麗に羽ばたく鳳凰の姿が半透明に宙に飛んでいた。先生は教室の電気を全て消し、鳳凰の姿を全員に見えやすくした。すると、生徒達からは感動の声と拍手が沸き起こった。
・・・
今年の梅雨明けは例年より早く。夏の暑さが生徒達を襲う。7月の日和のクラスは、エアーキューブのスキルアップと星座作りに邁進した。日和のエアーキューブには、歪な白い球体を作り出せる状態まで進んでいた。権太の星座作りは上達に拍車がかかり、88の星座をクラストップで完成させていた。夏の暑さも終盤を迎えた8月。夜空に浮かぶ月には、円盤型の黒い影がビュンビュン音を鳴らしながら飛んでいた。その月を、森の中にある大きな石の上で速水先生が見上げていた。
速水先生 どっから現れやがった。連絡もなしに。
バサバサバサバサッ!
速水先生の回りに無数の夜の鳥が現れた。
速水先生 白取。賑やかなやつが帰って来た。夜空と校内の警備を強化しておけ。
白取 かしこまりました。
速水先生は夜の鳥達と共に森の闇へと消えていった。
・・・
8月22日。空祭当日を迎えた学校は朝から賑わいを見せていた。日和達は早起きをして寮の外に出た。
権太 あ~~~!眠い!!!
美代子 やっとこの日が来たわ!どこから行く!?
日和 もう人がこんなに沢山。出店は先輩達が色んなの出してるみたいだし。他の催し物は自由参加。どうする美代子ー!!
美代子は早速、春エリアにて肉挟み饅頭大食い選手権と掲げられたプラカードを見つけた。
美代子 やばい。何よ肉挟み饅頭って。そそられるじゃない!!
日和 何?そんなのどこに?
美代子 ごめん!2人共!私先に春エリア行ってくる!
日和 ちょっ!美代子!て早いなー。権ちゃん。2人でゆっくり回ろっか。
その時、権太はあくびついでに遠くの空を見た。その先には、鮮やかに変わりゆく空の景色があった。その側には、大きな気球が浮かび、秋エリアにて色花火フェスティバルと気球から下がる垂れ幕を読んだ。
権太 綺麗な色の空だー!、ちょっと俺あっちのやつ見てくる!
日和 あっちってどっちよ?、結局自由行動じゃん!、もーう。別にいいけどー。、ん?何ーあれ?
日和の視線の先に、冬エリアにて光のアーチェリーと書かれたプラカードがあった。全く聞き慣れない言葉だったが、1人でも出来そうな催し物だと思い日和は冬のエリアまで向かった。学校の景色はお祭り一色に様変わりしていた。お祭りの提灯はフワフワと浮かび、広場や校道には美味しそうな屋台。後で美代子達と合流したら回りたい所をチェックしながら歩く。朝の眠気覚ましには良い運動だったと言わんばかりに歩いた先に光のアーチェリー会場と書かれた会場を見つけた。
日和 あったあった!もう人が凄いな。
・・・
権太がいる秋エリア。そこに聳え立つのは茜色の瓦屋根が並ぶ秋のお城。調度その前方に色花火フェスティバルが催されていた。今まさに、1人の生徒がパチンコに色玉を引っ掛け思い切り引っ張っていた。
権太 ここだここだ!、入口はどこだ?
案内人 お!そこのオカッパの少年!やってみるかい?
権太 あ?、俺の事ですか?、まあ、あの空の色が変えられるんですか?
案内人 そう!あそこにいらっしゃる色玉職人の矛盾さんご指導の元。花火の様に弾ける色玉を作れるまたとないチャンスだよ!
権太 へー!色玉職人ねー。俺もやります!案内人 素晴らしい!ではこちらへどうぞ。
そう言って案内人の男性は権太を黒いカーテンで囲われたテントの中に通した。中には色花火を作る為に用意された色とりどりの粉が試験管に入れられ壁一面に並べられていた。その壁を背にして、案内人が言っていた職人さんが生徒に1人1人指導していた。
案内人 矛盾先生、1名希望者入ります。よろしくお願いします!
矛盾 おう!じゃあそこの端っこの席が空いてるから、そこに座ってくれ。
権太 はい。
権太は、空いていた少し低い木の丸椅子に座った。その目の前には使い込まれた小さなテーブルがあった。そのテーブルの中央にはフラスコの様な物が固定されていた。そして、権太の前に矛盾先生が椅子を持って目の前に座った。
矛盾 よいしょっ。じゃあ始めるぞー。まずお前さんの名前、聞いとこう。
権太 お願いします。えっと、権太です!
矛盾 よし。権太!、今から君にしか作れない色玉を作ろうや!、んで、まず道具の説明な。この透明な首が細くて下がまん丸のフラスコって理科室とかでみるやつだな。それとはちょっと違ってな、これは空壁で作った空壁玉だ。これの首根っこがちょん切れてな、この下の玉が空に打ち上がんだ。俺の後ろの壁にある自然色の粉をこの空壁玉に権太のバランスで入れていく。この細長い棒な、穴が開いてて口の所が広がってんだろ?ここに粉を少量入れれば、空壁玉の細かい部分にだけ粉をセット出来るって理由だ!道具の説明は以上。わかるか?
権太 面白そう!大体わかりました!
矛盾 そしたらな。空に飛ばすんだ。まずイメージをしろ。どんな色で、どんな風景で、どう人々に感じてもらいたいか。ゆっくり考えてみ。しばらくしたらまた来る。
そう言って矛盾先生は他の生徒の色玉作りを指導しに動いた。権太は考えた。腕を組み壁に並べられた沢山の自然色を眺める。試験管の中は様々な色だけでなく、小さな固形物が入っている物もある。葉っぱや花、輝く石や結晶。珊瑚や星等もあった。
矛盾 ほい。権太!決まったか?
権太 決まりました!
矛盾 言うてみ!
権太 花火とオーロラの輝きを混ぜたいです。
矛盾 ガハハハハッ!、なるほど~。夏の花火と冬のオーロラとな。面白そうだな!ちょっと待ってろ!
矛盾先生は直ぐ様、壁にある数種類の試験管を取り集めた。そして着ている着物の懐から巾着に入っていた小さな薄いベージュ色の玉を権太のテーブルに置いた。
矛盾 おそらくこの自然色達で出来ると思う。あと、コレはな、小さい玉だけど中には火薬が入っとる。コレを空壁玉の中心に入れるのを忘れずにな!、色のバランスは権太のセンスだ!やってみ!
権太 ありがとうございます!
権太は、矛盾先生が用意してくれた自然色を空壁玉に入れていく。空に浮かぶ自分のイメージを頼りに、紺色や黄色、赤色や緑色。細長い棒で細かい所を描いていく。小さな星は火薬玉の周りにまんべんなく散りばめる。権太は額の汗粒が気にならない程に熱中して取り組む。
権太 ふぅーーー!、出来たー。
矛盾 終わったみたいだな。、権太。自分の手、嗅いでみな!
権太 え?、、あっ、良い匂い。
矛盾 そうだろう。、じゃあ、最後は共同作業よ。権太は空壁玉の細い首の先を指先で摘まんで、右に回してくれ。俺が玉を掴んでる。いいか?
権太 はい。
権太は右手の親指、人差し指、中指の3本で空壁玉の首先を摘まんだ。そして、ゆっくりと右に回す。すると、フッと指に感じていた重たさがなくなった。
矛盾 上手だ権太。よっほっとっ。最後にこうして空壁をうまく整えてあげれば。ほい!権太の色花火が完成よ!
権太は矛盾先生から両手で完成した色花火を受け取った。玉の側面は少し白く膜が張った様になっていた。空壁玉の中に詰め込んだ自然色がキラキラと輝いていた。
矛盾 じゃあ、俺の仕事はここまでだ。早く外行って空に飛ばしてみな!
権太 あ、ありがとうございました!
そして、黒いカーテンが空いている出口から外へ出る。空からは既に真夏の日差しが降り注いでいた。
権太 うわっ!あっち~な!もうこんなに暑くなってたのか。
案内人 色花火が出来た方はこちらへどうぞー!
権太 あ、ここで飛ばすんですか?
案内人 お、完成したんだね。はい。こちらのパチンコの玉受けに色花火を引っ掛けて。
権太 おー!、これは、歓迎会の時に校長が使ってたパチンコ。
案内人 しっかり離さないようにね。飛ばす位置を決めたら、なるべくゴムいっぱいに引っ張って天高く飛ばす!OK?
権太 了解です!
権太は玉受けに色花火をセット。青空に向かってパチンコを構えた。ゴムをぐぐぐっと力強く引っ張る。気付けば色花火フェスティバルの打ち上げ会場には人だかりが出来ていた。権太は力の限りゴムを伸ばして、青空目掛けて右手を離した。
ビュンッ!、、、、、パチン!
生徒 ぉおおお!青空に夜空が出てきた!
生徒 綺麗。カラフルな花火~!
生徒 おっ!おーー!!花火が消えたら今度はオーロラだ~!
生徒 涼しげに感じるねー。銀色のオーロラなんて見た事無い。
青空に現れた夜空の中に美しく花火と銀色のオーロラが夏空を彩る。空を見上げる生徒や先生達から歓声が上がっていた。
権太 おいおい何だよすげえな矛盾先生。色玉職人って何者だよ、超おもしれーじゃん!!
・・・
美代子のいる春エリア。蝶があちこちで蜜拾いをする中。肉挟み饅頭大食い選手権の特設会場では、出場エントリーを済ませた美代子が横長のテーブルに座っていた。
生徒 さっきの見たー?
生徒 え?
生徒 あっちの空に凄い綺麗な花火が上がってたんだけど。
生徒 うそー!後で行ってみよ!
案内人 さあ!まもなく空祭名物、肉挟み饅頭大食い選手権が始まります!今回は立候補者10名の皆さんに出場して頂きました!皆さん、勇気ある大食い挑戦者達を大きな拍手をお願いします!
パチパチパチパチパチパチ!
テーブルに横一列に座る出場者達。胸には1から10までの番号が入ったゼッケンを付け、開始の合図を待っていた。美代子はゼッケン10番を付け、テーブルの一番端に座る。
美代子 良いじゃない。興奮してきたわ!見るからにハンバーガーね。大した事ないわ!
案内人 では、会場を埋め尽くす程の大賑わいになってきた所でルール説明をしたいと思います!制限時間30分、寮を支える食堂の皆さん手作りの肉挟み饅頭1個150g。バンズに挟まれた肉汁たっぷりの手ごねハンバーグ。その下には身体の事を考えて、キャベツの千切りを敷いてあります。味を変えたい場合の調味料は自由に使ってOK。飲み物は事前に水かお茶のどちらかを出場者の皆さんに選んでもらっています。一番多く食べた優勝者には、寮の食堂特上メニューを1年間ご提供させて頂きます!さあ、食堂の皆さんの準備が整いましたので、いよいよ始めたいと思います!!それでは肉挟み饅頭大食い選手権30分勝負!スタート!!!
出場者全員 いただきます!!
拍手と歓声の中、大食い選手権が始まりを告げた。
青柳リーダー 桜餅先生!こっちです!
桜餅先生 あ~。いたいた。人の波だよ。
羽舞リーダー 頑張ってますよ美代子ちゃん。
桜餅先生 おー!良い食べっぷりだ!
青柳リーダー 美代子ちゃん、夏組ですけど春の性質も併せ持つ器用な子ですよね。
桜餅先生 そうなんだよ。夏組にはもったいない!、凧上げのスキル表は学年トップクラスでクリアしてるし。
青柳リーダー 金の蝶は、私があげた火の花の香り玉をうまく使って捕まえたんですね!
桜餅先生 え!?そうなの!?、青柳リーダーに私があげたあの火の花?
青柳リーダー ええ。先生から火の花を貰いましたって矛盾先生に話したら、香り玉にすると芳醇な良い香りになるんだぞって言われて。作ってもらったんですよ!
桜餅先生 余計な事を、、、あのジジイッ!も~!!!
羽舞リーダー うるさい!
桜餅先生 ハイ。
羽舞リーダー 美代子ちゃん頑張ってる!
桜餅先生 ハイ。
羽舞リーダー 美代子ちゃん応援して!
桜餅先生 、、、。美代子ちゃんガンバレー!!!、声大きいかな。
羽舞リーダー もっと声出して。
案内人 さあ!残り15分!未だ誰も手を止めずに肉挟み饅頭を頬張る!!会場には上級生達が作る屋台料理の香りもして参りました。、ん?、ここでゼッケン10番の選手の手が止まりました!、大丈夫か!一点見つめだ10番!!
美代子 、、、。
案内人 ダメだ!10番キラキラだ~!!、早くも1人リタイアとなりました!
青柳リーダー え!?美代子ちゃん大丈夫かな?、ちょっと私行ってくる!
羽舞リーダー 怪我しないでね!
青柳リーダーは人の波を掻き分けて、特設会場の脇で休憩している美代子の元に向かった。
美代子 あーー。負けた~。、、?良い香り。あれ?
青柳リーダー 美代子ちゃん大丈夫?
美代子 青柳リーダー!、何でここに?
青柳リーダー 美代子ちゃんが参加するの見つけて桜餅先生と羽舞リーダーと一緒に応援してたの!、そしたら美代子ちゃん急に、
美代子 ありがとうございます!、いや、あの~。ハンバーガー食べてる時にフワッと焼きとうもろこしの匂いがして。それで、このまま食べ続けたら焼きとうもろこし食べる分入らないなと思って。そう思ったら出ちゃいました。
青柳リーダー そうなの?、身体が大丈夫なら良いけど。良かったー。
美代子 心配させてすいません(笑)。
・・・
日和のいる冬エリア。光のアーチェリー会場は縦に長い会場だった。日和は会場の案内人に声をかけると、アーチェリーが沢山並ぶコーナーに誘導された。
案内人 この会場は、このアーチェリーと、性質変化する矢を使う的当てゲーム。使い方を教えるね。はい。これがアーチェリー。
日和 うわ!ちょっと重い。
案内人 重いでしょ!、でこっちが矢ね。
日和 あ、柔らかい。細いですね!イメージしてた矢と違う。
案内人 そう!この矢は持つ人の性質。えっとー、あなたは何組?
日和 あ、夏です!
案内人 夏組で鍛えてる性質の力が矢に伝わって変化するの。だから、一般的な矢と比べると細くてしなる。この会場の右半分は練習エリアだから、何回打っても大丈夫。コツを掴んだら左側のゲーム会場で打つ。ここまで大丈夫?
日和 はい!
案内人 まず私が見本を見せるから見ていて。
案内人は、20メートル程先にある丸い白い的に対して左腕を前に半身になった。左手でアーチェリーを構え、右手に持った矢をアーチェリーのワイヤーに引っ掛ける。そして、左腕を伸ばし的の位置に固定。右腕は肘を曲げ矢を引っ掛けたワイヤーを引っ張る。一瞬の間の後、矢は放たれた。
ヒュンッ!、パキンッ!!
丸い的に氷った矢が刺さっていた。
日和 え?すごい。矢が氷ってる。
案内人 ね。私は冬組で、性質が氷なの。だから飛んだ矢は手元を離れると氷の矢に変わる。、じゃあ、やってみる?
日和 はい!
そうして、女性の案内人指導の元に日和はアーチェリーの練習をした。アーチェリーが重たく、位置の固定が難しい。しなる矢を持つ手の力加減がわからずワイヤーから矢が外れる。日和は手こずりながらも20回程矢を打つ練習をし、何とか的のある位置まで矢が飛ぶようになった。
案内人 あなた上手よ!、ゲームやってみる?
日和 良いんですか?、ここまでやったらやりたいです!
案内人 よし。やろう!こっちよ!ルールは簡単。3回矢を打って、その内多く割った風船の数が記録されるの。距離は練習と同じ20メートル。
日和 風船なんだ。
案内人 ここよ!ここで並んで前の人が打つ流れを見ていてね!私は練習の方に戻らないとだから。頑張ってね!
日和 あ、はい。ありがとうございました!、結構人見てるじゃん。、風船は、あれ?、黒い風船が5個並んでる。
日和の立つ場所から20メートル程先に用意されていたのは、横一列に並んだ黒い風船。同じ高さにある5個の風船は、練習場にあった白い的より少し高い位置にあった。男性の案内人がゲーム進行をしていた。
案内人 3回終わって多かったのは2個でした。ありがとうございました!、では次の方こちらへ!
日和 あ、はい!
案内人 では、この白い円の中に入って下さい。この円から出なければ、立つ位置は調整可能です。矢は3本です。では、アーチェリーと最初の矢を取って下さい!
日和 はい!
白い円の側に用意された赤色のアーチェリー。そして、日和は1本目の矢を取りアーチェリーを構える。目線の先には5個の風船。
案内人 黒い風船の難易度を上げましょう!お願いします!
日和 え?
すると、黒い風船の後ろに同じ黒い壁が男性達によって取り付けられた。いきなりゲームの難易度が変わり、観客や挑戦する生徒達の賛否両論の声が歓声とブーイングを巻き起こす。
案内人 では、1本目です!
日和 マジか。見ずらいなー。
日和は息を吸い、ゆっくり吐いた。太陽の光を少し反射する風船にアーチェリーを向ける。右手に持つ矢をワイヤーに引っ掛けた。息を殺す。右肘を曲げワイヤーを引く。放った。
ヒュンッ!
日和の手元を離れた矢は、黄色い光を纏い勢い良く風船を目掛けて飛んだ。
ダンッ!
案内人 残念!風船に当たらず!
日和 もうちょい上かー?
案内人 さあ!2本目の矢を取って下さい!
日和 ふーー!、何で私の番で難易度上がるかなー。
日和は2本目の矢を手に取った。大きく深呼吸をし、白い円の中に入る。さっき外した位置は風船の下。アーチェリーの位置を少し上げ、矢をワイヤーに引っ掛ける。日和は鋭い眼光で見えずらい風船の姿を見つめる。
ヒュンッ!
放たれた矢は1本目よりも強く白い光を帯びる。しなる矢は少し放物線を描き黒い風船を目掛けて飛んで行く。
パンッ!
観客 おーーー!
パチパチパチ!
案内人 これはお見事。1個割れました。そして、次が最後の矢です!
日和 やった!当たったじゃん!
割れた黒い風船は右から2番目だった。会場スタッフの男性が新しい風船を割れた風船と交換する。相変わらず夏空の日差しが照り付ける。日和は額の汗をハンカチで拭う。
日和 暑い。
案内人 それでは最後、3本目の矢を取って下さい!
観客の中に、白い服を纏う数人のグループが日和のアーチェリーを見ていた。
月来 冬組の考えそうな催し物だ。
日和 でも割れて2個じゃない?、私の矢が光の性質なら。矢がしなって曲がんないかなー。光ってそもそも曲がるのかな?
日和は小さな声でそう呟きながら3本目の矢を手に取り円の中に向かう。矢を持ち左右にしならせてみる。日和は2個は狙いたいと思い、右から2番目と右端の風船の間に放つイメージでアーチェリーの位置を定めた。心では矢が曲がり、右から一気に割れて欲しいと願っていた。息を整えて、矢をワイヤーに掛ける。ゆっくりとワイヤーに力を掛け、キリキリとワイヤーが音を鳴らすまで引っ張った。
月来 良い発想だね。光は一直線にしか進まない。、そんな事はない。光は曲がるよ。
日和は右目を瞑り、矢を放った。
ビュンッ!
放たれた矢は白い光を放ち。さらにその回りを黄色い光が纏った。光の矢は一直線一番右の風船を狙う。
日和 曲がれー、曲がれ曲がれ曲がれ!!
クンッ!
すると鋭く飛んだ光の矢は、一直線の軌道から右に膨らみ右端に浮く風船の真横を貫いた。
パパパパパンッ!!
日和 うそっ!
案内人 え、、、。
観客 5個全部割れてるよ!
観客 すごーい!!
観客 何今の矢ー!かっけえーー!!!
日和の放った光の矢は見事5個の風船を全て貫いた。会場は歓喜の声に包まれ、会場スタッフと案内人達を唖然とさせた。
日和 曲がったよ。、、えーーー?
白い服を纏う数人のグループは、いつの間にか日和のいる会場から姿を消していた。
・・・
日和、美代子、権太の3人は、出発前に別れた時の集合場所である夏エリアの食堂に戻る事にした。
美代子 あー。もったいない事したなー。あのハンバーガー結構美味しかったのに。ショック。、あ!日和おかえり!
日和 あー!ただいま!何ー?大分お疲れね!
美代子 うん。ハンバーガー大食い選手権行ってたの。でも、誘惑に負けてちょっと戻した。
日和 そうだったのー!そりゃ疲れるよ。
権太 やあやあ!ただいま戻ったぞ!
日和 権ちゃんおかえり。なんか座ったら落ち着いてきた。
権太 やっぱ中は涼しいな~。お昼食べてないと思ってどら焼き持ってきたぞー!
日和 おー!いいね。それ位だったら私食べれる!、美代子は?
美代子 私は今はいいー。
権太 そしたら美代子の分のどら焼きは俺が預かっとく。
美代子 うん。
そして、日和と権太はどら焼きを1個ずつ食べて身体を休ませた。3人共、朝早くから張り切って外で動いていた為、また外へ出て動き回る体力がなかった。そうして、涼しい食堂で考える事を止めた3人。気が付けば夕暮れ時になっていた。
上級生 ほら!君達も西棟前の特設会場に行くよ!もうすぐ夜の部の魔人祭が始まっちゃうよ!
日和 え?、魔人って。ポスターにあったな。
権太 あー。もう外も暑くないかな。
美代子 グゥーーーー(お腹の音が鳴る)。はっ!?焼きとうもろこし食べなきゃっ!皆!早く行こう!
上級生に言われてやっと寮の外へ出た3人。日差しはまだ強いものの、少し風が心地よかった。夏エリアをちゃんと見ていなかった3人は、西棟前に立派な客席とやぐらが出来上がっていた事に驚いた。美代子は、魔人祭が始まる前にと急いで焼きとうもろこしの屋台を探しに消えた。日和と権太は美代子が分かりやすい様にすぐ近くにあった客席に座って夕焼けに染まる学校を見ていた。
・・・
魔人祭開始時刻の18時30分。少し薄暗くなってきた夜空に綺麗な赤色の提灯が並んでいた。西棟前の特設会場は、既に1年生から6年生、職員の先生達が席に座って待っていた。
タッタッタッタッタッ!
日和 ん?、美代子!こっち!
美代子 あっ!良かったー!買ったは良いけど合流できるか考えてなかった!
権太 いやいやいやいや!、それより美代子、もしかしてそれ全部とうもろこし?
美代子 うん。あるだけ全部下さいって貰った。
日和 両手の袋いっぱいだー。とりあえず、座って座って。
陽光先生 教頭。もう夜の部開始時間ですけど、まだ来ないですねー。
柿原先生 そうですねえ。何かあったのかしら。連絡取ってみましょうかねえ。
権堂校長 私はこの魔人祭を見ながらりんご飴を食べるのが好きでねえ。カプッ。
桜餅先生 教頭、別エリアに間違って行ってないか確認してきましょうか?
柿原先生 いや、あの人はそんな間違いをするはずがないでしょう。
間人先生 教頭、今日の耳飾り、とてもお似合いですよ!
柿原先生 はぁあっ!、びっくりした。間人先生!、あなたってひ
間人先生 お待たせしました!!、もう準備は整ってる感じですかー??
柿原先生はムッとした表情を見せる。職員席から突如現れた男。紺のスポーツウェアをピッチリと全身に身に付け、水色の法被、草履、スキンヘッドにハチマキの出で立ちで大きな声で皆を驚かせた。
間人先生 うんうんうんうん!了解了解!、客席満員に食べ物飲み物も揃ってる!、後は僕の登場待ちだと!、そうだったのかオッケー!!
そう言うと間人先生は職員席から消え、特設会場中央に設置された大太鼓が用意されたやぐらから姿を現した。
間人先生 ヤッホー!!皆さんお祭りしてるー!!?
上級生 来たぞ!魔人だ!!
上級生 間人先生~!!カッコイイー!!
上級生 おー!!!
上級生 間人ーー!!!
上級生 久しぶり~!!
日和 あの人が魔人なんだ?
権太 普通じゃん!
美代子 もぐもぐもぐ。
間人先生 大変長らくお待たせ致しました。只今より魔人祭を開催致します!!、では、僕の音組部隊である12音符隊!カモン!!
バサッ!
すると、やぐらの足組を巻いている紅白幕の中から12人の男女が現れた。そして、やぐらの周りに用意された12個の太鼓の前に立ち、手に持つバチを振り上げた。
ドンドンドンドン!ドドン!ドドン!
間人先生 この学校に来るのも何年ぶりー?世界の音集めに奔走するが余りに母校を忘れる所だったよ!
柿原先生 あなたは全空協会のプロジェクトに選ばれたから海外出張を校長がお許ししたのよ。お仕事です。
すると、瞬時にして間人先生が柿原先生の真横に現れた。
間人先生 わかってますとも!教頭にお土産持ってきてます!
ビュンッ!
直ちにやぐらに戻る間人先生。
間人先生 ではでは!、今夜の魔人祭のリクエストを募集致しまーーす!!魔人の大きな耳に届く声でお願いします!!
上級生 魔人太鼓!
上級生 太鼓太鼓ー!!
上級生 魔人ー!太鼓ー!!
間人先生 うんうんうんうん!、ちゃーんと聞こえたぞ~!皆やっぱり魔人太鼓が好きなんだな~!!、しょうがないな~。今回だけの特別大サービスだからな~!!!そうと決まれば、魔人太鼓を盛り上げる競技は。ラッキーだな新入生の1年生諸君!!、暑い夏を盛り上げられるかどうかは君達1年生にかかってるんだぜ~!!全員。空を見上げろ。競技はこれだ!!
会場にいる全員が夜空を見上げると、そこには大きな画面が現れた。そして、その画面には動く間人先生とけん玉が表示された。
間人先生 けん玉たすきリレーだ!!!、ルールは簡単!魔人の玉をけん玉の大皿に乗せて走る。そして、次の走者へバトンタッチする際にけん玉に乗せた玉を次の走者のけん玉へ移す!組対抗の全員リレーだ!1年生の皆わかったかー!?、じゃあ、1年生はそれぞれの組リーダーの指示に従って移動開始だ~!!
夜空に映された画面はキラキラと星屑となり消えていった。新入生の1年生達は、ざわざわしながら客席の上級生達に応援されながら組リーダーの誘導の元、やぐらを中心にして取り囲んだ白線の引かれたトラックに移動する。
間人先生 けん玉たすきに使うのは、僕の大事な大事なネックレスちゃん!はい!青柳リーダー受け取って!
そう言って、間人先生はけん玉サイズの玉が連なるネックレスから4個の魔人の玉を外した。やぐらの下で虫取網を構える青柳リーダーに魔人の玉が渡された。
間人先生 そして1年生を盛り上げるのはこの僕の魔人太鼓さー!!、もしも、けん玉たすきリレーを完走した組がいたとしたら。
上級生達 いたとしたらーー??
間人先生 魔人の負けを認めて夜空に花火を打ち上げる事を約束しよう!
上級生達 イエーーーーーーー!!!!
間人先生 良い情熱だ!、不完全な人間達が創った、不完全な空を楽しもうぜ!!!1年生準備は良いかーー!?
スターターの位置に着いた羽舞リーダーが、ジェスチャーで大きな丸を間人先生に見せる。
間人先生 位置について!よーい!
パンッ!!
羽舞リーダーの空砲でけん玉たすきリレーが始まった。春夏秋冬の組がそれぞれのけん玉に魔人の玉を乗っけながら危なげに走り出す。
間人先生 ハハハッ!始まっちまったなっ!、12音符隊の皆!我々も行こうか!?
そう言って間人先生は左右の太腿に差してある太鼓のバチを抜いた。
間人先生 ハッ!!!
ドドン!
ドンドン!ドドン!ドン!ドドン!ドドン!
間人先生と12音符隊の息ピッタリの太鼓演舞がけん玉たすきリレーを盛り上げる。
日和 そー言う事か!?
権太 ん?何が?
日和 上級生達があの人の事マヒトって言ってたけど。漢字はわからないけど、たぶんマヒトって漢字がマジンとも呼べるから魔人って呼び方なんだ!
権太 なるほど!日和頭良いな~、ん?、太鼓の音変わった?、この音楽。
日和 あ、本当だ!、この曲私の大好きなやつだ!!
美代子 もぐもぐもぐ。ん?、もぐもぐもぐ!
間人先生 僕の力を知らない生徒達が音の変化に気付いてきたかな!
陽光先生 あ~。そうそう!これが魔人太鼓の醍醐味よね!
速水先生 クッ!、この力だけは面倒くさいアイツも憎めない所なんだよなー。
権堂校長 カプッ。あっ、思いっきり行きすぎた。入れ歯が、
柿原先生 良い音色だわ。美しい湖にいる様ね~。、ううん、騙されないわ!間人って男は。、あっ!校長!大丈夫ですか!?
権太 俺の好きな曲じゃん!良いねー!テンション上がるなー!
日和 え?うそ!権ちゃんこの曲知ってるの?だって声優さん達が歌ってるやつだよ!?
権太 え?
上級生 違うよ!
日和・権太 え!?
上級生 これは魔人の力。魔人が叩くあの和太鼓の音は、徐々に変化し先生達や生徒達ひとりひとりが今聞きたい曲に変換して届く。魔人の変換和太鼓の力で、人間から発する「この曲が好きだ」と言う強い想い(電波)に変換させる音組特有の力なんだ。
日和 うそでしょ!?
権太 じゃあ今ひとりひとり違う曲を聞いてるって事!?
上級生 そう言う事!
間人先生の変換和太鼓の力に会場全員が圧倒され、一気に皆のモチベーションが上がった。けん玉たすきリレーはクラスの半分が走り終えていた。
春組走者 え?何?玉が何か変!
すると、春組走者が持つけん玉の白色の玉が突如強い光を放ち、白い玉は小さな蛇へと変化した。
春組走者 キャーー!
蛇に驚いた春組走者は持っていたけん玉を放り投げた。
間人先生 ハハハハッ!、君は蛇が苦手なんだなー!?、残念春組失格だー!!
トラックに落ちたけん玉と蛇。蛇はキラキラと光り、白色の玉へと戻った。
秋組走者 玉が変わるのかよ!、早く次に渡しちまおう!
すると、秋組走者の玉が七色の渦を起こし始めた。
パンッ!秋組走者の玉が弾けた。その瞬間、けん玉の大皿の上にドデカイ象が現れた。
秋組走者 うわぁああああ!!!
ドテンッ!
間人先生 小さいだけだと面白くないと思ってね~!、にしてはでかすぎちゃったかしら!!、残りは2組だぞー!!
夏組と冬組どちらとも、残りの走者は4名ずつとなった。間人先生達の太鼓を打つ音が強く大きくなってきた。
ドンドン!ドンドン!カッカッカッカカッカッカッカ!
ドンドン!ドンドン!ドドン!ドドン!
2組順調にけん玉を繋ぎ、両組最後のけん玉をアンカー達がもらった。
間人先生 最後は同時に変化させようか!?
ドドン!
夏組走者 おぉおあああ!
冬組走者 マジかよ!!?
夏組走者のけん玉にはゾンビが現れ、冬組走者のけん玉にはなまはげが現れた。両組アンカーがけん玉から顔を背けながら並走している。
ドドドド!ドドドド!ドドン!ドドン!
間人先生 オラオラオラオラーーーー!!
冬組走者 ういぃぃぃ!やっぱ無理ぃぃい!
夏組走者 どうにでもなれぇぇぇええ!!!
パパンッ!
ゴールラインに立つ羽舞リーダーが空に空砲を打ち鳴らした。
間人先生 ふぅー!ふぅー!、ん?、何で空砲が?、あれー?1人ゴールしちゃってるじゃーん!、やばい。魔人が。負けた。
ビュンッ!
一瞬にして、間人先生と12音符隊がその場から姿を消した。そして、けん玉たすきリレーはゾンビが怖すぎて目を瞑ってゴールした夏組の勝利となった。
ビュンッ!
やぐらの前にはセンターマイクが1本置かれ間人先生を中心に12音符隊達が黒いスーツ姿で現れた。間人先生の頭の後ろにはスクリーンが現れ、そこには謝罪会見と表示されていた。
カシャッカシャッカシャッカシャッ!
どこからともなく間人先生達にカメラのフラッシュが光る。
間人先生 えー。この度は、夜の部の魔人祭に主催者である私が遅刻をした挙げ句。新入生の皆様には、私にとって有利な条件の元で試合を受けさせておきながら。私が新入生に負けてしまうと言う結果になってしまった事。大変恥ずかしい限りでございます。関係者並びに参加者の皆様、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした!
そして、間人先生達は一斉に頭を深く下げ、生徒達に謝罪声明をした。
間人先生 音。
すると、やぐらの遥か高い夜空に美しい花火が輝きを放った。そして、間人先生と12音符隊は、後ろに用意された大きな箱から透明な空壁玉を取り出し両手に持った。
間人先生 風組の皆さんご協力ありがとうございます。これから打ち上げますは、火の花の粉で作った色玉と鳳凰の羽を少々。矛盾さんお手製の花火でございます。では。
そして間人先生達は地面に一列に空けられた丸い穴に空壁玉をストンと入れた。
間人先生 風。
ビュンッ!26個の空壁玉が夜空に飛んだ。
ドドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドドン!ドッドッ!ドドン!ドッドッ!
夜空に舞う綺麗な花火が会場をカラフルに彩っていった。火の花の粉は、空気に触れると赤く輝きながらゆっくりと変則的な動きを魅せる。鳳凰の羽は、七色に明滅して輝く星になり夜空に大きな円を描いた。次の瞬間だった。夜空に広がる大きな円の輝きそのままに動きが止まった。そしてその円は夜空を切り取るかの様に、ぐるんと右回転、そして左回転を1回ずつした。そして、ゆっくりと綺麗な花火は夜空に溶けるように消えていった。
日和 え?今、花火が止まった?
権太 止まった!しかも回転してたよ。
美代子 あー!お腹いっぱい!、で花火が何だって!?
間人先生 鳳凰の羽ばたきは時を止め、空間を歪める希有な存在。それは蝶の羽ばたきとは比にならない。
真夏の夜空に咲いた、魔人の見事な花火によって空祭は華麗な終演を迎えた。その後、焼きとうもろこしに夢中になって花火をながら見していた美代子は。残った焼きとうもろこしを日和達の知らぬ間に、客席に座る上級生達にお裾分けしていた。
日和 不思議な花火ー!
権太 楽しかったなあ!!
美代子 ちょっと甘いもの食べたくなってきたなー。そうだ!権太!私のどら焼き!
権太 はいよ。
美代子 もぐもぐもぐ。
日和 もうその身体のどこに入るのよ。




