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地球疑  作者: 新垣新太
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第1章~空の学校・後編~

3月21日

昨日の大雨を忘れるほどに、今日の空には青空と白い雲が広がっていた。梅の木に咲く満開の花に、昨日の雨粒が滴っていた。


ガララッ!

少女が勢い良く自分の部屋の窓から顔を出す。

日和 水溜まりは!、出来てるー!

ダッダッダッダッ!

日和 お母さん水溜まり出来てるよ!

日和の母 良かったわね。準備は大丈夫?忘れ物ないかもう一回確認しときなよ!

日和 大丈夫!昨日の夜、3回も持ち物チェックしたから!

日和の父 随分張り切ってるな~。

日和の弟 もう姉ちゃん行っちゃうの?、嫌だよ!僕も一緒に行く!

日和の父 ダメだ!早く寝癖直して、お父さんと一緒に家出ないと学校間に合わないぞ!

日和の弟 うー。はーい。

・・・

日和の父 じゃあ、先に行ってくるよ。日和。ちゃんとお世話になるんだから、挨拶忘れずにな!

日和 わかってる!

日和の弟 姉ちゃん早く帰って来てよ!また遊ぼうね!

日和 それまでいい子にしてるのよ!


そして少女と父と弟の3人はぎゅっと身体を抱き締めあった。父は会社へ、弟は学校へと向かい家を出ていった。その後、少女は母の作るお昼ご飯の唐揚げをペロリとたいらげた。


日和の母 日和ー!忘れ物はない?13時になるわよー!

日和 はいはい!今行くー!!


ガチャ!

少女は父から借りた重たいキャリーバックを両手で持ちながら外に出た。濡れたコンクリートに太陽の光がキラキラと反射していた。少女の家の前の道には何ヵ所か水溜まりがあった。少女の母は一番大きく水溜まりになっている所で少女を呼ぶ。


日和の母 あと3分よ!

日和 何着て行こうか悩んじゃって!

日和の母 スマホは持ってけないのよ!、だから必ず手紙書いてね!

日和 わかってるよ!手紙たくさん入ってる!、あと何分?

日和の母 あと30秒。気を付けてね。ほらチケット!


そう言われ少女は、ズボンのポケットに仕舞っていたチケットを取り出した。水溜まりには、綺麗な青空と白い雲が映っている。そこにヒラリとチケットを浮かべた。段々と水がチケットに染み込んでいく。黄色いチケットの色が変わり始めた。じわじわと黄色から白色になり、あっと言う間に白いチケットになった。少女の母はスマホの時計を見つめカウントダウンを告げる。


日和の母 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、はい!行ってらっしゃい!

日和 行ってきます!、よっ!


少女は水溜まりに浮かぶ白いチケットの上に飛び乗る様にジャンプした。


ぴちゃんっ。


日和 ん?、、なんともないけど。

日和の母 うん?、そうねえ、間違ったのかしら?

日和 お母さん時間は!?

日和 え?今、13時調度よ!


と言って母は少女を見た。

もうそこには少女はいなくなっていた。


日和の母 日和?、行ったの?、あら、やだ。水溜まりもなくなってる。、、。そうだ。母さんに連絡しなきゃ!


・・・

ヒュンッ、ボスンッ!


日和 ぐへえっ!、ったい~!、キャリーにお腹打った~。、、。え?、桜?花びらがなんでこんなにたくさん。


少女はキャリーバックの上にうつ伏せに身体を乗せ、地面から上に視線を移した。そこには一面がピンク色の桜の絨毯と、自分と同じ位の歳の子ども達が何人もいることに気づいた。


案内人 ようこそ!空の学校へ!、大丈夫かい?、ゆっくり立ってね!、荷物を起こそう。怪我はないかい?、前の人の後に続いて!、無事に来られて良かった!


そこには、新しく入学を迎える生徒達を誘導してくれる案内人の人達が待ってくれていた。


日和 すごい。水溜まりから、こんな所に飛んで来たんだ!、すごい!

案内人 ようこそ!、大きなキャリーバックだね?、起きれるかい?、よしっ!、大丈夫そうだね。うん。これから新入生歓迎会がこの一本道の先にある五重の塔で開かれるんだ!、前の人に続いて、ゆっくり歩いて行ってね!

日和 あ、ありがとうございます。


少女は案内人の言う通り、広い一本道を歩いて行く。道の両側には大きな桜の木が並んでいた。地面に沢山の桜が落ち、木には満開の桜が咲いていた。長い一本道を前の人達に続いて歩いて行くと、藍色の建物が視界に入ってきた。


日和 でっかい五重の塔!、綺麗な色。


桜並木を抜けた先に建っていたのは、美しい藍色に彩られた五重の塔。その塔の一階部分は一番大きく、そして二階、三階と上に行くにつれて小さく建てられていた。一階の入口には、案内人が新入生達の荷物を受け取り中へと案内していた。


案内人 はい!お名前は?、はい!、では荷物を預かります。間違えない様にタグを付けさせて頂きます。この白い部分に親指を押し付けて!、はい!ありがとうございます!では、前の人に続いて中へどうぞ!


案内人は新入生の荷物に輪っかに白い紙が付けられたタグを通している。その白い紙に新入生が親指を押し付けると、白い紙に親指の指紋が黒く現れた。


案内人 はい!次の方!

日和 あ、お願いします。

案内人 荷物にタグを付けさせて頂きます!こちらに親指を押し付けて!、はい!ありがとうございます!では、前の人に続いて中へどうぞ!


そして、少女は入口を通り赤い絨毯の敷かれた床を進んで行く。すると、そこにはとても広いホールに、長いテーブルが4つ縦に並んでいた。テーブルには輝くほどの料理と飾り付けが施され、ホールの奥には先輩達が、ホール入口側にあるテーブルには先生達が拍手で新入生達を出迎えていた。


日和 すごい。、綺麗ー!こんなに人がたくさん。


新入生の入場は次々と続き、瞬く間にホールは新入生を含めた学生でいっぱいになった。そして、開放されていた入口の扉が案内人によって閉められ、ホール内は歓迎の拍手と歓声で包み込まれていた。先生達が座る横長のテーブル。その中央に座る背の低い老人が鐘を鳴らした。


リンリンリンリンッ!


権堂校長(ごんどう) 空を見つめる皆さん。ごきげんよう!、新入生の皆さん。初めまして、私は校長の権堂と申します。空の学校へようこそ!、では早速だが。速水(はやみ)先生、お願いします。

速水先生 はい。


そう言われた速水先生は、着物の腰脇に差していた刀を鞘から2センチ程カチャリと見せた。


権堂校長 背が低いと困ったもんだ。ちょっと失礼しますよ。

そう言うと、権堂校長は座っていた椅子に足を掛け、テーブルの上に立った。手にはパチンコと白色の玉を持っていた。


モクモクモクモクッ!

日和 うわぁっ。天井から黒い雲みたいのが。

すると、ホールの天井から薄暗い雲が徐々に広がり、室内の明るさが少しずつ弱まってきた。


権堂校長 これは幻じゃあない。、情熱の結晶だよ!

そう言って、権堂校長はパチンコに白色の玉を引っかけて、グググッとゴムを引っ張り黒い雲に狙いを定めた。


ヒュンッ!!

黒い雲の中に白色の玉が入る。


パチンッ!!

何かが弾ける様な音が鳴った。その瞬間、たくさんの流れ星がホール全体に流れ落ちて行く。キラキラと輝く星。強く光る星。薄く光ながら七色に輝く星。それぞれの流れ星がホールを飛ぶ。その流線上からは細かい星屑が生徒達のテーブルに降り注いでいた。さらに、黒い雲の中からは、星座の模様がゆっくりと降ってきた。十二星座それぞれが手の平サイズの模様でテーブルの上に落ちてくる。それに生徒が触れると、キラキラと細かい星屑となって消えた。


新入生 すごい。小さな星だ!、綺麗!

新入生 ほら!こんなに大きな星!

新入生 ちょっと透き通っても見えるし、黄色く光ってる!


新入生 これ、星座じゃない?

新入生 星が線で繋がって何かに見える!

新入生 あ!触ったら消えちゃった!不思議ー!

新入生 見て!、あの雲の中もちょっとキラキラ光ってるのが見える!


権堂校長 よっと。柿原(かきはら)先生、そろそろ乾杯にしましょうか?

柿原先生 かしこまりました。夕葉(ゆうは)先生、準備をお願いします。

夕葉先生 はい!


リンリンリンリンッ!

柿原先生 お静かに!、それでは新入生の入学を祝して乾杯を致します。テーブルに置かれたグラスを持って、頭より上に掲げて下さい!


そう言われ、生徒全員が自分の手元に用意された薄くオレンジ色がかったシャンパングラスを掲げた。すると、先生達が座るテーブル側の前に夕葉先生が現れた。そして天井にある黒い雲に手をかざすと、中から白い雲がモコモコっと4つ現れた。その雲はそれぞれのテーブルの端に移動し、グラスの位置でピタリと止まった。


夕葉先生 皆さんは今、何が一番飲みたいですか?


フウーーーー!


テーブルの端にいた白い雲が奥に向かってゆっくりと進んで行く。そして、雲がグラスを通るとき、グラスの上に小さな雲が残り、雲の中から綺麗な液体がグラスに注がれた。その色はグラスによって様々な色を見せていく。


トットットットッ。


日和 泡だ、炭酸になってる!私の飲みたいやつかな?

新入生 良いにおーい!

新入生 みんな違う色ー!

新入生 俺のはお茶だな!絶対わかる!


白い雲は端から端に行き渡り、その後すぐに黒い雲の中へと消えて行った。


柿原先生 準備ができましたね?、それでは、皆さんがこれからも有意義な学校生活を送れる事を願って!、乾杯!!!

全員 乾杯~!!!


カーン!カン!チン!カーン!


グラスが交わされる美しい音色がホールに響き渡る。新入生達は、綺麗な色の液体を口にした。恐る恐る飲む者。ゴクゴクと飲み干す者。じーっと液体を見つめる者。テーブルに用意された沢山のご馳走と共に新入生歓迎会が始まった。


もぐもぐもぐもぐっ!


美代子(みよこ) ねー!食べないならもらっちゃうけど?

日和の左側に座る赤髪の女の子が、日和のお皿に盛られた料理をフォークで刺そうとする。

日和 ダメダメ!食べる食べる!、すごい食べるんだね?お皿に盛りすぎてこぼれてるけど。

美代子 ちぇっ!まあいいや!、あ!これもうまそうじゃん!、うん!やっぱりうまい!

日和 美味しそうに食べる子だ~。


テーブルに用意された料理は、パンやご飯の主食から、チキンの野菜詰めや揚げ物等の贅沢な副菜までズラリと並べられていた。時折、料理人の方が新しい料理を運んだり、給仕の方が飲み物を注ぎに来たり。新入生達は目を輝かせながら舌鼓を打っていた。

・・・

リンリンリンリンッ!


沢山あったテーブルの料理も少しずつ片付けられていった頃。鐘の音がホールに響いた。


柿原先生 楽しいお食事はこの辺で。新入生の皆さんには、これから4つのクラスに分かれて生活を送って頂きます。その組分けを今から始めますので、

上級生 雲だめし!!!


柿原先生の言葉を遮るように、上級生が大きな声を出した。


柿原先生 お静かに!、(生徒の間ではそんな呼び方になってるのね)。では、夕葉先生。七色雲の準備を。

夕葉先生 はい!


パチンッ!

夕葉先生はテーブルに座ったまま、左手を上に挙げ指を鳴らした。すると、先生達のテーブルの下から4匹のハクビシンが飛び出してきた。そして、ハクビシンが4つのテーブルの端の下にそれぞれが入っていく。


パチパチッ!パチッ!モコモコモコモコ。

軽く弾ける音が生徒のテーブルの上から鳴る。そして、何もなかったテーブル上空にモコモコと白い雲が一塊となって現れた。白い雲は時折に七色の光を帯びていた。


柿原先生 今から新入生の皆さんには、そのテーブル上空にある七色雲から白いカプセルを1つ取ってもらいます!、自分の目の前に雲が移動してきたら、ゆっくりと1つだけカプセルを取って中身を確認して下さい!、カプセルの中には色がついたガムが入っています。ピンク色なら春組。青色なら夏組。赤色なら秋組。白色なら冬組に決まります!、ガムですから、食べても結構ですが、食べずに取っておいても良いですよ。じゃあ、始めましょう!


そう言うと、テーブルの端から順に新入生が七色雲に手を恐る恐る入れていく。雲はゆっくりとテーブルの上を移動し、パチパチッと音を時折鳴らしていた。


新入生 恐いよー!、痛くないの?

新入生 あった!、取れたよ!

新入生 ガチャガチャのカプセルみたいだな!

新入生 青だ!、夏組だって!


そして日和の目の前に七色雲が流れてきた。日和は上空にある雲に向かって緊張した面持ちで右手を突っ込む。


日和 (あ!中はちょっと冷たい。カプセルどこだ?どこだどこだ?)、あった!


権太(ごんた) 青だ!、これが宇宙ガムか~!、あむ。

もぐもぐもぐ。、、ぷくーーー。


日和の右側に座るおかっぱの男の子が、カプセルから青色のガムを手に取り口に入れた。そしてもぐもぐとガムを食べ、口からゆっくりとガムに息を吹き込み膨らましていく。


日和 え?宇宙ガム?

日和は自分が取ったカプセルを開けた。

パカッ!

日和 青色だ。と言うことは私は夏組か。、、え?、膨らんだガムの中に星が見える!


権太が膨らませた風船ガムの中には、まるで宇宙空間が入っているかの様な美しさだった。そこには青みがかった黒い空間に、無数の星々、銀河や惑星が風船の中でゆっくりと動いている。


日和 綺麗ーー!


パチンッ!!


あまりにも膨らませ過ぎた風船ガムが割れ、権太の顔に見事に張り付いた。風船の中で綺麗に映し出された宇宙空間は外に飛び出し、キラキラと粉になりながら消えていく。


権太 ハハハハハッ!むあむあむあむあ(膨らませ過ぎた)。

日和 ハハハッ!顔パック顔パック!!

美代子 あんたバカねー!、うけるけど。ねー!その宇宙ガム食べないなら私にちょうだい!

日和 え?ダメ!、これはまだ後に取っておくの!

美代子 あら残念賞!、良い声してるじゃん!私は美代子よ。よろしくね!同じ夏組よ!

日和 あ、ありがと。私は日和!一緒の組だね!、あと顔面ガム君も。

権太 ももいくー!(よろしくー!)

美代子 賑やかな方が楽しくて良いわ!

日和 ハハハッ!たしかに。


リンリンリンリンッ!


再び鐘の音が鳴り響いた。

権堂校長 それでは皆さん!そろそろ歓迎会を御開きにしたいのだが。組分けが終わった新入生の皆さん!ホール両側の扉の前に、それぞれの組リーダーが待っておる。自分の組の色と同じ扉から外へ出て、学生寮で上級生達から細かい説明をちゃんと聞くこと!、それでは御開き!、上級生諸君。よろしくお願いしますよ。


権堂校長の挨拶が終わると、ホール両側に2ヵ所ずつある茶色い扉の色が変わった。先生達のテーブルを正面に右側にピンク色の扉と青色の扉。左側に黄色の扉と白色の扉。各扉の前には1人ずつリーダーが立っていた。


青柳(あおやぎ)リーダー 春組の皆さんはこちらでーす!

玉木(たまき)リーダー 青い扉が夏組だー!!

銀杏(いちょう)リーダー 秋組はこちらですよー!

白取(しらとり)リーダー 冬はこっちだ!手を挙げている!


新入生達はぞろぞろと自分の組の扉を目指して移動を始めた。我先にと走る者。人波に流される者。まだ料理を楽しむ者。ホールの中から徐々に生徒達がいなくなっていく。


権堂校長 今年も空に願う子ども達が沢山おったんじゃな。

柿原先生 ええ。我々の希望ですね。

・・・

日和、権太、美代子の3人は夏組の青色の扉を抜けた。外は明るく快晴だった。風が少し冷たく、身体をきゅっと縮ませながら前の人達について行く。日和は前に進む列の先を見た。そこには微かにだが、城が(そび)え立っているのが見えた。


日和 え?あれが学生寮じゃないよね?

・・・

歓迎会が行われた五重の塔を出てから30分程歩くと。ようやく大学の様な建物と立派なお城の前に到着した。


日和 でっか!、初めてお城をこんな間近で見た。


列の流れはそのままお城の入口に続いていた。お城の入口を通ると、そこには食堂の様な広いイートインスペースになっていた。沢山のテーブルと椅子が並び、新入生達はそこに順番に座っていく。上級生は全員が座った事を確認し、お城の入口の扉をガチャンと閉めた。すると、1人の上級生が新入生達から見える一番前の正面に歩いてきた。

・・・

玉木リーダー 新入生の皆さん!夏組へようこそ!!僕は夏組のリーダーの玉木!皆さんの入学を心より歓迎致します!、それでは。


と言うと玉木は右手の人差し指を上へ指した。新入生達はゆっくりと上を見上げた。


美代子 ちょっと待って。ここの食堂のラインナップ最高なんだけど。和洋中なんでも揃ってるし!

日和 お、オーロラ!、何で?

権太 すごっ!!!


お城の中は1階から上へ吹き抜けになっている。吹き抜けの空間には夜空が広がり、エメラルドグリーンの美しいオーロラがゆらりゆらりと夜空に煌めいていた。


新入生 なんでこんな所で見えるの?

新入生 オーロラって寒い所でしか見れないんじゃないの?

新入生 外は晴れてるのに、なんで上は夜空なんだ?


玉木リーダー 今日はお疲れ様。あれこれと考えるのは止めにして、ゆっくりと上を眺めよう。これから空の学校について簡単に説明する。僕の声だけ聞いていてね。学校の広さは東京ドーム約22個分の面積なんだ。学校のエリアは大きく分けて4つ。新入生歓迎会が行われた五重の塔を真ん中に、左上に春の城、右上に夏の城、左下に秋の城、右下に冬の城となっている。五重の塔は職員の先生方がいる所と覚えておくと良い。学年は新入生の皆さんである1年生から10年生まで。だけど、7年生からは6年生までとは違うエリアで学ぶ事になるから皆さんと会うことは滅多にない。年齢で言えば12歳から22歳までの学校かな。このお城は学生寮。1階が食堂で2階から7階が寮部屋。完全学生寮制度だから家に帰れるのは年に1度の1週間だけ。手紙のやり取りだけが許可されているから、1階のあそこの黒いポストに入れれば翌日には届くよ。気になる部屋割りについてだけど、皆さんの荷物は既にそれぞれの部屋に運んである。そして、座っているテーブルの上にお忘れの自分のチケットを確認してね。チケットの右下には部屋番号の3ケタが印字されているよ。皆さんは201から始まる2階のフロア。部屋は4人部屋で指紋認証でドアが開く。エレベーターは4階以上を使う生徒のみしか使えないので気を付けて。じゃあ、そろそろ前を向いて自分の部屋番号を確認しようか。


日和と両隣に座る美代子と権太は、テーブル上のチケットを見て部屋番号を確認した。


日和 私は204だ。

権太 俺は206。

美代子 201ね。うちら3人はバラバラかー。


玉木リーダー 最後に。部屋に向かう前に重要な事を伝えておくよ。僕達がいる夏組は、昊天(こうてん)を創る事が主な役割。簡単に言うと空を創る人。その集まりが空の学校だ。学校を卒業すれば空人(そらびと)と言う職人になれるチャンスがある。もちろん選ぶ権利は君達にある。以上、ようこそ空の学校へ!

・・・

新入生達は、ざわざわしながら自分達の部屋に向かった。階段を登り2階に行くと、正方形のようにぐるっと通路がある。各部屋のドアノブの上に、小さな黒い画面が付いていた。そこには指のマークが印されており、新入生が親指をマークに重ねるとガチャンと鍵が開いた。日和は204と書かれたドアを開け中に入る。部屋には2段ベッドが2つ置かれ、沢山の荷物が側に置かれていた。小さいながらも1人ずつに勉強机が用意され、机の上には教科書とノートが置かれていた。日和は新しいルームメイト達と簡単な挨拶を済ませ、すぐに荷物を片付けようとしたのだが、身体と頭がうまく噛み合わず。まずは机に手紙とペンを出し、家族に今日の出来事を書くことにした。部屋にある窓からは、夕焼けの空が見えていた。

・・・

日和は書き終えた手紙を出しに、1階のお城の出入口近くにあった黒いポストまで歩いた。


日和 よし。お願いします!

カチャンと手紙を入れる。

・・・

夜23時。

ガチャンとお城の出入口が開いた。全身黒い服を着た上級生が、黒いポストの鍵を開ける。中にある手紙の入った大袋を取り出しポストの鍵を閉める。

ガチャンとお城の出入口が閉まる。


バサバサッ!バサッバサッバサッ!


お城の出入口から飛び立つ夜の鳥。その両足でしっかりと大袋を掴み、月夜の中に飛んで行った。

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