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地球疑  作者: 新垣新太
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第5章~夜の鳥・後編~

今年も空の学校に暑い夏が訪れる。そんな7月、権太は寮の食堂の壁に貼られたポスターを凝視していた。


権太 9月。秋の舞踏会。4年生が踊る。


陽光先生がこの間の授業終わりに、秋の舞踏会について話をしていた。4年生が春夏秋冬4組合同で行う舞踏会。会場は新入生歓迎会を行った五重の塔の1階ホール。各組が交代でホールで踊る。それまでに夏組のクラスの中で男女のペアを組まなければならない。踊りの練習は、ペアができた人からタブレットPCが渡され、その中に去年の先輩の踊る動画を参考にして練習すると言う。権太は考えていた。踊りなんて少しもやってこなかった俺が、女子と一緒に舞踏会。早くペアを組まないと、練習時間も少なくなる。かと言ってペアに誘っても断られるかもしれない。どうする、誰なら俺とのペアを許してくれる。そんな事を一人で考えながらポスターを凝視する余り、気付けば権太は何もない白い壁を見つめて立っていた。


日和 権ちゃん?

権太 ぶっ!うわぁっ!びっくりした!、あー!日和!

日和 どしたの?ずっと立ったまんま壁に顔近づけて。

美代子 どうせあれでしょ。秋の舞踏会の事で頭がパンクしてんでしょ!

権太 ち、ち、ちがわい!

美代子 わかりやすいわ~。

日和 あーでもまだ私もペア決まってないから権ちゃんと同じだわ。

美代子 日和は大丈夫よ!誰に声掛けてもOK出るわよ!

日和 そんな事ないよ~。、、じゃあ権ちゃん、私とペア組んでくれる?って言ったら嫌でしょ~?

権ちゃん 俺を楽しませてくれるなら、どうぞ。

美代子 何か顔キマっちゃってんだけど。

日和 良いの私で!?、やった!決まりだね!

美代子 茶番だわ。私は誰にしようかな~!、ご飯ご飯!先に腹ごしらえ、と!


権太は内心ホッとしていた。これで第一関門は突破できた。次は踊りの練習か。でも日和がいる。協力すれば何とかなるだろう。そして、権太はペアが早々に決まった安心感にうつつを抜かし、踊りの練習を舞踏会1週間前まで行わなかったのである。日和にやっと尻を叩かれ、いざ踊りの練習となったのだが。タブレットPCに映る先輩達の踊りに衝撃を受けた。手を握っている。そして顔も近づけている。距離が近い。ほとんどペアが離れやしない。しかもペアの動きがほとんどシンクロしている。権太は顔をプルつかせて目が飛び出ていた。


日和 権ちゃん大丈夫?やっぱりもっと早く練習始めとけば

権太 大丈夫!心配ないよ!だって権ちゃんだぜ!

日和 そう。なら良いんだけど。じゃあ、とりあえず、もう一回最初から動画見て、スロー再生しながら練習しよっか。

権太 いや、俺なら2倍速でいける!、いや、いくよ!

・・・

9月を迎えた。残暑の暑さが若干あるものの、今日は絶好の舞踏会日和と言える快晴だった。広場では、各組が衣装着替えの前に踊りの練習をしていた。そして、五重の塔の入口に立つ夕葉先生が鐘をならした。


リンリンリンリンリンリンッ!


夕葉先生 皆さんそろそろお着替えの時間です!広場中央に用意された衣装部屋に入って下さい!先に春組、次に夏組の生徒が入って下さい!


五重の塔前の広場中央に深緑色の大きなテントが張られていた。そのテントの中には沢山の衣装が並べられていた。生徒達は事前に決めた衣装の番号を先生に伝える。着替えが終わるとテントを出て、五重の塔の入口から1階ホールへと入って行く。中に入ると、空中に浮かぶ綺麗な装飾が施された透明な色玉達がホールを彩る。ホールの奥には客席に座る上級生と職員の先生達。手前には、ピアノとオーケストラの楽器が準備されていた。


美代子 うわぁ。また歓迎会の時とは感じが違うわね。、っとと!、あ~慣れないわこの靴。

日和 わかる!歩きずらいったらないよね。

権太 ぉ、ぉう。、膝が震えてるねぇ。寒いのかなぁ。


先に始まるのは春組の生徒達だった。桜餅先生の合図でペアになった男女が広いホールに等間隔で並んで行く。そして、五重の塔の入口から、正装をしたオーケストラの人達が入ってきた。そこで権太は目を疑った。先頭に歩いていたのが草香先生だったからだ。しかもピアノの席に座った。お辞儀をしてニッコリこっちに笑顔で手を振ってくれた。


権太 うっ!えっ?、今草香先生が俺に手を振った!

日和 ふふふっ。

美代子 権太うるさい!静かに!


桜餅先生がスタンドマイクの所に立った。


桜餅先生 それでは、只今より4年生による秋の舞踏会を始めたいと思います。演奏は、ピアノを草香先生。そしてオーケストラを音組の12音符隊の皆さんでお送り致します。春組の皆さん。準備はよろしいでしょうか?、、はい。では参ります。春組の舞踏会で「そよ(かぜ)」。


静まり返るホール内。美しく彩られた衣装を纏う女子生徒達。黒の正装が少し煌めく男子生徒達。一瞬の間の後、軽やかなピアノの音に合わせて春組の舞踏会が始まった。


美代子 綺麗ね~。ずっと見ていたいわ~。

日和 うん。なんか暖かいよね。

権太 手が、手が震えてるねぇ。


権太は春組の舞踏会を見ているようで全く見ていなかった。そして、春組生徒達は踊りを終え、客席に向かって一礼をした。


パチパチパチパチパチパチパチパチッ!

拍手喝采に歓声がこだまする。ホール脇に座って見ていた夏組は、立ち上がり身体をほぐす。ホール中央から春組の生徒達が外へ退場する。陽光先生の合図で日和達はホール中央へ移動した。


陽光先生 それでは、続きまして。夏組の舞踏会をお送り致します。どうぞ皆様。一瞬暗くなりますので、一度顔を下に伏せてからご鑑賞下さい。それでは、夏組の皆さん。準備はよろしいでしょうか?、、うん。では夏組の舞踏会で「鈴蘭(すずらん)」。


ホール内は暗闇に包まれ、そしてゆっくりと明るくなった。すると、女子生徒達の衣装に丸い蛍光色がふよふよと付いて回る。白い正装をした男子生徒達からは星屑が袖から美しく舞う。緩やかなシンクロステップと華やかな衣装が客席を魅力する。権太は踊りながら、膝の震えを感じていた。手や脇からは汗が止まらない。こんな近くに女性がいるなんて。権太がふと視線を外に向ける。その時、ピアノを演奏する草香先生があの笑顔で権太を見つめていた。


日和 権ちゃんよそ見しない。私の(すそ)踏んじゃうよ。

権太 大丈夫だよ。ちゃんと見てるから。

日和 、うん。何か権ちゃん今までの練習より一番うまく踊れてるよ。

権太 ぉ、おい。俺を誰だと思ってるんだよ。、権ちゃんだぞ。

日和 (凄い、顔キマっちゃってんだけど。どうすればいいの?)


そして、オーケストラの見事な演奏と共に夏組の舞踏会は無事に幕を降ろした。客席に一礼をして、会場の外へ退場する。権太は完全に緊張の高みを越えて、軽く気を失っていた。五重の塔の入口を出て、快晴の空の眩しい光が権太を輝かせる。権太は、何故だかわからないが息をたっぷり吸い込み、両手を広げ天を仰いだ。


日和 権ちゃん大丈夫?

美代子 大丈夫よ。ただのダンサーズハイよ。


権太 出来たよ、俺。出来たんだよ。うまく舞えてたでしょ。


日和はほんの一瞬だけ、権太の事が白い天使に見えた。と言う事を草香先生に送る手紙に書こうと決めたのであった。

・・・

遠くの森から犬の遠吠えが聞こえる。空からは冷たい雪が降っていた。凍りつくような寒さを迎えた12月。日和達は西棟の前広場に速水先生の授業の為、外に出た。そこには、如何にも犬ゾリで使う木で出来たソリと、白い毛色と黒い毛色の2種類の犬達が用意されていた。


日和 あ。さむっ。

美代子 耳が痛いよ。

権太 しゃべりたくないな~。


速水先生 よーし。授業始めるぞー。今日はご覧の通り犬ゾリをやる。だが、只の犬じゃあない。詳しくは雪組の(しば)リーダーから!

柴リーダー 初めまして!雪組の柴です!、今皆さんの目の前にいる2種類の犬。どちらも同じ犬種なんですが。よっと!、こちらに今白い毛並みの犬を連れてきました。この犬は氷犬(ひょうけん)という犬種で、とても寒さに強い犬です。そして、大きな特徴がこの犬の息。よーく見ていてね!


と言うと、柴リーダーが白い氷犬の横に膝を付いた。そして、ポケットから餌を出して氷犬に与える。すると、その氷犬は顔を地面に近づけて大きく息を2回吐いた。


パキパキパキ。パキパキッ!


加南子 うそ!地面が凍った!

あやみ 凄いねあのワンちゃん!


柴リーダー 氷犬と言う犬は、息に含まれる成分が特種でね。こうして、対象物が近くにある状態で息を吹き掛けると簡単に凍らせる事が出来るんだ。他にも、冬の森に棲む雪犬と呼ばれる犬は、遠吠えをすると空にある雲と反応させて雪を降らせるんだ。だから皆さん、今回は普通の犬ではないと言う事を自覚して氷犬の口には近づかない事。凍っちゃうからね(笑)。でも性格は人懐っこくて良い子だから。ちょっとヤンチャな所もあるけど大丈夫!仲良くしてあげてね!

速水先生 そんな所で良いだろう。まずは、3人グループを作ってくれ。出来たら氷犬に挨拶をしてソリに乗れ。早速だが、君達にはこれから犬ゾリレースをしてもらう。レースはここから五重の塔をぐるっと回って帰ってくる簡単なコース。見事1着でゴールしたグループには、クリスマスケーキのプレゼントだ。どうだ?やる気が出て来て堪らないだろう。、まぁ真面目な話。雪を降らせるには氷犬様の力が必須。人間には敵わない領域だ。こうして、綺麗な雪を見れるのも氷犬がいるからだ。そんな氷犬様に引っ張ってもらう犬ゾリなんてもんは、実はとっても贅沢な事なんだぜ?心して乗るんだぞ。では、始めよう。


そう言われ、生徒達は3人グループを作る。余った人数は4人グループとなり、全員がそれぞれの犬ゾリに乗る。日和は真ん中に座り、両脇に権太と美代子が座った。


速水先生 あ~言い忘れてた。ソリの両脇に鈴が付いた棒が差さってるだろ。その鈴を鳴らした方向に氷犬が走る。上手く舵取りしないと、勝手にどっかいっちまうから気を付けろ。じゃあ準備は良いかな?、、では、よーい。ドン!、走れ~。


氷犬達は顔を地面に近づけて大きく息を吐く。あっと言う間にソリの前には氷の道が現れた。スパイクの様な氷犬の足が、ゆっくりとソリを動かしていく。1台のソリには4匹の氷犬。前列のグループから続々とスタートしていった。氷の上を走る音。鈴の音が寒空に響く。速水先生は、ゴールラインを赤色の三角コーン2つを使って作った。その場所を柴リーダーに任せて、速水先生は夜の鳥となって上空から生徒達を見守った。


美代子 寒すぎるわ!こんなの冬にやる必要あるの?

権太 棒が冷たい。持ってるのも嫌なんだけど。

日和 でも頑張ろ!早くゴールしないと苦痛地獄だよ!

美代子 たしかにそうね。舵取りは任せて!


日和のグループはちょうど中間の列からスタートした。前列のグループはもう大分遠くにいる。だが、既に氷犬が言う事を聞かずコースアウトするグループもあった。ソリが密集していた所から段々と間隔が空いてくる。日和は真ん中に座り指揮官としての才能を発揮させる。まばらに走る前方のソリ達。五重の塔を目前に、ここで抜き去らないと後半はキツイ。氷犬達の体力も考えて、狭いながらも前方に追い越せるルートを見つけた。日和は大きな声で権太と美代子に舵取りの指示を出す。そして、氷犬達にも全速力でと激を飛ばす。権太は鼻水を出しながら、美代子はクリスマスケーキと叫びながら日和の合図で鈴の棒を振った。ソリ1台分の空いたスペースを日和のグループがすり抜ける。ガリガリと速い音をたてながら氷の道をソリがぐんぐん進んで行く。五重の塔のコーナーに差し掛かり、美代子に日和が指示を出す。左に座る美代子が思いっきり鈴の棒を振る。日和達のソリは左回りにコーナーを曲がり、日和は遠心力で振り飛ばされない様に権太の後ろ首をガッと掴んだ。コーナーを終え残りの直線コース。前方にいるグループは1つだけだった。間は空いていたが抜けない距離ではない。最後のもう一踏ん張りだと権太と美代子を鼓舞した日和。氷犬達にも必死で声を掛ける。氷犬の息は荒くなり、前方の氷の道はさらにデコボコ道に変化していた。日和達の後方を走る犬ゾリ達は、そのデコボコにソリの足を取られ転倒するグループもあった。そんな中、日和達のソリはさらにスピードを上げる。そして、前方のグループと両隣まで追い付いた。左に並んだグループは達也が率いる犬ゾリグループ。お互い視線を交わした後、5メートル先のゴールラインを捉えた。赤色の三角コーンの隣で柴リーダーが白い旗を振っていた。1着を争い互いの犬ゾリの距離が近づく。氷犬達からもかなり激しい息づかいが聞こえる。後少し、後少しだよと日和が全員に声を掛けて必死に力一杯叫んだ。


日和・権太・美代子 寒すぎるだろーーー!!!


速水先生 ほう。中々根性あるじゃないか。


柴リーダー 1着3番!2着10番!


美代子 どっち?、、勝ったの?

日和 わかんない。そもそも番号すら覚えてない。

権太 番号?、、えっとうちらは、、10って書いてあるよ。

美代子 ダメじゃ~ん!!!1着3番って言ってたも~ん!!!

日和 寒かった~。

権太 もうなんか、寒すぎて勝ち負けどうでもよくなっちゃったよ。


こうして、犬ゾリレースの授業は終わった。見事1着を取った達也グループだったが、あの短時間外にクリスマスケーキを準備して置いていただけなのにアイスケーキになってしまっていた。達也グループが寒そうに冷たいケーキを寮の食堂で食べている様は、日和達のクラス全員のトラウマとなった。

・・・

12月

日和は寮にある部屋の窓から外を眺めた。外にはシンシンと雪が降り積もり、そこを歩く学生達の足跡を見ていた。白くキラキラと輝く雪は、さらに地上の熱を奪う。少し開いた窓の隙間から外の冷たい風が日和を襲う。ガチャン。日和は窓を閉め、大きなキャリーバックを持って部屋を出た。1週間の帰省がやって来た。心の空壁に映った自分の心を見た日和。そこには、スカイブルーとオレンジ色が綺麗に右と左に半分ずつ分かれて現れた。


日和 どう言う意味だ?

陽光先生 やりたい事が2つあるのかしら。気を付けて行ってらっしゃい!


ザブンッ。

・・・

相変わらず帰省期間はあっと言う間であった日和。寮に帰り部屋に着くと、自分のエアーキューブをクルクルッと上に投げながら中を覗いた。その中には、グランドピアノとキラキラと舞う細かい星達がいた。


日和 やりたい事か~。

日和はベッドにうつ伏せで倒れ、そのまま眠りについた。

・・・

日和、権太、美代子の3人は重い足取りで次の授業に向かっていた。悩みの種である速水先生の授業の時間が来る。今日は何をやるのかと、3人は憂鬱(ゆううつ)な気持ちで教室に入る。と、既に速水先生が教室にいる事に3人は驚いた。


速水先生 よーし。授業始めるぞー。今日の授業はかくれんぼだ。鬼は君達全員。隠れるのは先生1人だ。先生は夏の森で何かに擬態して隠れている。それをクラス全員で協力して見つけるまで授業は終わらん。良いかー。、先生は先に夏の森に行く。君達は白取リーダーの指示に従って夏の森に来る事。では、始めよう。


バサッ。


そう言うと、速水先生は夜の鳥になって開けられた教室の窓から外へ出ていった。


美代子 え?何今の。先生が黒い鳥になって出てったけど!

日和 変身した、よね?、何かカラスみたいだったけど。


白取リーダー あれは夜の鳥。我々冬組は擬態の力を磨いていく事で鳥になれるんだ。皆も興味があるなら冬組に転入しても良いんだよ?

・・・

俺の名前は(たけし)。情報屋だ。ここまで黙って見てきたが、速水ってやつ夏組4年の俺達を何だと思ってる。変な授業で生徒を困らせ、それを見てはクスクスと笑う。既に先輩達からは面倒なやつだと話は聞いていたが。それにしても気に食わない。今日は教室に集められたから、屋内授業だと思っていたのに。今度は外でかくれんぼだ。ふざけるなよ速水。犬ゾリの授業みたいに寒空に生徒を出してまでする事か?冬組の力が闇創り・雪の犬・擬態で鳥になれるからって天狗(てんぐ)にでもなったつもりか。俺達を(あなど)るなよ。


達也 見つけてやろうぜ!俺達のクラスに情報屋がいる事を知らない、速水先生を最速で!


そうさ。達也は全て分かってる。俺がこのクラスのトップである事を。話さなくてもわかる。達也も速水が嫌いなんだろう。大丈夫だ。俺がいる。情報屋の健がいる。速水が苦手な物の情報は、とっくに春組から入手してある。


達也 な!健!、何か知らないのか?速水先生の情報!

健 あるよ。速水先生は桜の香りが苦手で、ちょっと嗅いだだけでもくしゃみが止まらないらしい。

美代子 うそー!、じゃあもう簡単じゃん!

達也 さすがうちの情報屋!、行こうぜ夏の森に!

美代子 桜の香りだったら女子の皆持ってるはず!、準備は私達に任せて!男子は先生が森の中に何か仕掛けがないかのガードをして欲しいわ!

達也 それなら任せろ!


素晴らしいじゃないか。夏組の統率力の高さに惚れ惚れするよ。早く速水に一泡吹かせてやりたい。おそらく女子達の準備は桜の香りを使った色玉だろう。それを森の中の上空から散布すれば広範囲で探せる。日和は光の矢を使うのが上手いと聞いている。矢に桜の香りを塗って木々の間を通す事も出来そうだな。速水からの攻撃的な仕掛けは、男子が万全の布陣で対応してくれるはず。達也は先手必勝タイプ。勘が鋭い達也なら万が一にも強い。速水。今頃完璧に擬態を完了させて、俺達が速水を中々見つけられずに困る姿を見れると待ってるんだろう。困るのは速水、お前の方だ。覚悟しておけ。


美代子 なんか健って、いつもああやって机に両肘立てて手を組むよねー。

日和 うん。ちょっと上目遣いで何処かを睨んでるし。怖いイメージしかない。


白取リーダー じゃあ皆さん。そろそろ夏の森に移動しましょうか!


その後、健の思い描いた通り。桜の香りにくしゃみを連発した速水先生は、夏組にものの3分で見つかってしまった。速水先生は生徒達を侮っていた事を深く反省したのか、冬の授業で悩まされる生徒が減っていったと言う。

・・・

日和は寮の部屋で手紙を2通書いていた。1通は家族に、そしてもう1通は草香先生に。日和は手紙が好きになっていた。スマホを使って簡単にメッセージを送れる便利さは時として有効。だが、こうして紙を置いてペンを持ち。相手の事を想い、今伝えたい自分の気持ちを文字にする。この文字を書くと言う作業が、日和にとって価値があり楽しい作業だと心から感じていたのだ。書き終えた手紙に封をして、黒いポストにカチャンと入れる。日和はグッと伸びをして、ほどけていた靴紐を直し部屋に戻った。

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