第六話 可能的な『力』
「次は『力』の使い方をおしえるわ!」
変なスイッチが入ったまま長宮さんの講義が続く。
「いい?あなたの力は幻獣、ただし属性は火で統一されているから火属性攻撃しかできないけど、鳥だから火属性+飛行能力が基本になるわ。ただ、それだけじゃない」
「え?それだけじゃない?」
今まで入っていたスイッチが切れたように。急に長宮さんがうつむいて、その表情は暗くてよく見えない。
「不死鳥フェニックス。他を凌駕する圧倒的な再生能力。纏う炎は終焉と再生をもたらす。それだけなら良かったのかしらね」
「え?まだあるんですか?」
「炎が相手に終焉をもたらすのなら…………再生ももたらして当然。治癒能力を遥かに上回る再生能力が自分だけでなく他人も対象に入るわ。」
「いや…………治癒能力なんていくらでも………ていうか幻獣ならみんな…………」
だってそうだろう。治癒能力持ちで戦闘できないなんてことあるのか?
「治癒能力はどこまでいっても治癒能力にしかなれないわ。あれ?言ってなかったっけか。戦闘向きの力は戦闘しかできないし、治癒向きの力は治癒しかできないわ。そもそも治癒の能力を持つ者が希少なのに、戦闘と治癒両方できるなんて、誰でも欲しがるわ。あと、幻獣の力を持つ者は基本驚異的な再生能力のみで、対象は自分だけなの。幻獣と一口にい言っても色々いるし、過去の文献も曖昧だから、フェニックス以外に治癒能力をもつ幻獣が『力』として現れるかもわからないわ」
「ああ…………なるほど。そこがRPGによくあるスキルとの大きな違いか………ですか」
危ない危ない。敬語を忘れるところだった。が、いらぬ心配だったようだ。高宮さんは嬉しそうにうなずいた。
「そう、それであってるわ。いわゆる聖魔法なんてネットワールドにはないもの。さて、説明はここまで。実際にフェニックスの力をネットワールドで使ってみましょう。あぁ、その前に戦闘について教えてなかったわね。もう気づいてると思うけど、ネットワールドと現実での戦い方は、足場と力以外あまり変わらないわ」
「再生能力や治癒能力がある時点でわかりました。ゲームみたいなHPはあるんですね?」
仮想とはいえ、ダメージを受け続けたら脳がおかしくなりそうだからな。
「ええ。自分のネットワールド内での…………いわゆる運動神経のようなものと、『力』のみ。『力』の使い方は、自分でやるしかないわよ。自分の『力』を活かすも殺すも、すべてはあなたの独創性次第。好きにやりなさい」
独創性か…………楽しそうだな………
「ははっ………分かりました。せっかく鳥の………いや、不死鳥なので、飛んでみようと思います。」
言い直したのは、フェニックスを鳥というのは少し失礼だろうと思ったからだ。これから自分が使う力だし、決して失礼のないようにしないと。さて、飛んでみるか。
巻き込まれないようにか、長宮さんは少し離れた。それを確認してから、俺は飛ぶことに集中した。
「翼を…………生やす…………イメージで…………っ」
飛べた!背の方を、頭を回して見れば、かなり大きな翼が、赤色のようにも、紫色のようにも見える炎に包まれていた。だが、熱くはない。美しい翼だ。
自分の『力』がフェニックスだと知ってから、色々と考えてきた技がある。全部想像通りに再現可能とは思えないが、長い間苦楽を共にすることになる相棒だ。全てが俺次第なら、思いっきり、『フェニックス』という力を輝かせてやる。そう思うと………ワクワクしてきた。
(ふむ……………今度の少年は、なかなかに面白いやつじゃな………)
俺の中のフェニックスは、きっとこんなことを考えているに違いない。なぜだか、そんな気がした。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
遠くで、背中に炎の翼を生やした少年が飛んでいる。それを見ていた長宮は、一種の驚愕に包まれながら…………こらえきれなかった分を呟いた。
「これで、これ程の圧倒的な存在感を放っておいて……………
まだ、まだデュナミスだというの…………。流石は………確定している幻獣でも、異質な二種のうちのひとつ………ね」
治癒能力はフェニックスだけです。ユニコーンは解毒だけできます。(ネットワールドにも毒はあります)
ちなみに、もう一種の異質な幻獣の力は、『力』の名前が幻獣の名前ではなく種族名という点で異質です。




