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19 明かされる真相


 ジャンと共に王城へ向かったゾーク達。最終的に連れて行かれた先は王城の敷地内にある騎士団本部の一室だった。


 部屋の中には誰もおらず、見慣れた長いテーブルと椅子が並んでいるだけ。ジャンは真ん中辺りに座ると、ゾーク達も着席するよう促した。


「一体、何だってんですかい?」


「説明はこれからしてくれるよ」


 ジャンがそう言って笑うとタイミング良く部屋のドアが開いた。新たに入って来たのは騎士団総長のアランと第一王子であるヴェルガだった。


 起立したジャンに続き、ゾーク達も慌てて立ち上がるが部屋のアランと共に上座へ向かうヴェルガは「礼は不要」言いながら手で制する。


「さて、報告は先に戻って来た騎士から聞いている。時間も遅いので手短に話そうか」


 座りたまえ、とヴェルガは着席を促して、彼の後ろに控えるアラン以外が席に着いた。


「二人へ先に言っておこう。話を聞いたら後戻りはできないが良いかね?」


 ヴェルガがゾークとヨシュアに顔を向けて問うと、二人は顔を見合せた後に「隊長が危ないのでしたら」と告げる。その言葉にヴェルガは小さく笑った。


「妹が世話になっているね。君達の忠誠心に感謝する」


「ハッ。当然のことでございます」


 副隊長であるゾークが代表して言うが、ローズへの忠誠心厚いのは彼等だけじゃないだろう。生憎と他の仲間は帰省してしまっているが、王都にいればすぐに集まるに違いない。


「初めに言っておこう。現在、我が王国は外国から潜入工作による被害を受けている。狙いはローズ……というよりも王家全体だな」


 初めて説明を受けたゾーク達は色々と質問したいだろう。だが、さすがに次期国王の前では自重して静かにヴェルガの説明を待った。


「現在、敵が行っているのは王家と国民を引き剥がすことだ。君達も聞いたのだろう? ローズに関するデタラメな嘘を」


 敵の工作員は庶民の間でローズに関する悪い噂を流し、王家の信用を落とそうとしているようだ。同時に貴族内にも内通者がいて、貴族の間でもローズの悪評を流しているらしい。


「しかし、何故ローズ様なのですか?」


 ゾークが手を挙げて質問するとヴェルガ頷いた。


「我が国の英雄的な存在だからだ。庶民達の間ではローズの人気が高い。そこを崩して彼女を孤立させると同時に国民によるクーデターを目論んでいるようだ」


「ローズ様の悪評を流す事は国民の怒りを点火させる為の切っ掛けに過ぎない。人気が高いローズ様をまず崩し、それから別の王族の噂を流すつもりなのだろう」


 ヴェルガに続きアランが敵の狙いを告げる。


 要約すると、国民の間で人気があるローズを徹底的に「悪人」にせねば、王国への反乱を考える国民が生まれてもローズを「新しい女王に」と言いかねない。よって、まずはローズを国民の敵にしなければならないのだ。


 その後、国民の敵となったローズに続いて他の王族も敵にする。それからクーデターが発生すれば、現在いる王族は根絶やしになって新しい血脈が誕生する。


「先に言ったようにローズは切っ掛けだ。国民と貴族からの信用を無くし、王族を孤立無援にさせる気のようだ」


 貴族から反感を買うようにするのも、貴族の持つ独自の戦力を頼らせない為だろう。同時に金銭的な支援なども断つのが狙いだろう。


「敵は……もしかしてガラン帝国ですか?」


 ヨシュアが手を挙げて言うと、ヴェルガは笑顔を向けながら「正解」と言った。


 彼が口にしたガラン帝国とは大陸上でルーベルト王国から正反対にある東の国だ。三ヵ月ほど前に終戦した戦争、暴君が好き勝手していた国を支援していた国でもある。


 国土としては西側に位置するルーベルト王国と同じ程度で、建国の歴史もほぼ一緒である。同時期に生まれた国であり、長く大陸で成長してきた相手だからこそ目の仇にしているのだろう。


「ガラン帝国は昔から大陸統一を夢見ているからな。我々が邪魔だと思っているのは昔からさ」


 加えて、ガラン帝国が建国当初から掲げている夢も理由の一つだ。この大陸を制覇して統一するにはルーベルト王国が邪魔である。


 ヴェルガ曰く、先の戦争はルーベルト王国を疲弊させるのが目的だったのだろうと言う。 


「だが、結果的にあの戦争は我々の勝ちだった。魔法という古代の遺産を実戦投入できた事と情報部の尽力によってクーデターを引き起こす事で早期終戦となったからな」


 ルーベルト王国王家と国防省――全騎士団を統括する組織――の上層部は最初から暴君など見ていない。暴君の背後にいたガラン帝国を見ていたからこそ、この結果になったと言うべきだ。


「それで次の手を打ってきたと?」


「そうだ。奴等の最初の一手がローズの排除だ」


 先に語った通り、ローズの排除は帝国にとって必須だろう。強く、戦場で厄介となる彼女をどうにか王国内で排除したいと考えているはずだ。


「なるほど。では、ローズ様の結婚も偽装か何かなのですか?」


「いいや、あれは本当だ。カールが望んだことであるし、ローズをこのまま戦場に出し続けるわけにもいかんからな」


 彼女の結婚は偽装でも政治的な手段でも何でもない。あれは功績を立てたカールが望んだこと……いや、彼女と結婚したいから功績を立てたと言うべきか。


 どちらにせよ、事前に話を聞いていた王家としては丁度良かったのだろう。ガラン帝国の目論見を外すという意味でも、貴重な戦力であるローズを戦場から引き剥がすという意味でも。


 同時に『冷徹公爵』と異名を持つ王国一の魔導師が夫となれば、ローズに危険が迫っても対処しやすくなるだろうという考えもありそうだ。


「まぁ、兄としてはようやく結婚してくれたと安堵するばかりさ……」


 ふぅ、とため息を零すヴェルガ。丸め込むような手段と急ピッチで進めた結婚だったが、何にせよ家族を二度も失う事は避けたかったというのが本音だろう。


「まとめると帝国からの内部工作を阻止することで防衛する、という事ですか?」


 ヨシュアがそう問うが、ヴェルガは少し黙った後に口を開いた。


「今は、と言うべきかな。いずれ必ず帝国と決着をつける。これは()()だ」


「……こちらから打って出る可能性もあると?」


「ああ。タイミングが合えばな。徹底的に潰しに行くつもりだ」


 ヴェルガの言葉を聞いて、ゾークとヨシュアは驚愕した。それはルーベルト王国が長く防衛専守の姿勢を見せてきたからだ。


 他国を侵略せず、友好を結んで共存の道を進む。これがルーベルト王国の理念だった。だが、現在の王は帝国を侵略する――いや、ヴェルガの言い方では『滅ぼす』ことも可能性に入れているのだろう。


「理由は簡単だ。我が国は数十年前から攻撃を受けている」


「数十年前……?」


 ゾークが首を傾げるが、ヴェルガはテーブルの上できつく手を組んだ。


「私とローズの母……。ローナ王妃の殺害だよ」


「なっ!?」


「ローナ様!?」


 ヴェルガが口にした事に二人は思わず声を漏らしてしまった。


「当時、ローナ王妃は野盗によって殺されたと言われていたが襲ったのは野盗ではなく帝国の部隊だ。あの頃から帝国の一部が王国内に入り込んでいた」


「その情報はどこから?」


「なに、帝国も一枚岩ではないということさ」


 ゾークの問いにヴェルガは笑みを浮かべながら答えた。どうやら帝国側には味方……と素直に信じるべきではないが、それに近い者がいるようだ。これはルーベルト王国にも言えることだが。


 とにかく、ベルトマン公爵も言っていた『尻尾を掴んだ』理由がこれなのだろう。


「なるほど。それならば……」


「だが、まだ決着をつけるべきではない。今戦えば犠牲になるのは国民だからな。それは避けねばならん」


 ヨシュアの呟きにヴェルガは顔を険しくして言う。現状では両者のパワーバランスは拮抗している状態だ。この状態で戦争になれば泥沼化するのは目に見えている。


「準備は入念に行わねばならない。今は敵の工作活動を阻止して時を稼ぐ。同時に帝国よりも先に勝負の()()()を作らねばならん」


 それは近年王国が力を入れ始めた「魔法」の存在だろう。カールのような一撃で戦況を覆す人間や兵器を作り、戦争が勃発しても帝国を追い詰める手段を用意しておかなければならない。


「まぁ、戦争にならず解決するのが一番だがね」


 あくまでも戦争は最終手段。ヴェルガの考えとしてはそう思っているようだ。しかし、王命を下したヴェルナルディはどう思っているのだろうか。ゾークとヨシュアも王の心の内は気になっているだろうが安易に問えるような事じゃない。


「とにかく、今は魔法省と騎士団が連携して王都内に潜伏する敵工作員を捕らえているところだ。敵の拠点は特定を終えている。明日から本格的に追い込む予定だ。参加するかね?」


「勿論です。殿下」


 話の締めとしてヴェルガがそう言うとゾークとヨシュアは立ち上がって騎士礼をとった。


「しかし、ローズ様にお知らせしていない……のですか?」


 ヨシュアはこれまでのヴェルガが述べた事からローズには知らされていないのでは、と察する。素直にそれを問うとヴェルガは苦笑いを浮かべた。


「うちの妹は、その……。分かるだろう? 相手がコソコソと隠れていたら隠れ家に突っ込んでしまうような子だ」


「ああ……」


 確かに、とゾーク達は納得せざるを得ない。ローズが動きだせば相手は危険を察知して逃げ出す恐れもある。折角掴んだ尻尾を逃す訳にはいかない、とヴェルガは言うが、もっと心配な事があるようだ。


「特に今回の件はローナ王妃の件にも関わっている。あの子が知れば暴走しそうでね」


 ローズが騎士を目指す事になった原点。その事件に関わる相手となれば彼女は容赦しないだろう。感情に身を任せ、見つけ次第皆殺し……という可能性は避けたい。


「よって、ローズには内密に頼むよ」


「承知しました」


 再びゾーク達は騎士礼をして任務に従事する事となった。


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