ロイスの取材記録(1)ー フィン嬢の回顧 ー
わたくしがトリム子爵家のフィンです。
ええ、取材を始めていただいてもよろしくてよ。
__________________
グラットン公爵家のリズ様はとても愛らしい方でした。
眩いほどに輝く金髪、心音に合わせるように変わる豊かな表情、
親しみを感じるその振る舞い。
わたくし達の周りにはリズ様を疎む者は誰もおりませんでした。
そんなリズ様が唯一表情を曇らせる時がございます。
ご自身の家族についての話題の時です。
そもそもリズ様が進んでご家族の話をされることは
少なかったと記憶しています。
例外があるとすれば、ドリス様に対してでしょうか。
ドリス様の話題をされる時のリズ様は、
紅の目を輝かせ、とても誇らしげでいらっしゃいました。
ご家族の中でもドリス様とだけは、きっと深い姉妹愛を育んで
いらっしゃるのでしょう。リズ様からは親愛を感じましたから。
ドリス様も同じバーンハル学院に通っていらっしゃいます。
リズ様とご一緒にいるところで、わたくしも何度かお会いしたことがございますよ。
ただ、わたくしはその....あの方を苦手に感じておりました。
もちろんドリス様も素晴らしい方なのですよ。
艶やかな銀髪、見惚れてしまうほどに整ったお顔、令嬢然とした所作、
柔らかな物腰。同じ貴族の令嬢として羨望を向ける存在です。
ですが、わたくしには時より、物喋る人形のように思えることがあるのです。
常に社交的な笑みを浮かべ、一線を引きこちらへ踏み込むことのない姿勢は
無機質さ、冷たさを感じるのです。ドリス様の感情を見て取ることができないのです。
リズ様に対する接し方も同様です。
お屋敷では異なるのでしょうか。
リズ様がなぜドリス様に対して、これほどの親愛を向けているのか
首を傾げたくなるのです。
これではまるで一方通行の片思いのようではないですか?
次回の投稿より、23時 定期更新でいきたいと思います。