従女ミサの手記 (1)
私は公爵家次女 ドリス・グラットン様付きの従女です。
世間ではドリス様のことを魔女と呼び、貶められているのが大変無念でなりません。
いくら真実を訴えても、誰も聞く耳を持たない現状に己の力不足を感じます。
真実を知らしめるために、ロイスさんの勧めでこのように手記を残すことにしました。
本当のドリス様は心優しき方です。
私が仕事中に怪我をしたときは優しく手当してくださいました。
専属の従女が私のみで仕事量が多いと分かれば、私の仕事を奪わないよう気をつけながら
ご自身の身支度を行い、負担を減らすよう気を配れる方です。
本当のドリス様は美しく可愛らしい方です。
庭師を労いながら、花を見るのがお好きな方です。
私の入れた紅茶をとても嬉しそうに飲んでくださる方です。
皆はドリス様を魔女だの悪魔だの罵りますが、
であればグラットン家の人たちは一体なんだというのでしょうか。
あの呪われた家の者たちこそ人の皮を被った悪魔ではないでしょうか。
あいつらはドリス様の尊厳を踏みにじり、心を嬲り、大切なものを根こそぎ奪い取り続けました。
そのような酷い仕打ちに対して、ドリス様は耐えて耐えて耐えて耐えていらっしゃいました。
心をすり減らし笑顔が減っていく様子にどうして誰も何も感じないのでしょうか。
ドリス様が、私たちが、一体何をしたというのでしょうか。
たった一度きりで構いません。
これまで一度も救いのなかったあの方に救いの手をください。
代われるならば私が処刑台に立ちます。
救済の対価として必要であれば喜んで私の命を捧げましょう。
だから、どうか減刑を
どうかこれ以上あの方を傷つけないで