26.【王国SIDE】エリーゼ、結界について調べる
もう少しだけ王国サイドで話が進みます!
聖女の力をどう使ったところで、結界の代わりにはならない。
そんなのは結界師に言われるまでもなく、昨日のリステン辺境伯領での戦いを通じて理解していた。そんな私が訪れたのは、
「エリーゼ様が、わざわざは王立図書館を訪れるなんて珍しいですね。しかもまた、変なものを読んでいらっしゃる」
リットたち結界師の一族の知識が収められた王立図書館。
私が手にしていたのは『結界術入門』という、リットたち一族が残した本であった。
「ふむふむ。結界を維持するためには、魔力を注ぎ込めば良いのね! なんだ、簡単なことじゃない!」
そして1ページだけ読むと、パタリと閉じる。なにやら難しいことがいっぱい書いてあって、サッパリ読む気になれなかったのだ。幸いなことに、必要な情報は十分に手に入った。
「お、お待ちください。エリーゼ様、まさか結界に魔力を注ぎにいくつもりでは?」
「なによ、私の邪魔をしようというのなら容赦はしないわよ?」
「で、ですが! リット様から、固く言われております。結界に素人が手を出すと、ロクな事にならない。興味本位で手を出す者が居たら、絶対に止めろとも!」
「何よ。あなたも、私よりあいつの言うことを信用するの?」
また、ここでもリット様か。
どいつもこいつも――リット様、リット様と!
ほんとうに忌々しい。
「め、滅相もございません」
「ふん。職場を失いたくなければ、余計な口出しはしないことね」
やるべきことが決まれば、あとは行動するだけだ。そう思っていたのに、空気を読めない司書にやる気を削がれた。私のすることに、間違いなどある筈が無いのに。
「これから、結界に魔力を注ぎにいくわ。エリーゼ近衛隊、私について来なさい!」
「エリーゼ様。昨日の今日で、また遠征ですか?
隊の者には昨日の戦いで負傷した者も多く、動ける者がおりません。1日だけでも、休みを頂くことは――」
「黙りなさい。そんな軟弱者は、エリーゼ近衛隊にはいらない。地を這ってでも来いと、そう伝えなさい」
「……かしこまりました」
(なによ。その不服そうな顔は)
私に絶対の忠誠を誓うのが、エリーゼ近衛隊ではないのか。
私だって疲れている。それでも、このまま弟の思いどおり進むのが嫌で、仕方なく自ら足を運ぼうというのだ。それなのに近衛隊が休みを欲するとは何事か。
(部下のしつけがなっていない。今回の遠征が終わったら、あいつもクビね)
私は内心でブツブツ言いながら、用意された馬車に乗り込んだ。昨日から思うように事態が進まずイライラが募っていたのだ。とばっちりを恐れるよう、誰もが私を遠巻きに眺めていた。
そんな周囲の態度にもイライラが募る。
(……こんな日々も、今日で終わり。私が国を守護する。結界に魔力そそぎ込んで――結界師なんていらないってことを証明してみせる)
そのために私は、この力を授かったのだから。私は馬車の中で、輝かしい未来を夢想する。それはただの現実逃避にも等しかった。
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