10話 第一回会議前半戦ー04
キュッ、キュッ、という気持ちのいい音を奏でながら、渚ちゃんは黒板に文字を追加していく。
【・事件現場→穂高屋敷】と書き込まれていくのを、俺はなんとなく眺めていた。
どう考えても、やっぱりスペースが足りない。
「………」
その事を言ってあげようかどうしようか迷ったが、結局言わない事にした。
スペースが足りない筈がない。
やはり俺の気のせいなのだ。
「ところで孝示、さっきの反応を見てると、お前も事件の事を知らないように見えたんだが?」
ばれてたか。渚ちゃんのお陰で、うまい事ごまかせたと思ったのに。
「そんな訳ないだろ?あの事件の後、3日間くらい学校が休みになったんだぜ?知らない訳がないだろ?」
「……誤魔化すにしてももう少し何かあるだろう。問題点がいくつかあるぞ。」
呆れ顔で緒田が言う。
「そうだな―――」
横目で、渚ちゃんが書き終えたのを確認しつつ続ける。
「―――確かに俺はあまりその事件について知らない。だからお前が俺達に詳しい所を説明してくれるんだろ?」
「問題点は聞かないのか?」
いかにも聞いて欲しそうな顔で、緒田は言う。
というか、聞いてくれよ、と暗にほのめかしている。
だれが聞くかよ。
「聞かない。」
聞かなくても、お前の言いたい事なんてだいたい分かるからな。
「どうせ、その話題は2回目だ。とか、お前テレビどころか新聞も見てないだろ。とか、それどころか学校が休みになってラッキーくらいにしか思ってなかっただろ、とかだろ?違うか?」
「……………まぁ、違わ、ない。……………なぎも書き終わったみたいだし、話を続けよう。」
言いたい事を俺に言われた緒田は、何とも妙な顔をしていた。