コウジの錬金術
4年前
バイト先にいたコウジと言う名の45歳オッサンの話。
コウジは普段無口で無愛想だ。ただし、金を借りる時だけは笑顔で饒舌になる。
ある日、初対面のおっちゃんにコウジはいきなり
「500円貸してくれへん?」
と頼んだ。おっちゃんは貸したが、なんやコイツと思ったらしい。
また別の日。別のおっちゃんにもコウジは
「1000円貸してくれへん?」
とお願いした。おっちゃんが財布から1000円取ってる所を見ていたコウジは
「そっちでもいい?」
1万円札の方を指差した。貸そうとしたおっちゃんから
「そんな困ってんのか?」
と聞かれ「はい」と答えたコウジ。
おっちゃんは「絶対返してや!」と1万円貸した。
さらに貸す際
「1ヶ月以内に返してな」と条件を出した。
コウジは
「大丈夫です。携帯でDocomoからauとかメーカーを変えたら、乗り換えキャッシュバックで2万貰えるんで、それで返しますから。絶対、絶対返しますから」
力強く答えた。どうやらコウジは携帯の乗り換えを副業にしてるらしい。
ちなみに、今はこんなオッサンのせいでキャッシュバックが無くなった。
結局、1ヶ月で1万円を返せなかった。返すのに半年かかった。
コウジの乗り換えキャッシュバックは上手くいかなかったらしい。
基本無口な人だから、Docomoやauの店員から怪しまれたんじゃないか?
やり過ぎてブラックリストに載ってたんじゃないか?
また、最初のおっちゃんに借りた500円も5回に分けて返した。
100円×5
500円ぐらい一括で返せよコウジ(苦笑)
さらに、住んでる所が謎だったコウジ。
と言うのも、聞く人によって住んでる所が変わるのだ
森ノ宮、谷9、あべの、恵美須町、僕が聞いたのは弁天町
どこに住んでるか分からない。シフトはどこに送られるのか?
そんなある日、たまたま夜8時に天王寺でコウジを見かけた1万円を貸したおっちゃん。
挨拶したら逃げられるので、こっそり後ろから付けて行く。
コウジは西成のディープな方に歩いて行った。
そんなコウジも蒸発して4年か…
コウジ、なんでオレには「お金貸して」って言わんかったんやろう。
若手の駅員さんに100円借り、大学生に20円借りてたのに。
コウジ…コウジ…コウジ…
プライベートは全身赤い服やったコウジ…
たまに『ごはんですよ』のおっさんみたいな小さめのサングラスかけてたコウジ…
難波のホームで会って、挨拶したら逃げたコウジ…
会ったら絶対逃げるから『はぐれメタル』って言われてたコウジ…
仕事中、誰かに電話してて
「大丈夫ですから。絶対絶対返しますから」
って言ってたコウジ…コウジ…コウジ…
今現在、コウジは西成で空を見てるんだろうか?