第67話 美樹さんはおせっかいをするんです。
亜美さんの申し出を了承した私、美樹でしたが、亜美さんの真剣な表情と「会いに行っても会えないかなと思ったから」という思いを聞いて
「亜美さん、申し出を了承してからこんな事を言うのはなんですが本当にそれでよろしいのですか? 」
私は思わず尋ねてしました。
「え? どういうこと? 」
亜美さんは何を言われているのかわからないそんな表情をして尋ねてきました。
「亜美さんと美優ちゃんの関係がどういうものか私にはわかりません。ですが、会うか会わないかでどんな言葉も意味がかわってくると思います。こうして私が亜美さんを目の前にして話を聞くだけでも真剣で美優ちゃんに対しての思いが伝わってきました。ですが私から美優ちゃんに伝えるとすればきっと今の亜美さんの気持ちは半分も届かない気がします。ですから私が美優ちゃんに尋ねてみますのでもし美優ちゃんとの機会が作れたら会って話してみてはどうですか? 駄目な場合に先程の言葉を伝えるということにして。いらぬおせっかいかもしれませんが」
直接と伝達ではやっぱり思いの伝わり方が違うと私は思いましたので、亜美さんに美優ちゃんと会ってみないかと申し出てみました。本当にいらぬおせっかいだとは思いますけれど。
「私やっぱり逃げてるのかな……そうだよね。私多分怖がってるんだろうね。会えるかわからないということもあるけれど、それよりも直接会ってもきっと何を話したら良いか多分わからなくなってるから。それでも伝えたいって思ってなにかしらないかと考えて美樹さんに頼んでみたけれど……でもそんなんじゃ多分私の気持ちなんて伝わらない……んだろうな」
亜美さんはひとり呟くようにそんな事を言っていました。
亜美さんはしばらく考え込んだ後に
「わかったわ。きちんとお礼言いたいから美樹さん、美優さんに尋ねてもらうこと出来るかな? 」
勇気を出したのか私にそうお願いしてきました。
「はい。でしたら連絡先を教えてもらってよろしいでしょうか? 後日美優ちゃんに確認してご連絡いたします」
私は亜美さんに連絡先の確認をし、スマートフォンに登録した。亜美さんも私の連絡先をスマートフォンに登録してくれたようです。
「はぁ……やっぱり私って駄目駄目だね。考えが足らないと言うか行きあたりばったりと言うか……」
そう亜美さんは言いましたけれど
「いえ、ちゃんと美優ちゃんに対する気持ちは何もわからない私にも感じることが出来ましたよ」
私はそう言って亜美さんに微笑みかけました。
「もうー。蒼汰くん素敵ないい子捕まえちゃってるなあ。私と大違い」
亜美さんはそんな事を言いながら苦笑するのでした。
「亜美さん、ホントのことを言いますとですね。まだ正式には蒼汰さんと私は付き合っていないんです」
理由はわかりませんが、なぜか亜美さんに本当のことを話してしまいました。
「え? そうなの? なんで? 」
亜美さんはその事を聞いてとても驚いてしまいました。
「私にもライバルがいるんです。なので蒼汰さんにどちらを選ばれるのか今お互いに切磋琢磨しているところですね」
千夏ちゃんのことを思い出しながら私は亜美さんに話をしました。
「そうなんだ。でも学校では恋人として過ごしてるんだよね? 圭ちゃんにそう聞いてたんだけど」
亜美さんは不思議そうに私に尋ねてきましたので
「いろいろと事情がありまして学校では仮の恋人として過ごしていますよ」
と簡単ながらも説明をしました。
「そうなんだ。美樹さんもいろいろと大変なんだね」
と亜美さんは言いますが
「いえ、大変だとか苦しいとかそういうのはありませんよ。事情にしても側に蒼汰さんが居れば全く気にもなりませんし、ライバルにいたっては私の親友ですから。もっとも信頼しているライバルです」
私はそう言って3人でいる日常を思い出しながら亜美さんに素直な気持ちを伝えるのでした。
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